第12話 月下の誓い
オレ達は今―――幼女となってしまった魔王シェラフィーヤからの願いを叶え、
色々あったけれど―――面白かったよなあ……。
それに久々に、
後は……どうするか―――だよなあ……。
あいつは、あいつの願いを―――まあ
まあ、願いを聞く際には、「魔王プレイ」の名残と言ってもいい、ちょっと
さらさらない―――の、だが…………
少し今現在、なんだか訳の分からない事になってしまっている。
今オレやオレ達は、魔王としての
そして偉業を成し遂げた達成感から、眠ってしまったわけなのだが―――……
それは、月明かりも眩しい、満月の夜の出来事だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ん……んん~~あれ? オレいつの間に寝ちゃってたかな―――……
……んーーーところで、オレの隣で寝てるのはどちら様なんだ?
オレは今回の疲れもあり、また飲みつけない、食いつけないものをたらふく食い、つい腹の中も、そして瞼も緩みがちになったのは否定はするまい。
いや……その事はいいのだがぁ?
ま・さ・かぁ?
「あ・あ・あ……あなたしゃまはあ??」
「うふっ。 あら起きてしまったようね? アベル。」
なんということでしょお~! なんとオレが信奉する
しかも“ちんちくりん”の方じゃなくてえ? なんとあの“公式設定"の方じゃあ~りませんかっ?!
え? ナニコレこのご褒美……と言うより、なんでそんな魅力的な眼差しで見つめてんのぉ~?
これはもしかすると、オレモテ期入ったんじゃネ?
苦節17年、現実世界の女共からは「キモオタ」呼ばわりされ、長い冬を過ごしてきたものだが……ああ~~オレはこの日程、シェラフィーヤ様の信奉者であったことが良かったと思ったことはなあぁ~い!
「よし、寝るか。」
「ちょっと待ちなさいよっ! もお~私なりに奮起してきたって言うのに、なんなのよその反応。」
「ン? これって夢じゃないのか?」
「夢じゃないわよ! 正真正銘の私よ。」
はっきりと言ってしまおう―――オレは、
えっ、コレ、
あ……っ、ヤベぇ―――コレ……オレこの耐性持ってねえわ……。
だってそうだろお? 男たるもの、一糸纏わぬ……に近い寝間着で、し・か・も! あの神設定に近いビジュアルの『魔王シェラフィーヤ様』が、切なそ~うなお顔で迫ってきてるんだぜ??
こっ―――これは……受けなければ、男が
ううむ……この
“手”を出せばいいのか? 出さなくていいのか? それとも押し倒すのが正解なのかああ?!
オレには判らん―――さっぱりと言っていいほど判らん!
だって、女の子と付き合った事なんてないんだも~~~ん!
第一、
* * * * * * * * * *
さっきから彼の動静を見させて貰っているのだけど、身悶えてる―――
ちょっとこの格好じゃ、刺激が強すぎちゃったかしら……?
現在私は、ある“勝負”を掛けるために、薄手の寝間着を着用している。
それに最早説明するでもなく、今現在の私の姿は“元の姿”だ―――とは言っても、いまだ「幼女化」の呪いは解けたわけではない……。
ではなぜ“元の姿”に戻っているのかと言うと、今宵が満月だからだ―――
そう……月が満ちる時、私達魔族は魔力
ただ……それだけでしかないのだけれど―――……
私にはどうしても、彼に―――アベルに伝えておかなければならないことがあった。
それは今回の事に関してのお礼もそうなのだけれど―――これからの事を……そう―――私は、今回の件でやりたいことの軌道修正を余儀なくされてしまったのだ。 ただそれには、彼と彼の仲間達の協力が必要……そうも感じていたから―――だったのだが。
すっ……ごく目を見開いて見ているわね―――な、なんだか私まで恥ずかしくなるじゃない!
「「あ……あのっ!」」
「あっ……悪ぃ、そっちからどうぞ―――」
「えっ……い、いいの? じ、じゃあ―――気を取り直して……。」
な……なんだコレ? セリフが被るの―――これって、オレが一番苦手な「恋愛シュミレーション」モノじゃねえ~か!!
うおおお―――たっ、耐えられん! オレの心が“バキバキ”折られて逝く感じがしてならん!!
し、しかも……「上目づかい」に「頬を上気」させてんじゃねえぇ~!
ア……アカン、これ―――次同じかそれ以上の攻撃喰らったら、オレタヒぬわ……。
「ねえ―――ちょっと、アベル……アベルったら!」
「あ…………はい……………………なんでしょお?」
「あなた大丈夫? 死にかけてるわよ?」
「あ………………お構いなく―――HPゲージ㍉で残ってますんで……。」
「それは大変じゃない! ……って―――今メニューとやらで、あなたの数値確認したんだけど……HP1ポイントも減ってないわよ?」
「えっ……あぁ……そうなの……?」
「全くもう―――心配させないで頂戴?」
「あ……そりゃドーモサーセン……。」
あ~~もう……今日がチャンスだって言うのに―――
それに、最初にアベルと交わした契約、もう達成出来ちゃったんだから、また新たに契約を交わし直さないと―――
そう……とどのつまり、私は焦っていた―――
アベルと最初に交わした契約、『“
だから……もう…………彼と彼の仲間とは、これでお別れ―――
そして私は、エルフの魔王に返り咲いたとはしても、私を支える臣下の多くを同時に失ってしまった……。
だから今の私にはなにもない―――
まさしくの“ゼロ”からの出発となってしまったのだ。
だからこそ、今ここで―――魔力
「ねえ、アベル―――大切な話があるから聞いて頂戴。」
『大切な話』……だ、と! こんなシチュエーションで……夜更けに美女が薄寝間着で男の部屋をご訪問―――だなんて、一つしかありえないじゃねーか……!
ダメだ……オレ―――タヒんじまうわ……。
許せ―――妹よ……ノエルよ、お前を残し旅立って逝くお兄ちゃんを……。
「なぁ~にをやってるんですか―――あなた達……。」
「きぃいやああーーーー! 出ぇたあーーーー!!」
オレは、恐怖のあまり、近くにいた人物に抱きついてしまった―――
そう、なんの説明をするまでもない―――魔王シェラフィーヤ様に……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……これどう見ても事案発生のようですね。 よし、通報しましょう。」
「ちょっと待て!ノエル!! これは誤解だ!大きな誤解なんだ!!」
「発育の良さそ~な女の人に抱きついといて? 一体何の誤解なんだと……往生際が悪すぎますよ。」
見事に水を差された
なぜアベルが私に抱きついたかと言うと、暗い部屋の片隅で一つの影が揺らいだかと思うと、突如2つもの紅い眼光が沸き上がってきたからである。
原因は不明だが、ちょっと前から精神を削られているアベルにしてみれば、ちょっとした
不思議と私には、アベルの事を責めるつもりなんて毛頭ない。
まあ……たぶん私だって、同じような状況に置かれたとき、同じような
それはそれとして―――なのだが……
「それよりもあなた……魔王シェラフィーヤ? すると「幼女化」の呪いは解けたんですか?」
「……いえ、解けていないわ。 だけど今、私が元の姿に戻っているのは、「月の魔力」のお陰なのよ。」
「『月の魔力』? なるほど―――疑問の一つ目は判りましたが、ならなぜそんな恰好を? DTのこの男には目に毒でしかないですよ。」
「D……T……?」
「ドウ●イちゃうわ、アホぉ~!」
「よく言いますよ、こんな別嬪に迫られて、タヒにかけた人が。」
「「……えっ?」」
「あ……あのぉ~~ノエルさん?? お前―――いつから(覗き)見てたの?」
「最初から―――ですが、何か文句があるか、この浮気野郎……。」
「う―――浮気?」
「ええ―――まああなたは、当然知らない事ですがね。」
「あっ―――待て、バカ、ノエル!! お前……何を……」
アベルがこんなにも動揺する姿は初めて見る。
それに一体何だろう……妙に胸が“ザワザワ”する……。
アベルが動揺するほどの原因―――それを私は知りたいけれど、どこか知ってはならないような気さえする……
が―――そんな私の意思とは関係なく、彼の妹の口から、「ある事実」が語られる……。
「この男にはですねえ―――すでに将来を誓い合った女性がいるんですよ。」
彼は既に―――「婚姻」を結んでいた……?
それを聞いて、少し私の意識は遠のきそうになったが……なんとか堪えた―――
なんとか堪えた―――の、だが……?
「やめろおぉぉ―――! お前なんつー事をいうんだぁあ!」
「おやぁ? 否定をするんですかぁ? なら同じことを、“あの人”の前でとーぜんの如く言ってのけれますよねえ~?」(フフフフン)
「ぐう……っ! 手前ぇ……よくそんな恐ろしい事を平気で言えるなあ……。」
「ええ~~言えますよ? だって他人事ですから。」(ウケケケケ)
うーーーん、なんだろう? この感じ……
アベルが別の
あれを見る限りでは、兄であるアベルを
……と、それはそれで良かったのだが―――
いや! 良くなかったああ―――!!
そう、私はこの兄妹の掛け合いに気を取られ過ぎて、千載一遇のチャンスを失ってしまったのだ!
頃合いはもう、空が白みかけ―――月が地平線の彼方に沈もうとしている……
そう―――私に作用していた「月の魔力」が失せてしまうと言う事は……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます