十二、ガンそして告白
「なあ、シロ、クロ、話したい事があるんだが良いか?」
とある日の夜、寝る支度をしているシロとクロに和多々比が話しかける。
「なんじゃ、藪から棒に儂に話したい事があればなんでも言うんじゃ」
ドンと胸を叩きながら受け入れるシロ。
「そうか、ありがとう。それでな、俺……」
と和多々比の表情が急に、真面目な顔になりつつ曇っていく。
「ガン、をかかえているんだ」
シロ達の表情を見たくない、反応を見たくない、と両手を震えながらうつむきながら言う和多々比。
「それで、医者に余命宣告を受けていて……もう命短い身なんだ……」
「それがどうしたのじゃ」
シロの声を聞き、和多々比は顔を上げる。
「その事を私達は知っています、それも出会った時から」
「なぜ……それを……」
「匂いです」
クロは断言する。
「前にも言いましたが、匂いで相手の事が分かるんですよ。その時に和多々比様が重大な病気に侵されている事も」
「そして、それを知ってこそ儂らはあわ坊を……あわ坊を幸せにしたいと思ったのじゃ」
あ、そうだとシロは思いつき和多々比と同じく真面目な顔に移り変わる。
「あわ坊が秘密を打ち明けてくれたなら、儂らも1つ秘密を打ち明けよう」
「私達は、人間の世界の見学に来たのではありません。和多々比様、いえ和多々比様の前世、
猫之宮三毛朗? と突然知らないワードが出てきて、混乱する和多々比。
「要は前世からの恩返しじゃ、恩返し」
「三毛朗様は私達姉妹の旦那様で、和多々比様はそれが転生したヒトにあたります。三毛朗様は、私達を拾って育ててくれた恩義があるので、こうして和多々比様にも恩を返そうとしているのです」
「そんな……でも、俺とその三毛朗とは関係ないんじゃ……」
「それでも、魂は同じモノ。尽くしてくれたモノと同じ魂を持っているから尽くそうと思っているのじゃ」
それでも納得がいかないような表情をしている和多々比、それに対してシロは「仕方ないのぅ」といいながら近寄り、おでこをくっつける。
何かが流れ込んでくるような感覚に和多々比は襲われた。すると、まるで走馬灯を見ているかのように、シロ達と知らない男性――三毛朗との記憶が流れ込む。
「……あっ」
和多々比の意識が現実に引き戻されると、二人を見つめ。
「これがお前たちの、記憶なのか?」
二人は無言で
「絶対に、お主のことを幸せにしてみせるのじゃ」
そう誓っていて以来、シロは「お主」と呼び、クロは「旦那様」と呼ぶようになった。
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