十一、デートそして身バレ

 シロとクロがバイト先に突撃した日の翌日、やはり和多々比は牟田口に遊びに行かないかと誘われた。

 和多々比はそれに同意し、そしてデート当日の日となる。

 シロとクロに相談しながら、着飾った服で駅前の待ち合わせ場所にいる和多々比。

 約束の時間よりも前に来ていた和多々比は、緊張した様子で何度も時計を見ながら、まだかまだかと思いながら待っている。

「やっほー、おまたせわたっち」

 聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ってみるとそこには牟田口の姿。

「ああ、おまたせ牟田口さん」

 すると、牟田口が顔を膨らませ指摘する。

「あーまた牟田口さんって言った、今日はプライベートだから紅葉もみじって呼び捨てで言ってよねー」

「はいはい、紅葉」

「はいは一回!」

 そう言って2人はたどたどしくも手を繋ぎ、歩いて行く。

「うむ、上手くいっているようじゃな」

「あのぅ、お姉さま、デートに勝手についていくのはいかがな物かと……」

「いいのじゃ! それに儂らにはあわ坊を守らなければいかんのじゃ」

「そうですか……」

 和多々比と牟田口の後ろには、心配してきたシロとクロの姿がありストーキングしている。その存在に和多々比と牟田口は一切気が付かず、2人だけの時間を過ごし映画館へと歩いていく。

「え、映画館じゃと!?」

「映画館がどうしたんですか? お姉さま」

「む、無理じゃ、映画館だけは無理じゃ!」

 そう言っている間にも2人はどの映画を見ようかと、色々と話し合っている。

「映画といったらアレじゃろ、大きい音とかが出るようなアレじゃろうに」

「そんなのどうでも良いんですよ、和多々比様を守る役目はどうしたんですか?」

「うぅ、しかたない」

 こっそりと2組の人間と猫は同じチケット売り場に並び、クロが盗み聞きをして同じ内容の映画のチケットを買う。

「ほぅ、恋愛モノの映画ですか」

「な、なんとハレンチな」

 こうして映画を見る準備が整い、いざ上映。2組が映画館から出ている頃には、時は昼になっていた。

「うぅ、彼女の結末が悲しいのぅ」

「人間の作り話に何、同情しているんですか」

 といいつつクロの顔には、一滴の涙が滲んでいる。

 すする声を上げるシロの声に、和多々比は聞いたことのある声だ。と気がつき後ろを振り返る。

「あっ、なんでここにいるんだ。シロ! クロ!」

 ついにシロとクロが着いてきている事を知った和多々比。

「そ、それはの」

 シロとクロは、目をそらしながら何か言い訳がないかを考える。

 すると牟田口がシロに指をさし。

「あっ、シロっちとクロっちじゃん」

 和多々比・シロ・クロの三者が頭に!マークを出しながら驚く。

「な、なんじゃ儂の事をしっておるのか?」

「そうだよ前、コンビニに来たじゃん。あ、髪が白いからシロっちで、黒いからクロっちね」

 三者はもう色々な事がありすぎて、ドギマギしておりどうした良いか分からない。

「シロっち達も一緒に映画見たの? 偶然じゃーん。あ、あたしはわたっちと遊んでいるから先に行くねー」

 そういうと、牟田口が和多々比を無理矢理引っ張りどこかへ連れ去って行く。

「なんか、嵐のようじゃったのう」

 これ以上2人を追う気になれないシロとクロはその場にたたずむしかない。

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