十、出会いそして策略

「ただいま」

 時間は夜へとなり、和多々比が家へと帰ってくる。

 家の中からは返事は帰って来ず、明かりも灯っていない。

「まったく、シロのやつどこにいったんだよ」

 そう言いながら和多々比は、荷物を整理しだす。

 シロとクロが居た前のように、シャワーを浴び、コンビニ飯を食べ、いつも通りに過ごし寝る体制へと入る。

 その間、ひたひたと孤独感に襲われるが、もうすぐに、今まさにシロ達が帰ってくるだろうと言い聞かせた。

 だが、完全に寝る体制へと入ってしまった和多々比にとっては、孤独を感じながら眠るしかないと思い、布団へ入ろうとする。

 その瞬間勢いよく玄関が空き、息を切らしながらシロとクロが入ってきた。

「た、ただいまなのじゃ」

「おかえり、どうしたんだ? こんな時間まで外に居て」

 ちと妖の世界へ戻ったのじゃ、とシロは言い続ける。

「それに吉報きっぽうが入ってな、それについても色々とやっていたのじゃ」

 息を切らしているが汗は1つもかいておらず、不思議だなと和多々比は思いつつ、布団の外へ出る。

 シロとクロは手慣れた手付きで冷蔵庫から麦茶を取り出し、一気飲みをした後に。

「それでじゃ、少しあわ坊に話があるのじゃが良いか?」

 その瞬間、また以前みたいにシロに叱られるのでは、との恐れが生じたのを見て、シロは「決して叱らんから安心するのじゃ」となだめる。

「和多々比様は牟田口さんについて知っていますか?」

「ああ、あのバイト仲間の?」

 和多々比は、パッと牟田口の顔を思い出す。

「そうです、和多々比様のバイト先に居た牟田口さんです」

「それが、どうしたんだ?」

「それがの、クロが言うにあわ坊の事をいておるようじゃ」

 シロがグイッと会話に入り込む。

「まさかあのようなおなごがあわ坊の事を……」

「それで、和多々比様に牟田口さんと付き合わせようと思いまして」

「ええッッッッ、俺が牟田口さんと?」

「そうです牟田口さんと、です」

「まぁ、牟田口さんは俺に優しく接しているし……」

「それでじゃ、先程儂が牟田口殿の夢枕に立って、でぇと? に誘うのを勧めたのじゃ」

 それを聞いた和多々比は絶句した、まさかこれほど話が進んでいるとは思ってもなかったのだ。

「明日にでもなれば、牟田口さん自ら誘ってくれると思うので明日に期待ですね」

 せっかくシロとクロが用意した場だ、無下むげにする分けにはいかないかと思い、明日牟田口の誘いに乗ってみようかと思う和多々比であった。

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