五、夜そして膝枕
シロと和多々比が添い寝した日の翌日、和多々比が帰って来たのは完全に夜の時間帯だ。
「お帰りなさいませ、和多々比様」
和多々比の事を出迎えるクロの声が聞こえてくる。
が、昨日のように玄関から出迎えている分けではなく、奥の和室にて布団に正座で座って待っていた。
着ているのは黒のドレスではなく、落ち着いたクリーム色のネグジェリだ。
「ささ、お疲れでしょう。こちらへどうぞ」
そう自分の膝を叩き、迎える準備は出来ています。 とアピールを繰り返す。
またもや和多々比はそれを無視し、風呂場へと入る。
和多々比が風呂に入り着替えて出ても、クロは一歩も動いていない。
「さぁ疲れたでしょう、私が膝枕してあげますから、一緒に寝ましょうよ」
そこで、和多々比が布団に枕がない事が、その枕が何処にもない事に気がつく。
「枕は」
「枕はお姉さまが匂いが恋しいからと、妖怪の世界へ持っていきました。 今は枕の匂いを嗅ぎながら仕事をしているはずです」
「じゃあ、枕はどうればいい」
「私が枕です」
そうエヘンと大きな胸を張るクロ。
和多々比は黙りこくり、呆然とクロを見つめる。
頭が柔らかな膝に埋もれ込み、スッとした爽やかな匂いが鼻をくすぐる。
クロは
「シロ姉さまは居ませんよ、何でも言って下さいね。 私が何でも願いを叶えてあげますから」
なら、と一旦口を開きかけたが、すぐに閉じて顔を右に向けそっぽを向いてしまう。
まぁ、予想通りですね。 とクロは内心思いながら、シロと同じく子守唄を歌いはじめた。
その声はシロとは違って落ち着いていて、その歌詞はとても優しい物だ。
「いい子ですね、とっても偉いですよ。 ゆっくりと私の膝の上で、休んでくださいね」
子守唄は和多々比が寝息を立てるまで続き、もう大丈夫ですねと思った所で止めた。
「もう大丈夫ですよお姉さま」
そうクロが呟くと、何の音もたてずなくシロが現る。
「おやくめご
クロは返事を言う代わりに、首を横に振り失敗だと伝えた。
「そうか……しかし、わた坊の寝顔はめんこいのぅ、頬をつつきたくなってしまうわ」
シロは和多々比の顔を覗き込み、
「あっ、ずるいですよお姉さま。 私も和多々比様の寝顔を見たいのに」
そう小声でシロに
するとシロは、和多々比の顔に光る粉ような物をふりかる、すると粉は体に吸い込まれていく。
和多々比の寝息は深くなり、起きそうにない事を確認するとゆっくりと寝返りをうたせた。
そして現れる和多々比の寝顔にクロは、まぁと
「やはり、和多々比様は……」
「そうじゃな、間違いない。後は……」
ヒソヒソと念のため小声で話し合う、クロとシロ。
「仕方ないのぅ、作戦
「はい、あまり使いたくなったのですが、これを使えば必ず和多々比様を落とせるでしょう」
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