第4話 第二回公判 1
混乱の中終わった初公判だったが、その後、前回の証拠に新たな進展があった。ダミーと言っていた浦野翔子の防犯カメラは実は本物で、録画が残されていたのだ。浦野は芸能人であるナオの日常に興味を持ち、ナオの自宅を思いっきり画角に入れていたので、何か罪状がつけられてしまうのでは、と思い嘘をついていたのだった。
しかし初公判で、自分の証言が全く信用されず、SNSでも嘘つきとたたかれたことに耐えられず、映像を提出することにした。スクープが撮れたら金にするつもりだったのか、衝撃的なくらいの高画質、好アングルだった。
「この映像を見てください。玄関から、南さんが山野さんを背中に担いで外に出てくるのがわかります。今、門を出て路上に寝かせました。後から追いかけてきた被告人が、山野さんに心臓マッサージをしています。南さんが家に戻り、山野さんの荷物を持ってきました。この後、救急車が到着し、搬送されます。
このように、被告人宅にいた山野さんが、発作後に路上に出されていたのは事実です。証拠として提出します。」
傍聴席がどよめいた。これほどの証拠は他にない。路上できゅん死には完全に否定された。後の論点は、ナオが山野に心臓発作を起こさせるほどの傷害を加えたかどうかだ。
弁護士が目を見開いて映像を繰り返し見ている。ナオは映像を見つめていたが、さくらさん、さくらさん、と言いながらパニックを起こして突っ伏してしまった。
やがて弁護士が何かを見つけたようで、ゆっくりと慎重に話始めた。
「この映像からは、自宅にいたことはわかりますが、家の中で被告人が山野さんに何をしたかはまではわかりません。しかも、運んでいるのは被告人ではなく、南さんです。この映像の、玄関を出たところを拡大してください。画質が良いのでわかると思いますが、南さんは、山野さんを背中に背負い、山野さんの左上腕を、左手で抑えています。山野さんは気を失っているので重く、支えるのに左手に相当力を入れているのではないでしょうか。圧迫痕はこれが原因と思われます。とすると、被告人が山野さんを襲った証拠はないことになります。
南さんが一緒に自宅にいた可能性があると思われますが、南さんに話を聞くことはできますか?」
傍聴席にいた南に、その場全員の視線が集まる。そういえば、路上できゅん死にした、と証言したのも南だった。担いでいたのも南となると、南犯人説が浮上する。
南は慌てて立ち上がり出ていこうとしたところを、止められた。
「俺は犯人じゃない!ナオの家にもいなかった!映像を巻き戻せ、俺が家に入ったのは女が倒れた後だ!!」
映像は玄関を出るところから提出されていたが、原本を持って来ていた浦野が検察に提出し、少し前から再生した。外にいる南が写っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます