Film 4. 『キャロル』
2015年のアメリカ・イギリス映画。女性同士の道ならぬ恋を描いたドラマ。
舞台は1950年代のニューヨーク。デパートで働く写真家志望の若きテレーズは、気品ある人妻・キャロルと、クリスマスにおもちゃ売り場で出会う。どこか陰のあるキャロルの美しさに心奪われたテレーズは、忘れ物の手袋をきっかけに逢瀬を重ねるようになる……。
今年のクリスマスは趣向を変えて、しっとりと芸術的な気分に浸りたい、繊細で美しいものが観たい。そんなあなたにコチラ。
本作がレズビアン映画と呼べるかは少々デリケートなところ。ただ大事なのはそこでなく、50年代の設定により、たとえ一時のものでも同性愛はヒステリー同様に重大な精神病と診断されてしまう背景です。
さらに女性同士で、しかも不倫となると(キャロルはすでに夫と破局し離婚調停中だったにもかかわらず)、男性側の実に男性的な都合によっても糾弾されてしまい、家父長などの管理下に収容されることを要求されます。
男性中心主義と異性愛規範の両方から弾圧される時代に燃え上がった情愛の炎は、まさに近代のロミオとジュリエットの様相かもしれませんね。
それにしても、キャロル役を演じたケイト・ブランシェットの気品ある妖艶さときたら。
字幕版で声を聞くと、しゃべり方の端々にまで上品な色香が乗り、これは男でも女でもくらっと来ちゃうのではないか、というくらい神々しく魅力的です。
さらに、テレーズが写真家志望という設定のためか、映画の画の一つ一つも非常に丁寧に作り込まれてあって(思わず一時停止したくなるカットばかり!)、運命的な二人のドラマをより深く彩っています。
拙作のサブタイトルには、「四歳の頃、なにが欲しかった?」(第3話)と「あなたは不思議な人。天から落ちたよう」(第7話)というセリフを引用。
前者はクリスマスのおもちゃ売り場での最初の会話。愛娘へのプレゼントを選びに来たキャロルが、レジでテレーズにかけた質問。テレーズは男の子のように「列車セットだった」と答え、キャロルはそれを自分用に買います。
そして後者は二人でカケオチまがいの旅行をしたときの、ベッドでの言葉。こちらもキャロルからテレーズに贈られた言葉です。
さあ、あと3日ですね。メリークリスマス!!
拙作・クリスマス作品『ルーシー・ダイヤモンド・ドーソンと晩餐を』
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