第254話 プレゼントのアドバイスをもらう時は気をつけるように後編

 だけど色々な品揃えがあり過ぎてどれをあげればいいのかわからない。

 女の子にあげる物だから、これは同性に聞いた方がいいかな?

 ちょうど店内を歩いているとリアナの姿が見えたので声をかける。


「リアナちょっといいか?」

「何? ヒイロちゃんどうしたの?」

「もしリアナがこの店にあるアクセサリーをプレゼントされるとしたらどんな物がいい?」

「プ、プレゼント⁉️」


(ま、まさかヒイロちゃん私にくれるの⁉️)


「そうだね⋯⋯ゆ、指輪! はプロポーズされた時がいいから⋯⋯」

「ん? 何か言ったか?」

「う、ううん⁉️ 何も言ってないよ⁉️」


 リアナの声が小さくて何を言っていたのかよく聞こえなかった。


「私はネックレスがいいかな」 


 なるほど⋯⋯ネックレスか。ピアスは耳に空けなければならないし、指輪は少し重い気がする。ネックレスは確かに無難かもな。


「わかった。ありがとうリアナ」

「お礼を言うのはこっちだから⁉️」

「ん?」


 お礼を言うのはこっち? どういうことだ? 俺が聞いた質問で何かリアナに答えが出たのか?

 もしかしたらリアナも何を買おうか迷っていたのかもしれない。なるほど⋯⋯俺がどのアクセサリーがいいか聞いたことで自分でネックレスを買うことを決意したのか。

 それなら役に立てて良かった。

 俺は目当てであるネックレスの商品がある場所へと移動する。


「えっと⋯⋯このあたりか」


 たくさんのネックレスがシートの上に並んでいる。その数は10や20ではない。80以上はありそうだ。


「この中から選ぶのは大変そうだな」


 デザインは可愛らしいものからシンプルなものやいかついものまである。

 いかついものは論外だが、シンプルなものがいいか可愛らしいものがいいか⋯⋯。


「あれ? ヒイロくん?」


 俺がどのアクセサリーがいいか悩んでいると後ろからルーナに声をかけられる。


「どうしたんですか? ネックレスを見てるの?」

「ああ」

「ひょっとして誰かにプレゼントですか?」

「そんなとこ」


 う~ん。わからん。今の娘はどんなやつがいいのかまったくわからん。

 ここは1つルーナに聞いてみるか。


「ルーナはここにあるネックレスだったらどんなやつがぼしい?」


 ルーナならセンスも良さそうだし俺にいいアドバイスをしてくれるはずだ。


「わ、私ですか⁉️」


(プレゼントって私に⁉️ 嬉しいです)


「ええ~と⋯⋯このハートの物とか月の形をした物⋯⋯後は十字架のがいいなと思います」

「なるほど⋯⋯確かにみんなデザインが素敵だな。この中から選ぶとしよう」


 十字架のやつはルーナが好きそうだな。けどこれはエルミアちゃんへのプレゼントだから月のデザインのやつにするか。


「よし決まった!」

「わわ! 私は楽しみは後に取っておきたいので失礼します」


 ルーナは慌てた様子で走りながらこの場から去っていった。


「なんだったんだいったい? 何か楽しみなことでも思い出したのか?」


 とりあえず購入するものは決まったので、俺は月のデザインのネックレスを手に取ろうとしたが、よく見ると色違いのものがいくつかあることに気づいた。


「金、銀、それにピンクにブルーか」


 月と言えば黄色⋯⋯金の色が近い。けれど女の子だったらピンクも好きそうだ。ブルーはどちらかというと男が好みそうだからやめておこう。

 けど銀もいいなあ。


「お兄ちゃんどうしたの?」


 ティアがどのネックレスにしようか迷っている俺に話しかけてきた。ティアは俺達の仲間の中でエルミアちゃんに1番見た目が近いから(年は遥かにエルミアちゃんが上だが)好きな色もわかるかもしれない。


「ティアだったらこの4色の色だったらどれが好き?」


(もしかしてお兄ちゃん私にくれるのかな? すごく嬉しい⁉️)


「私だったら銀の色が好きかな。ふふ⋯⋯ありがとうお兄ちゃん」

「いやいやお礼を言うのはこっちの方だよ」


 何でティアはお礼を言ってきたのだろう? あっ! ひょっとしてここまで護衛をしてきたことに対するお礼か。

 俺達は仲間何だからそんなこと気にしなくていいのに。


「じゃあ私はリアナさん達の所に行くね」

「わかった。俺もすぐに行くよ」


 よし⋯⋯後は買うだけだ。


 俺はエルミアちゃんのプレゼントを購入するため銀の色をした月のネックレスを手に取る。そして店員さんに話しかけようとしたその時。


「あほかお前は!」


 突然背後から後頭部を誰かに殴られる。


「いってぇ! 誰だ!」


 俺は後ろを振り向くとそこには腕を組んだグレイが佇んでいた。


 そうヒイロがアクセサリーを選び始めた時から監視していたのはグレイだった。


「何するんだよ!」


 いきなり頭を叩くなんてひどいじゃないか!


「何するんだじゃない⋯⋯お前は今、何をしようとしているんだ」

「何をって⋯⋯エルミアちゃんのプレゼントを買おうと思っているだけだが」

「あちゃー!」


 グレイは上を向いて頭を抑える。


「意味がわからない。それの何がいけない?」

「お前がエルミアちゃんにお土産を買うのはいいさ⋯⋯だがお前はそのネックレスを購入する時何をした?」

「何をって⋯⋯リアナ達にアドバイスをしてもらったけど⋯⋯まさか自分1人で選ばなかっからか⁉️」

「バカか⋯⋯見ろ! リアナちゃん達の顔を!」

「顔?」


 俺はグレイの言うとおりリアナ達の表情を見る。


「⋯⋯何だかみんな嬉しそうな顔をしているな」

「そうだ! みんなヒイロからアクセサリーを買ってもらえると思ってるぞ」

「えっ?」


 俺はみんなに相談してもらった時のことを思い出す。

 あっ⁉️

 どんなものがほしい? て聞いた。

 た、確かに自分が買ってもらえると勘違いしてもおかしくない言葉だ。


「とりあえずエルミアちゃんにアクセサリーを買うのはいいがみんなにも買っておけよ」

「あ、ああ⋯⋯わかった」


 俺はグレイの助言通りみんなの分のネックレスも購入する。

 リアナは星のネックレス。

 ルーナは十字架のネックレス。

 ティアにはハートのネックレスを。

 そしてメルビアにいるラナさん達の分も買う。


「これ⋯⋯みんなにプレゼント」


 俺は意を決して3人にネックレスを手渡す。


「わあ⋯⋯ありがとうヒイロちゃんすごく嬉しい」

「ありがとうございますヒイロくん。これは私の宝物にします」

「お兄ちゃんありがとう⋯⋯生きてきた中で1番素敵なプレゼントだよ」


 3人ともめちゃくちゃ喜んでくれている。

 これはグレイの言うことに従って良かった。もし何も渡さなかったら⋯⋯3人にガッカリされていただろう。

 俺はこの時、グレイに心より感謝するのであった。

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