第243話 ガールズトーク
陽が高く昇る頃ナッシュの家の前にて
「ただいま戻りました」
俺は飛翔魔法を使い、セーレンの街に憲兵をよこすように依頼をした後、再びボルチ村へと戻ってきた。
「えっ! もうセーレンまで行かれたのですか⁉️」
自宅の前で薪を割っていたウルトさんが、突然俺が現れたのを見て驚きの表情を浮かべている。
早く帰れたのはセーレンで憲兵の手配をした後、転移魔法で戻ってきたからな。
今さらかもしれないけど転移魔法まで使えると知られたら、それこそ大騒ぎになってしまうから言わないけど。
「ええ、全速力で行って来ましたから。明日の午前中にはセーレンから憲兵が来ることになっています」
「そうですか、それは良かった。では私はこのことを村長に伝えて来ますね」
そう言ってウルトさんは村の中央にある村長さんの家へと駆け出して行った。
さて、村の人にセーレンから憲兵が来ることを伝えるのはウルトさんに任せて、俺はゆっくりと体を休まさせてもらおう。
そして昨日から宿泊させてもらっているウルトさんの家に入る。
「あっ! お帰りヒイロちゃん」
「ヒ、ヒイロくんお帰りなさい」
「お、お兄ちゃん早かったね」
家の中に入るとリアナ達とミドさんがお茶を飲んで話をしていた。
グレイとナッシュくんは家の中にはいない。どこかに出掛けているのだろうか。
それより俺が家に入った時の皆の態度がおかしかったように見えた。何だかどこかよそよそしい感じがする。
「で? ティアリーズさんは教えてくれたけどリアナさんとルーナさんはどうなの?」
こちらからは聞こえないがミドさんが楽しそうな表情でリアナとルーナに何かを聞いている。
「そ、そ、そんなこと言えないよ!」
「特に今は⋯⋯」
2人は動揺した様子で答え、こちらにチラチラと視線を送ってくる。
何だ? 2人は何か俺に言いたいことでもあるのか?
「はは~ん⋯⋯なるほどね。そういうことですか」
ミドさんがリアナとルーナの様子を見て、何やらいたずらっ子のような顔になる。
「な、何がそういうことなのかな、かな」
「わ、私達はまだ何も言ってませんよ」
何の話をしているのかわからないが、とりあえず2人が狼狽えていることだけはわかる。
「そっかあ⋯⋯だったら私も狙ってみようかな」
「「「えっ⁉️」」」
ミドさんが何かを言ったみたいだが、3人の驚きようが普通じゃない。
まるで突然魔王にでもあったかのような表情をしている。
「ヒ、ヒイロちゃんはエッチだからやめた方がいいかな、かな」
「そ、そうですよ! ヒイロくんは⋯⋯ああ、悪いところが見つかりません」
「ふ~ん⋯⋯やっぱり2人の好きな人はヒイロくんなのね」
「「あっ!」」
リアナとルーナはいきなりミドがヒイロを狙うと言い始めて、つい想い人の名前を言ってしまう。
「ふふ⋯⋯2人とも可愛いわね。動揺しすぎよ」
リアナとルーナはミドに好きな人がヒイロだと見破られて顔が真っ赤になる。
「逆にティアリーズさんは初めは驚いていましたが、すぐに私の意図に気づいていていた様子ですね」
「御二人は素直ですから⋯⋯これでは何だか私が素直じゃないみたいですね」
「う~ん⋯⋯ティアリーズさんも素直に見えますよ。ただ何かお話の仕方が丁寧で教育を受けた感じがするのよね。もしかしてティアリーズさんはどこかの貴族だったりして」
ミドから鋭い質問が飛んで来て3人は苦笑いをする。
「そんなことないですよ。ただ母が教育に厳しい人でしたから」
「そうなんだ⋯⋯大変ね。私の家は放任主義だからあまりうるさく言われたことがないわ」
ミドも冗談で貴族と言ったため、特に追求することがなかったのでティアリーズ達は安心する。そして4人はこの後も恋愛の話や、身の上話で盛り上がっていた。
女性だけで入りづらいし何だか嫌な予感がする。俺も外に出てグレイやナッシュくんの所に行こうかな。
ヒイロはここにいたら危険だという直感が働き、女性陣に気づかれないようにウルトの家から姿を消すのであった。
「え~と⋯⋯グレイ達はどこだ?」
俺は女性陣だけしかいない部屋に居づらくなって外に出ることを選択した。男は男同士の方が話しやすいだろう。
あっ⁉️ そういえば⁉️
探知魔法でグレイとナッシュくんの場所を探そうとした時、以前リズリット姫とミリアリス姫を助けた際に、メルビアである人に
明日の朝までボルチ村から離れることはできない。それならどうなったか確認をしたいので、1度メルビアに戻るのもありかもしれない。
「おお⋯⋯ヒイロ戻ったのか」
ナイスタイミングでグレイがウルトさんの家に戻ってきた。
「あれ? ナッシュくんは?」
「途中まで一緒にいたけど拐われていた友達が心配で、その子の家に向かったぞ」
今はグレイしかいない。
それなら隠し事をしないで話すことができそうだ。
「ちょっとこの後メルビアに――」
そして俺はグレイに1度メルビアに戻ることを伝え、転移魔法で俺の部屋へと飛んだ。
「きゃっ!」
転移魔法でメルビア城に用意してもらった自室に移動すると、突然背後から女の子の声が聞こえた。
まさか真っ昼間から侵入者⁉️
俺は急ぎ声がした方を振り向くと、そこにはベットに腰をかけたラナさんの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます