第242話 人質救出
「ヒイロさん!」
盗賊達を始末した後、地下牢へと戻るとウルトさんが驚いた表情を浮かべながら出迎えてくれた。
まずは【
俺は結界を消すとウルトさんが駆け寄ってくる。
「先程ものすごい爆発音が聞こえましたが、何かあったのでしょうか⁉️」
「実は盗賊達が室内で爆弾を使ってしまって――」
わざわざ俺が殺したことは言わなくていいだろう。自分達で自滅したということにしておこう。
「そうですか⋯⋯ヒイロさんはお怪我はありませんか?」
「ええ⋯⋯爆発の時、部屋の外へと逃げたので⋯⋯盗賊達はもう砦にはいないので安心して村へと帰ることができますよ」
大広間にいた盗賊も火炎魔法で消し炭にしたので、子供達が死体を見ることもない。
「ほ、ほんと⁉️」
「私達お家に帰れるの⁉️」
今までどことなく暗い表情をしていた子供達が、村へと帰れることを聞いて笑顔で喜ぶ。
「そうだよ。みんなよく我慢したね」
俺は膝をついて視線低くして、子供達の頭を撫でる。
「「「「ありがとうお兄さん!」」」」
すると子供達が一斉に俺へと抱きついてきた。
皆女の子のため、後10年後だったら俺は鼻の下を伸ばしていただろう。
けど子供達を助けることが出来て本当に良かった。後は無事にこの子達を村へと戻すだけだ。
そして俺は囚われた子供達をボルチ村へと帰すため、砦を後にする。
「あ、あれは⁉️」
ボルチ村へと戻るとリアナ達を含め、大勢の人が俺達を出迎えてくれた。
「あ! お母さんだ!」
「お父さ~ん!」
砦から救出した子供達は自分の親を見つけると一目散に駆け出す。
「ああ! 良かった! 本当に良かった!」
「心配したぞ!」
親達は走ってきた子供を抱きしめると涙を流して喜びの表情を浮かべている。
「ヒイロちゃんお疲れ様~」
「ただいま。村の方に連れ出された子供達も上手く助けることができたみたいだな」
「うん!」
リアナは満面の笑みで返事を返してくる。
ん? これは⋯⋯。
この旅が始まる前までは、ルーンフォレストに戦争のきっかけに使われたことによって作り笑いしかできなかったリアナが、今は心の底から微笑んでいるように見える。
シズリアで起こった爆発で、負傷した人達を回復魔法で治療したことや、この村で盗賊を退治して子供達を救ったことで、リアナに勇者としての自信が芽生えてきてるのかもしれない。
久しぶりにリアナの本当の笑顔を見たが、やっぱりそのとろけるような笑った顔が俺は好きだ。なんだか見ている人を幸せにしてくれる力があるように感じるから。
これからもずっとその笑顔でいてほしいが⋯⋯。
「どうしたんだヒイロ? ぼーっとして」
「あ、ああ⋯⋯グレイ⋯⋯何でもない。それよりうまくいったみたいだな」
盗賊達が縛られて地面に転がっている状況を見れば、グレイの作戦が大成功だったことがわかる。
「まあな⋯⋯そっちの砦にいた盗賊達はどうしたんだ?」
「ああ⋯⋯室内で爆弾を使って自滅したからそのまま置いてきた」
「そっか⋯⋯それは仕方ねえな」
真相は違うけど⋯⋯ただ今ここにいる盗賊も砦にいた奴らと変わらない卑しき心を持った者達だろう。
もし俺達がこの村に来なかったら、どんな悪行をしたのかを考えると始末してやりたい。
だが、さすがに縛られて無抵抗になっている奴らを皆の前で殺すことはできないけど。
「おお、皆様! この度は盗賊を退治し、子供達を救って頂きありがとうございます」
グレイと話しをしていると村長が頭を下げて、涙を流しながらお礼を言ってくる。
「子供達を無事に助けることが出来て良かったぜ」
「怖い目にあっていますから心のケアもお願いしますね」
1ヶ月も盗賊達と一緒だったんだ。何かトラウマを抱えてもおかしくない。しっかりとカウンセリングをしてほしいものだ。
「ええ、暫くは拐われた子供達には大人がつきっきりで一緒にいることに致します。それと⋯⋯捕まえて頂いた盗賊達ですが⋯⋯」
普通ならこのまま憲兵達に引き渡す所だが⋯⋯。
「申し訳ありませんが、盗賊達を国の憲兵に引き渡すまで、皆様には村に留まって頂きたいのですが⋯⋯。もし盗賊達が逃げ出すようなことになれば、我々では対処できる自信がありません」
ならいっそうのこと殺してしまえばいい⋯⋯と言葉にしかけたが、何とか堪えた。
村長の頼みを聞いて上げたい所だが、俺達も旅を急ぐ身⋯⋯いつまでもここにいる訳にはいかない。
だが⋯⋯。
「わかりました。憲兵が来るまで、この村に留まることにします」
「申し訳ありません。何から何までありがとうございます」
これはしょうがないだろう。この盗賊達に逃げられたらおそらく報復を食らってこの村は滅ぼされてしまう可能性があるからな。
「ではさっそくセーレンに早馬を出します」
「シズリアではないのですか?」
ここから1番近い街はシズリアだ。わざわざ遠くの街まで行く必要は⋯⋯。
「シズリアは中立都市ですから、アルスバーン領域に入ってくることはありません」
中立であることは貫くということか。けれど有事の際にはそれを破ってもいい気がするが⋯⋯。
「わかりました。では俺がセーレンまで行くのでみなさんはここでお待ち下さい」
「ヒイロさんがセーレンまで行って頂けるのですか?」
「ええ⋯⋯俺にはこれがありますから」
そう言って俺は身体を宙に浮かべる。
「そ、そうですね。ヒイロさんは空を飛ぶことができましたね」
まだ時間は10時くらいだ。急げば午前中にセーレンに到着して今日の夜か明日の朝には憲兵の人が来てくれるだろう。
「ということでセーレンまで行ってくるよ。グレイはティア達を頼む」
「わかりました。確かにこのまま盗賊を置いていく訳にはいきませんよね。お兄ちゃんよろしくお願いします」
「こっちのことは任せておけ」
ティアの許可も得れたので、俺はさっそくセーレンへと移動することにした。
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