第210話 またまたピンチの俺
翌日昼前
昨日は大変だったな。ディレイト王の計らいで、メルビア城でゼヴェルを倒した祝勝会を行った。皆楽しげに騒いでいたが、特にレナとラナの御両親のはしゃぎっぷりといったらもうすごかった。まあそれも仕方ないか⋯⋯娘を第3のゼヴェルにしなくて済んだのだから。
そんなこんなで夜遅くまで宴は続き、結局起床したのが昼食前になってしまった。
さて何時までもゴロゴロしてもしょうがないからいい加減起きるか。
しかし体は重りがついたように動かない。何かと思い布団をめくると、そこにはエルミアがおり、俺の腰の部分をガッチリとホールドしていた。
「⋯⋯おはようエルミア」
「⋯⋯おはよう⋯⋯」
目があったので朝の挨拶をしたが、エルミアはまたそのまま目を閉じて安眠しようとする。
「いやいやいやいや! 何でエルミアちゃんがここにいるの⁉️」
アリエルとエルミアはディレイト王から、部屋を宛がってもらったはず。
ここで寝ている意味がわからない。
「ダメだよ⋯⋯自分の部屋で寝なきゃ」
こんな所を誰かに見られたら、今度こそロリコンの称号を押しつけられてしまう。
「⋯⋯ダメ?」
この子はまだ寝ているのか、まだボーッとしている感じがする。いや昨日もそうだったが、これがエルミアの素の状態なのかもしれない。
それにしても、首を傾げてダメ? て保護欲を擽る姿だな。思わずダメじゃないよと言いたくなる。
「ダメダメ。年頃の女の子は、好きでもない人と一緒に寝ちゃいけないんだ」
「⋯⋯それなら問題ない⋯⋯わたし⋯⋯お兄さん⋯⋯好き⋯⋯」
オウッ⋯⋯そうだった。それなら問題ないのかな?
いやあるに決まってるだろ。いくら少女とはいえ、エルミアの可愛さに、いつか欲望に負けてしまうかもしれん。
俺は注意しようと話しかけようとするが、エルミアはその小さな体を震わせていた。
「夜⋯⋯暗い中で⋯⋯1人は怖いの⋯⋯」
そういえばアリエルが言ってたな⋯⋯エルミアはゼヴェル封印の時に酷い目に合わされたって⋯⋯。しかも両親も友達もいない場所で封印から解けても、頼る人がいなくて困るよな。
幸いなことにエルミアは俺に懐いてくれている。だったらやることは1つじゃないか。困っている人を見捨てるなんてお前らしくないぞヒイロ。
「わかった⋯⋯好きなだけいてもいいよ」
「⋯⋯本当?」
「本当」
「⋯⋯絶対?」
「絶対」
「ありがとう⋯⋯お兄さん⋯⋯」
自分の願いを聞き入れてもらえて嬉しかったのか、エルミアは俺の胸に飛び込んで来たため、抱きしめる。
まだ15歳だけど何だか娘を持った気分だ。
そんな安寧の昼を迎えたが、その平和は何時までも続かなかった。
「ヒイロちゃん⋯⋯ディレイト王が玉座に来てほ⋯⋯しい⋯⋯」
突然ドアが開き、リアナとラナさんが部屋に突撃してくる。
昨日もそう思ったが、リアナはノックするということをしらないのか!
今度俺もノックなしでリアナの部屋に侵入してやる!
「ヒ、ヒイロ? あ、あなたエルミアちゃんに何を⋯⋯」
しかし今はそんなことを考えている暇はない。
2人は今、まさに俺を変態を見るよな目でこちらを見ている。
ベットで男が少女を抱きしめている⋯⋯誰がどう見てもアウトだ。
「落ち着け2人とも! エルミアちゃんは1人で寝ると、昔の怖いことを思い出すから俺のベットに潜り込んだだけなんだ!」
嘘を言ってもしょうがない。俺は事実を持って2人の信頼を勝ち取ることにする。
「そう⋯⋯だね⋯⋯アリエルちゃんも昨日言ってたし」
「突然しらない人しかいない所に来てさみしかったのよね⋯⋯でもどうせなら私の所に来て欲しかったなあ」
ラナさんの最後の方の言葉は聞こえなかったが、どうやら2人は俺を信じてくれるようだ。やはり昨日のゼヴェル戦は絆が深まった一戦だった。
「じゃがいつまでもいてくれってプロポーズしておったじゃろ」
「「プ、プロポーズゥゥ! しかも何でアリエルまでベットの中にいるの⁉️」」
どうやらアリエルまで布団の中にいたようだ。
疲れていたとはいえ、布団の中に2人いて気づかないなんて油断しすぎだろ俺。これが敵だったら死んでるぞ。
「そ、そんなこと言ってない!」
「なんじゃ? 嘘じゃったのか⋯⋯エルミアも可愛そうにのう」
アリエルの言葉を聞いたからか、エルミアの目からひとしずくの涙がホロリと地面に落ちる。
「お兄さん⋯⋯ずっと⋯⋯いてくれるって⋯⋯言った⋯⋯」
何故エルミアちゃんと一緒に寝る約束から、プロポーズまで話が飛躍するんだ! これもアリエルせいだ! 昨日もそうだったがグレイと同じで俺を陥れるのが趣味なのかこいつは!
しかし今のこのエルミアちゃんの状態を見て、違うなどというセリフを言葉にすることなど俺にはできない。だが「はい」と言った瞬間俺はリアナとラナさんに殺られるだろう。
どうする俺⁉️
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