第208話 ヒイロのピンチと巫女の正体

「みんなも2人のことが気に⋯⋯なっ⋯⋯て⋯⋯」


 リアナに見られた! 大事な所を布団で隠した少女と、裸で俺に抱きついている少女を!

 

 しかもリアナの後ろにはみんなの姿が見える。


 終わった⋯⋯全て終わったよ。


 例え意図したことではなくても、この状況を見たら誰もが俺を変態ロリコン野郎と言うだろう。


「ヒ、ヒイロちゃん! どういうこと!」

「あらあら⋯⋯すごい現場に来ちゃったわね」


 リアナは今にも雷魔法を放ちそうな出で立ちで、それとは対称にレナは落ち着いた様子で言葉を発した。


「ほ、ほら! この娘達はゼヴェルを封印していた巫女さんだよ。あらゆる状態を治す【女神の息吹きアルテナブレス】なら2人を解放することができると思って!」

「それで何でヒイロさんのお部屋にいるの⁉️」


 マーサちゃんは笑顔を浮かべているが、目が笑っていないから怖い。ルーンフォレスト1の看板娘の笑顔はどこにいってしまったのだ。


「ゼ、ゼヴェルとの戦いに巻き込まないため、ここなら大丈夫だと思って転移させたんだ!」


 だが俺にとっては、最も安全じゃない場所になったけど。


「けれどそちらの子は恥じらって⋯⋯もう1人はヒイロくんに抱きついているのは何故ですか? ヒイロくんの奴隷として、勝手に寝室を荒らされるのは看過出来ません」


 ルーナは何時も通りに見えるが、だがこういう時普段と変わらない人の方が怖い。現在の状況を冷静に分析しているに違いない。


「お兄ちゃんってロリコンだったんだ⋯⋯大人の女性である私に手を出さなかったことも納得です」


 いや、ティアの見た目はこの子達と変わらないぞと突っ込みたいが、そんなことを言える状況じゃないので黙っておく。

 

 これはもう正直に言おう⋯⋯今日俺達はゼヴェルという強敵を力を合わせて倒し、絆は一層と深まっただろう。きっと俺のことをわかってくれるはずだ。


「こ、ここはどこじゃ! 突然この男がベットに来て妾達を⋯⋯」


 少女の1人が突如涙を流し、叫び声を上げ、俺を変質者に仕立て上げようと声を上げる。


「な、何言っちゃってんのこの子は!」

「ヒイロ! やっぱりあなたは変態ロリ好きエロ男だったのね!」


 やっぱりってなんだやっぱりって! ラナさんとは結構打ち解けてきたと思っていたのに⋯⋯。


「いやいやいやいや! 俺達さっき初めてあったばかりだよね! 忘れてたのは悪かったけど何もしてないよな!」

「ひ、ひどいのじゃ⋯⋯初めて殿方に裸を見られたのに何もなかったことにされるなんて⋯⋯」


 くっ! こうなったらもう1人の子に身の潔白を証明してもらうしかない。


 裸で俺に抱きついている少女に目を向けると、少女は初めて言葉を口した。


「お兄さん⋯⋯大好きです⋯⋯」


 えっ? 好きって俺のこと? どどど、どういうこと⁉️


「終ったなヒイロ⋯⋯」


 そう言ってグレイは俺の肩をポンっとたたく。


「いつかヒイロは犯罪に走ると思っていたが⋯⋯」


 お前は俺のことをそんな風に見ていたのか!


「そういえば前兆は以前からあった⋯⋯公園で遊ぶ少女達を舐めるような視線で、息をハアハアしながら見ていたな」

「お前と公園に行ったことなんて一回もないだろ!」


 グレイはいつも女の子が絡むと俺を陥れてくる。こいつはもう俺の親友じゃない⋯⋯敵だ!


「ほら⋯⋯これ以上この変態ロリエロ男の側にいると穢れるから、こっちに来なさい」


 時代がかった話し方をするエルフの子は、俺から逃げるように去っていく。しかも離れ際にこちらを見て、ニヤリと笑ったのを俺は見逃さない。


 こ、このアマ! 狙って俺を嵌めやがったな!


 しかし今ここにいる者達は、変態を見るような目でこっちに視線を向けてきているため、俺が何を言っても信じてくれなそうだ。

 仲間との絆何てものは、一瞬で壊れるものだな。


「あなたも早く」


 しかしラナさんの問いかけに少女は動かない⋯⋯いや動かないというか震えてないか。


「こ、怖い⋯⋯来ないで⋯⋯」


 少女の行動にここにいる全員が一瞬凍りつく。

 いくら俺を断罪しようと皆が殺気だっているからといって、この怖がり方は尋常じゃない。


「ど、どうしたの? ほら、怖くないわよ」


 そう言ってラナさんが少女を迎えるために両手を広げるが、益々俺にしがみついてきた。


「そ、そんな⋯⋯」


 少女に怖がられたため、ラナさんが「ガーン」と擬音が聞こえてきそうくらいショックを受けている。


 なんだ? どうしたんだろ。

 それに何で俺には懐いているんだ?


「やはり無理じゃったか⋯⋯すまんの余興に付き合わせてしまって」

「「「「「「「余興⁉️」」」」」」」


 何? 俺はこの子の余興で皆に殺されそうになったのか!


「初対面でそれはひどくないか?」

「いやいや⋯⋯妾は嘘は言っとらんぞ? 勘違いしたのはその方達じゃろ」


 少女の言葉を思い返してみる⋯⋯た、確かにこの子は俺に裸を見られたとしか言ってない。


「どうじゃ?」

「ひどいなんて言ってごめん⋯⋯」

「うむ⋯⋯素直に謝る所は好感が持てるぞ⋯⋯まあ皆がお主に不信感を抱くよう仕向けたのは間違いないが」

「やっぱり俺を嵌めようとしたんじゃねえか!」


 この子は見かけによらず油断できないぞ! それにしてもゼヴェルを倒した後もレナに同じようなことをされたし、今日は本当に厄日だな。


「まあそう怒るな⋯⋯ちゃんと理由があってやったことじゃ」


 理由? 俺を陥れることにどんな理由があるんだ⁉️


「そんなことよりあなた達は誰なの⁉️ 私達と同じエルフのようだけど⁉️」


 そんなことで片付けられたくないが、俺もこの子達の正体が知りたいので黙ってる。


「妾か? 妾はお主達の言葉で言うとゼヴェルを封印した初代の巫女で、名はアリエル⋯⋯そしてこっちは2代目の巫女でエルミアじゃ」


 初代と2代目⁉️


 その答えに俺達は驚愕するのであった。


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