第181話 レナを探せ

 俺達は空を飛んで行ったことにより、予定より早くアッサラーマの街に到着することができた。

 今回は迅速にアッサラーマに到着し、レナさんが奴隷として売られてしまう前に奪還するのが目的だ。

 そのためにちょっと荒っぽくなるけど大丈夫かと2人にも確認をし、了承をもらった。

 しかし2人の俺への非難が止まることがない。


「ヒイロさんはひょっとしておしっこをもらしている女の子に興奮する人なんですか?」

「終わったわ⋯⋯産まれて百年以上過ごしてきて、初めて恋を知ったのにその日に終わるなんて⋯⋯」


 マーサちゃんはぶつぶつと文句を、ラナさんは良くわからないことを言いながら、2人は濡れた股を手で隠して、ジト目で俺の方を見てくる。


 言質は取ったじゃないかと言えば、さらに火に油を注ぎそうなので、俺は黙っている。


「もうこれは責任を取ってメルビアに戻りしだい、お母さんに娘さんを下さいって挨拶して下さいね」

「わ、私の責任も取りなさい⋯⋯いえ、何でもないわ」


 やっぱりマーサちゃんが予想通りのことを言葉にしてきたが、まさくラナさんも同じようなことを言ってくるとは思わなかった。仮面の騎士の正体が俺だとわかって心境の変化があったみたいだ。

 突然キスもされたし。


「ちょっとヒイロさん聞いていますか?」


 ラナさんのことを考えていたらマーサちゃんから注意されてしまった。


「と、とりあえず宿の部屋を取って2人とも着替えようか」

「そうですよね⋯⋯おしっこで濡れた私と一緒にいるのは恥ずかしいですよね⋯⋯うぅ⋯⋯」

「ごめんなさい⋯⋯私はきたないよね、汚物よね⋯⋯うぅ⋯⋯ごめんなさい」


 2人のためを思って言ったが、泣かれてしまった。

 今何を言ってもマーサちゃんとラナさんには届かなそうだ。

 これはとっとと宿の部屋に押し込んで着替えてもらおう。


 俺は急ぎ宿を取り、2人を部屋へと促すのであった。



 宿屋はシャワー付きの値段が割高の部屋を選んだ。

 さすがに大浴場でおしっこを洗い流すのは、2人とも嫌だろうと思って。

 たぶん洗い流すのに2、30分くらい時間がかかるよな。それなら⋯⋯。


「ごめん⋯⋯すぐ戻るから冒険者ギルドに行ってもいいかな」


 俺はドア越しに2人に語りかけるとすぐに返事が返ってくる。


「わかりました」

「姉さんを探すからなるべく早く戻って来てね」

「2人がシャワーから上がる頃には戻るよ」


 ギルドの場所は宿屋に向かう途中にあったからすぐ戻れるはずだ。

 、何が起きるかわからないため、保険をかけておいた方がいいだろう。


 俺は足早に、アッサラーマの街にある冒険者ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドから戻ると、二人ともシャワーから上がっていたので、レナさんを探すための作戦会議を行う。


「時間がない中、この広い街でどうやって姉さんを探せばいいの?」


 アッサラーマはメルビア王都ほどではないないが、大都市といえるくらいの街だ。そして厄介なことにここは、夜の顔があるため、大人が遊ぶようの所がたくさんあり、奴隷市場も開かれている場所が多い。


「ヒイロさん、この間ティアが襲われていた時に探知した魔法で探すことはできないのですか?」

「ティアが襲われた時? やっぱりあの時もヒイロが魔法で探知していたのね。いくらマーサの目が良いといっても数キロ先のことが見えるなんておかしいと思ったわ」

「あの時は俺がそう指示をしたから⋯⋯マーサちゃんは悪くないよ」

「⋯⋯とりあえずそのこと後にして、どうなのヒイロ? それで姉さんを探すことができる?」


 確かにアッサラーマの街にいる人を探知魔法で確認することは可能だが、2つ問題がある。


「実は冒険者ギルドに行く時、探知魔法を使っていたけど、この街には以外とエルフが多くいるから、誰がレナさんかわからなかった」

「そんなにいるの⁉️」

「少なくとも100人以上はいる」

「そんな⋯⋯」


 俺がレナさんの顔をわかればいいのだが⋯⋯。


「それともう1つ⋯⋯サブルの話では足が着かないように、ステラ紹介から別の業者にレナさんを売っているから、無理矢理奪うような真似をすれば、俺達はお尋ね者になってしまう」

「何で! 私達は拐われた姉さんを助けるだけなのに⋯⋯そんなのおかしいわ!」


 ラナさんの言うことは正しい⋯⋯だが憲兵の側から見れば、俺達が嘘をついてエルフを手に入れようとしている悪い奴かどうかの確認をしなければならないため、そう簡単にレナさんを助けることはできないだろう。


「ヒイロさんとラナさんが仰っていることはわかりますが、そのお話はレナさんを見つけなければ成り立ちません」


 マーサちゃんの言うとおりだ。まずはレナさんを見つけなければ話にならない。だがどうやってレナさんを探す。


「ヒイロは探知魔法で離れている人の顔もわかるのよね?」

「わかるよ」

「だったら私の顔を探してくれないかしら」

「ラナさんの顔を?」

「私と姉さんはそっくりとまでは行かないけど、村の皆には似てるって言われてたから」


 なるほど、それならわかるかもしれない。


「わかった。やってみるよ」


 俺は体内に魔力を集めて、魔法を言葉にする。


探知魔法ディテクション


 俺を中心に魔力の波が広がっていき、アッサラーマの街にいるエルフを捉える。


 違う違う⋯⋯この人も違う。

 30人、40人と視ていくが、該当する者はいない。

 中々見つけることができない、ひょっとしたらもうこの街から立ち去ってしまったのか。

 80人、90人と顔を確認して諦めかけたその時。


「いた!」

「本当!」


 扇情的な服を着て、毅然とした表情で佇んでいるエルフがいる。

 そして首には奴隷の首輪が見える⋯⋯間違いない!


「姉さんはどこにいるの!」


 ラナさんは焦った様子で俺を問い詰めてくる。

 無理もない⋯⋯探し求めていた姉が手の届く所まで来たんだ。


「歓楽街の地下にある舞台の袖にいる」

「ヒ、ヒイロさんそれって⋯⋯」


 マーサちゃんはそこが何か察したようだ。


「奴隷オークションが開催される舞台だ」

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