第179話 いざアッサラーマへ
「お兄ちゃんこれを⋯⋯」
ティアからMP回復薬をもらい、それを一気に飲み干すと8割ほどのMPが回復する。
「よし! それじゃあすぐにアッサラーマに行ってくるよ」
「では私も⋯⋯姉さんの顔がわかるのは私しかいないしね」
ヒイロの言葉にラナは間髪入れず答える。
リアナ達は、今のラナとヒイロを二人っきりにするのは危険と判断するが、ラナの言っていることは合理的なので反論することができない。
「何かあった時のために、もう1人くらいいた方がいいと思います」
ティアの提案にラナ以外の女性陣が頷く。
「では提案した私が行きましょう」
「いやティアは王女だからダメだろ。もしルーンフォレストの奴らにバレたら外交問題になる」
「⋯⋯わかりました。今回は諦めます」
ティアも俺の意見に納得して引き下がる。
「じゃあ私が手伝うよ」
「勇者を知っている奴がいるかもしれないからリアナもダメだ。見つかったらランフォースが追手を出してくるだろう」
「そ、そうだね」
ランフォースにとっては勇者は消しておきたい存在だ。
いつかはリアナを陥れた恨みを返してやりたいが、今はまだその時じゃない。
となると残りはグレイかルーナかマーサちゃんになるな。
「ヒイロさん⋯⋯私を連れていって頂けませんか」
マーサちゃんが右手を上げ、立候補をしてくる。
「新しい武器もありますし、ぜひラナさんのお姉さんを助けに行かせて下さい」
けして安全な任務ではないけど、ここまで言われたら俺は断る理由はない。横にいるラナさんに視線を向けると頷いているのでもう1人はマーサちゃんに決める。
「わかった⋯⋯それじゃあマーサちゃんにお願いするよ」
「はい! ありがとうございます」
「お礼を言うのは私の方よ。ありがとうマーサ」
「それじゃあすぐに行こうか」
こうして俺とラナさん、マーサちゃんの3人でラナさんのお姉さんを救出するために部屋を出る。
「ラナ⋯⋯」
城のエントランスに着くと、そこにはラナさんの両親が待っていた。
「お父さん、お母さん⋯⋯私行ってくるね」
「ラナ⋯⋯危険なことは⋯⋯」
ラナさんのお母さんは心配そうな目で娘を見ている。お父さんの方も話すことはできないが同じ気持ちだろう。
「姉さんをきっと助けてみせるから⋯⋯それでまた家族4人で暮らそう」
ラナさんの言葉にご両親は涙する。
「でも⋯⋯せっかく会えたのに⋯⋯貴女にまで何かあったら⋯⋯」
そんなことは絶対にさせない。
「ラナさんのお父さん、お母さん⋯⋯ラナさんとレナさんは必ずお二人の前にお連れすることを約束します」
「ヒイロは凄く強いから大丈夫よ」
「ヒイロさん⋯⋯娘達をお願いします」
ご両親は俺達に向かって深々と頭を下げてくる。
ラナさんと3年も離れていたんだ。絶対にこの家族を無事再会させてみせると俺は心に誓う。
「任せてください!」
俺達は2人の想いを胸に、メルビア城を後にした。
「え~と⋯⋯アッサラーマの街へ行くには⋯⋯」
「西門から街道沿いに向かって、分かれ道を左に向かえば着くはずよ」
さすがラナさんはメルビア王国に住んでいただけはあって地理に詳しい。
「徒歩だと2日、馬車だと半日くらいです」
「ヒイロさんはアッサラーマに行かれたことは?」
「ないね。だから転移魔法は使えない」
残念だがそれを嘆いてもしょうがない。
「馬を借りて行きますか? それでも3時間はかかりますけど」
「だったら1時間でいくぞ」
「「えっ⁉️」」
今は時間が惜しい。多少魔力を使っても最速で行ける方法を取るべきだ。
「い、1時間って転移魔法は使えないって言ってたじゃない」
もし転移魔法が使えたのなら1時間どころか一瞬だけどな。
「たぶんヒイロさんのことだから、反則技を思い付いたのでは」
「反則技って⋯⋯」
まあスキル【魔法の真理】自体がチートだから、反則といえば反則か。
「ちょっと荒っぽくなるけどいいかな?」
「いいわ。今は一刻も速く姉さんの元へと行きたいもの」
「私も大丈夫です」
よし⋯⋯言質は取った。
これで後で文句を言われることはないだろう。
「じゃあ2人とも俺の手を取って」
ラナさんは俺の左手を、マーサちゃんは俺の右手を取る。
その時、ラナさんは一瞬戸惑いを見せ、顔を紅潮させた。
「ラナさん⋯⋯照れている場合じゃありませんよ」
「わ、わかってるわよ! ただその⋯⋯暖かくて安心する手だなあと⋯⋯ち、違うわ! ほら早く行きましょ!」
俺もラナさんやマーサちゃんの手を握るのは少し恥ずかしいから、意識させないでほしい。
「手を取るって、やっぱり転移魔法でしょうか」
「けどヒイロは何で後ろ向きに手を差し出して来たのかしら」
「しっかり捕まってないと危ないからね」
俺は念のため、忠告をしてから魔法を唱える。
「【
3人の体が浮かび上がる。
「きゃっ! 浮いてる?」
「まさか、飛んで行くの?」
自分の体が浮遊することによって、マーサとラナは驚きの表情を浮かべるが、まだこの時は余裕があった⋯⋯この時までは。
「じゃあ行くよ」
「「キャァァァァ!」」
ヒイロが声を上げると同時に、体が突如前へと持っていかれ、猛スピードで飛行し始めたが、2人は悲鳴を上げることしか出来なかった。
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