第167話 ラナVSエリウッド後編
「イツッ!」
何⁉️ 何が起きたの⁉️
私は一度エリウッドから距離を取るために、後方へとジャンプする。
そして左手を見て見ると何かに撃ち抜かれており、大量の血が流れ始めていた。
「ど、どういうこと⁉️」
答えを知るためエリウッドに視線を向けると、構えた弓の所で矢の代わりに黒いものがセットされていた。
「そ、その黒いのは何よ」
「これか? これは俺の魔力だよ」
「魔力?」
「セルグ村を襲ったあの時、俺の中で進化が始まり、出来るようになったのだ」
まさか悪事を行ったため紋章が変わったの⁉️
「この矢は先程の鉄製の矢と違って威力もスピードも段違いだぞ⋯⋯よけれるものならよけてみろ」
そう言ってエリウッドは弓矢の照準を私に合わせてくる。
大丈夫⋯⋯正面からの攻撃ならいくら矢が速くてもかわせ⋯⋯。
「あぁっ!」
な、何今のは⁉️ エリウッドの黒い矢が放たれたと思ったら、私の右足の太腿が貫通されている。
「くっ!」
まずい! 右足を撃ち抜かれてしまったため、動きが制限されてしまった。
辛うじて片足で立っているが、これでは攻撃を仕掛けることができない。
「うあっ!」
今度は黒い矢が右手に放たれ、腕を貫かれてしまう。
「何だ、もう終わりか⋯⋯威勢が良かったのは口だけだったな」
悔しい⋯⋯私はセルグ村を陥れたエリウッドを倒すことができないの⋯⋯私は何のために今まで修行してきたの⋯⋯この日のためでしょ!
けれど手足を撃ち抜かれ、今動くのは左足だけだ。
「ふむ、もう戦えないとは思うがせっかくなので、相応な姿に切り裂いてやろう」
そうエリウッドが言葉にすると黒い矢が私の肌を傷つけず、服だけを貫き、あっという間に下着姿にされてしまう。
「やはり綺麗だな⋯⋯これから私の物になるかと思うとうれしいぞ」
そして私の肌を舐めるような視線をして、一歩一歩と近づいてくる。
この時を私は待っていた。
エリウッドはもう私が動けないと思って油断している今が最大のチャンス。
私は唯一動かすことができる左足に気を溜め、技を発動する。
【風神】
左足で地面を蹴り、風を切るようにエリウッドに接近する。
「なに!」
予想通り油断していたのか、エリウッドはいきなり私が近づいてきたことによって驚きの表情を浮かべる。
「村の皆の恨みを思いしりなさい! 食らえぇぇぇ!」
【風神】でついた勢いのまま、私はエリウッドの顔面を全力で蹴り飛ばす!
「あびしッ!」
エリウッドは情けない声を上げたまま世界樹まで吹き飛ばされ、地面にひれ伏す。
「やったよ⋯⋯これで皆の恨みを少しは晴らすことができたかな」
いつっ! だけどエリウッドを倒した代償は大きかった。【風神】を全力で使ったことにより、左足も感覚がなく、身体を支えるのがやっとだわ。だけどなんとかメルビアまで戻らないと⋯⋯。
私はこの場から立ち去ろうとしたその時。
シュン!
「つぁっ!」
倒れていたエリウッドから黒い光が放たれ、唯一無事だった左足を撃ち抜かれてしまい、その場に崩れ落ちてしまう。
「貴様! よくもやってくれたな!」
エリウッドは顔を抑えながらゆっくりと立ち上がり、殺気を溢れさせながら私を睨み付ける。
「うぅ⋯⋯」
私は何とか立ち上がろうとするが、手足が動かず、逃げることもできない。
「殺してやる殺してやる殺してやる!」
狂ったかのようにエリウッドは言葉を繰り返し、弓矢の照準を私に合わせてくる。
「この私に傷を負わせやがって!」
先程とは比べ物にならない魔力が矢の部分に集まっている。エリウッドは私を本気で殺す気だわ!
「安心しろ⋯⋯レナもラナと同じ所に送ってやるから」
えっ? 今のエリウッドの言い方だと姉さんは生きてる⋯⋯の。
私は真意が知りたくて、力を振り絞りエリウッド問いかける。
「ねえ⋯⋯さんは⋯⋯無事なの?」
もう自分の勝利が確定していると思っているのか、エリウッドが私の問いに答える。
「最後に教えてやるか⋯⋯レナの奴は三年の襲撃を逃れやがった⋯⋯だがつい最近、メルビアで目撃情報が入って今俺の部下が捜索中だ」
姉さんが生きてる! それだけで私の目からは涙が溢れ落ちる。
「何だ? 泣いているのか? だが今さら命乞いをしても無駄だぞ⋯⋯お前の代わりにレナを奴隷にして、たっぷりと可愛がらせてもらう」
エリウッドォォォ!
姉さんに会うためにも私はここで死ぬわけにはいかない!
「だ⋯⋯誰か助けて⋯⋯」
しかし動くことが出来ない私にやれることは、もう助けを呼ぶことだけ。
「クックック⋯⋯バカかお前は! ここはセルグ村だぞ! エルフ以外がここに来ることはできないのを忘れたか」
そう⋯⋯悔しいけどエリウッドの言うとおりだ。
「三年前ラナを助けた賢者ルドルフの転移魔法も、結界が張ってあるからここにくるのは不可能だったんだ!」
そんなことはわかっているわ。けれど姉さんに会えるかもしれないのに、諦めるなんてことは絶対にできない!
「たす⋯⋯けて⋯⋯か⋯⋯めんの⋯⋯きし⋯⋯さま⋯⋯」
私は無意識にここに来るはずがない人物を口にしてしまう。
「誰だそいつは! どんな奇跡が起ころうとお前はここで死ぬんだ!」
そしてエリウッドは魔力を溜め込んだ矢を解放し、今までとは比べ物にならないほどの黒い光が、瀕死のラナの元へと放たれた。
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