第106話 油断するとこうなる

 名前:スライ

 性別:不明

 種族:スライム族

 レベル:16

 HP:80

 MP:30

 力:D+

 魔力:E

 素早さ:D+

 知性:E

 運:A


 名前:スラぞう

 性別:不明

 種族:スライム族

 レベル:16

 HP:79

 MP:32

 力:D+

 魔力:E+

 素早さ:D+

 知性:E

 運:A


 お、お前ら⋯⋯生きてたんだな。

 俺は予想だにしなかった出会いに心が震え、涙が出そうになる。

 しかも前回あった時よりレベルが4もアップしてるじゃないか。

 ちゃんと修練を積んでいたんだな。だったらお前達の修行の結果を。俺はそう2匹の心友に誓う。


「ルーナ。スライムくらい軽く倒しちゃいなさい」

「頑張ってルーナちゃん」


 ラナさんとリアナはルーナに声援を送る。おそらくただの底辺モンスターだと侮っているのだろう。

 だが甘い。奴らをただのスライムと思うなよ。


「わ、わかりました」


 ルーナは緊張したおもむきで返事をする。

 残念ながら⋯⋯いやリアナとラナさんと違ってルーナは油断する様子がない。

 それもそうか。ルーナは前回こっぴどくやられているからな。


 スライ、スラぞうは様子を見ている。

 なぜだ。なぜ動かない。基本知能が低い魔物がとる行動は、立ち向かってくるか、逃げるかの2つだ。

 しかし心の友達は動くことをしない。

 まさか何か作戦でもあるのか。


「スライムってどういう魔物なんですか?」


 無垢なマーサちゃんが質問をしてくる。


「雑魚モンスターよ。人体に影響はない酸を吐いてきたり、ゲル状になって攻撃をしたり、後は体当たりがメインの攻撃よ」

「人体に影響がない酸ですか? それって何の意味が」


 リアナとラナさんが苦笑いをする。


「⋯⋯服を溶かしてくるんだよね」

「服を!? なんですかそのエッチぃ魔物は!」

「そうよ。スライムはちょっとエッチな攻撃をしてくるからマーサも気をつなさい」

「け、けど行動パターンも単純だから、油断しなきゃ大丈夫だよ。レベル4のルーナちゃんなら、少し苦戦するくらいで勝てると思う」

「そうね」


 行動パターンが単純? リアナよ。既に今の言葉で油断しているようなものだぞ。さあお前達の力をこの2人にも見せてやれ。



 相手が来ないことに焦らされ、ルーナは短剣を片手にスライムへと突っ込む。


「いきますよ! きゃあ!」


 突然の叫び声と共にルーナの身体の半分が地面へと埋まる。


「落とし穴⋯⋯だと⋯⋯」


 さすがに俺もそれは読めなかった。

 目の前のルーナはいきなりの出来事に、何が起きたか理解できてない。


「えっ? 何?」


 そして逃げ場のない獲物に向かってスライムは突進し、落とし穴の上から酸の攻撃を仕掛ける。


「ふ、服が溶けちゃう!」


 ルーナの上着はほぼ溶けてしまい、残すは下着だけだが、その下着も所々に穴があき、もはや肌を隠す役目を果たしていない。


「ヒ、ヒイロさん! ルーナさんがすごいことになっちゃってるよ!」


 わかってる⋯⋯わかってるけどもう少し、スライとスラぞうの成長とルーナの姿を見守らせてくれ!


 このままではまずいと思ったのか、ルーナは穴から這い上がるが、それこそが心の友達の罠だった。

 穴を上がりきって体勢が取れていない所に、ゲル状化したスライとスラぞうがそれぞれ両足に絡みつき、左右に引っ張るとルーナは足を広げ、あられもない姿になってしまう。そして下着が徐々に酸で溶けて、もう少しでその先が見えてしまいそうだ。


「やだ! やめて!」


 ルーナの悲鳴が草原に木霊する。


「リアナとラナさんの予想通りの結果になったな」

「ち、ちがうよ! こんな展開になるなんて思ってないよ!」

「そ、そうよ! 私がエッチなことを考えている子みたいな言い方しないでくれる!」

「そんなことより早くルーナさんを助けて下さい!」


 マーサちゃんの叫び声によって2人は我に返る。


「行くわよリアナ! マーサちゃんはその変態男の目を塞いでおいて」

「わかったよラナちゃん」

「任せて下さい」


 まずい! さすがにリアナとラナさんに行かれたらスライ、スラぞうは討伐されてしまう。

 俺はこんな時のための、スキル【魔法の真理】から、2人を足止めするものがないか検索する。

 よし! これだ!


 俺は密かに魔法を唱える。


【大地の息吹】


 植物を操る魔法を唱えると、走り出した2人の足元にあった草が絡みつき、リアナとラナさんは転倒してしまう。


「何なのこれ!」

「ちょ、ちょっとやめなさい!」


 俺は草が脚に絡みつく程度に魔法を唱えたつもりが、思わぬ方向に向かっていた。草がリアナの手足を拘束して、スカートが捲れるよう天高く伸び、ラナさんに至っては胸が強調するように縛られていた。


「ヒ、ヒイロちゃん見ないで!」

「み、見るなあ! エッチ! バカ!」


 しかし残念ながら俺の目は、マーサちゃんの手によって塞がれていた。

 今この手を振り切るのは容易だ。だがそれをした場合、俺の信頼度が地に落ちることは間違いないだろう。


 スライ、スラぞうは周囲の異変に気づき、拘束していたルーナを解放してこの場を離れる。その際に心友達は一瞬振り向き、俺にメッセージを送った気がした。


 スライ「ありがとう心の友よ」

 スラぞう「この恩は忘れない」

 ヒイロ「また会う日まで、死ぬなよ」


 こうして友との再会を果たした3人だったが、己の使命のため、また新たなる地へと旅立って行った。


「ちょ、ちょっとヒイロさん! 何全てが終わったみたいな顔をしているんですか! 早く3人を助けて上げてください!」


―――――――――――――――


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