第67話 勝利の御褒美?
決闘が俺の勝利で終わり、エリスさんとダリアさんがガクリとその場に膝をつく。
「あの⋯⋯」
リアナは2人に声をかけようとするが、何て言えばいいのかわからないようだ。
ただの敗けならまだいい。だが圧倒的敗北だ。
「リアナ様いいのです⋯⋯私達の特技である聖なる壁と力を真っ向から打ち破られたので敗北を認めるしかありません」
エリスさんとダリアさんはゆっくりと立ち上がる。
「私達の負けです」
そう言って頭を下げてきた。
直ぐ様決着がついたため、2人が弱く見えるかもしれないが俺はそんなことは思っていない。
もし、【門と翼の紋章】を授かっていなかったら負けていたのは完全に俺だったはずだ。
しかし勝ちは勝ちなので、勝った時の褒美を聞いてみる。
「それで決闘を申し込んできた理由を教えて下さい」
頼むから俺を殺すためとか言わないでくれよ。
「エリス副団長~。ここは私から~」
どうやらダリアさんが答えてくれるようだ。
「私達これからもリアナ様の護衛をする予定だったけど~、前に魔物が攻めて来たときに護ることができなかったから~」
護衛は冒険者学校に入るまでじゃなかったのか。
リアナの方を見ると苦笑いをして頷く。
「だから私達とヒイロくんのどちらがリアナ様の護衛に相応しいか試したかったんだ~。負けちゃったけどね~」
ということは2人はリアナの護衛は諦めたってことか。
「残念ですけど今はあなたに譲ります。けど⋯⋯騎士団で訓練していつか勝って見せますから!」
エリスさんは俺のことをキッと睨み、悔しそうな表情をする。
2人はリアナの護衛をやめるのか。
けどエリスさんとダリアさんには感謝してる。
エリザベートが攻めてきたとき、もし2人がいなかったからリアナを助けることができなかった。
本当は声に出してその気持ちを伝えたいが、エリスさんに嫌がられそうなのでやめておく。
「そういえば、後もう1つご褒美があったね~」
ダリアさんの言葉にマーサちゃんが、待ってましたとばかりに前へ出る。
そういば俺が勝ったらお嫁さんにって言ってたっけ。
本気なのかな?
「私をお持ち帰りできるよ~」
この話を聞いた女子3人は目をカッと開く。
「そして子供を作ってそのまま結婚しようね~」
「ヒイロさんが勝った時のご褒美は、私がお嫁さんになることですから!」
ダリアさんがとんでもないことを言ってきた。
しかし大人のナイスバディの女性にお相手して頂けることは、もう2度とないかもしれない。
この場はリアナ達がいるから切り抜けて、後でまたお話する機会を作ろう。
ガシッ!
「いてっ!」
背後からすごい力で肩を掴まれる。
またリアナか!
おそるおそる後ろを振り向くと、リアナではなくエリスさんだった。
「み、妄りにそういうことをしてはいけませんよ」
「は、はい」
いつもはっきりとしゃべるエリスさんと違い、何やら狼狽え、どもっている姿に俺は思わず頷いてしまう。
「はっ! 私は何を⋯⋯」
「あれあれ~、何で副団長が止めるんですか~」
俺もてっきりリアナが何か言ってくると思った。
「か、可愛い部下が変態ロリコン不審者の毒牙にかかろうとしているので、止めるのは当たり前です」
「今まで私のこと可愛い部下なんて言ったことなかったのに~、どういう心境の変化ですか~」
「そ、それは⋯⋯」
エリスさんは頬が紅潮し、少女のように恥ずかしがっている。
そしてその様子を見てリアナとマーサちゃんが何やらヒソヒソと話をする。
「どう思いますかリアナさん」
「エリスさん女の子が好きみたいだけど、それって異性で自分より強い人がいなかったからかもしれないね」
「確かにヒイロさんの強さに惚れてしまうことはありそうですね。私は惚れ直しちゃいましたもん」
「けど本当にダリアさんを心配しているだけかも知れないから今は五分五分かなあ」
「ですね」
2人は話が終わり、エリスさんを観察するような鋭い目で見つめる。
「と、とにかくそういう自分を大切にしないようなことはやめなさい」
「大切にしてますよ~、私そういう経験ありませんから~」
なるほど。ダリアさんは処女と。
俺はその情報を、頭の中の誰にも破られることのない金庫にしまった。
「そ、それとヒ、ヒイロ。あなたはこれから私と週に1度、訓練に付き合いなさい。そこでヒ、ヒイロの弱点を見つけて次は勝たせてもらうわ」
エリスさんの提案に俺は驚いた。
てっきり近くにもよりたくない、ゴミクズ野郎と思われていると感じてたからだ。
「わかりました」
俺の鍛練にもなるし、断る理由はないので承諾する。
この光景を見て、今度はダリアさんも交えて、リアナ達がヒソヒソ話をする。
「副団長話を誤魔化した~。それと今までクズとか変態ロリコン不審者って言ってたのに、どさくさに紛れてヒイロって呼び始めたよ~。照れながら言っててちょっと可愛い~」
「確かに凛としていたツンツン女騎士がいきなりデレるとギャップ萌えしますね」
「それよりこれはもう完全に黒だよ」
「黒ですね」
「黒だ~」
何を話しているかわからないけど仲いいな。
「あ、貴方達! もう帰りますよ!」
3人に向かって強い口調で帰宅することを伝える。
確かにいつまでもこんな所にいてもしょうがない。もう用はないので俺は転移魔法を使って宿屋の自分の部屋へと飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます