第57話 幕間2 密会
王城にて
魔物の大群により、騎士や衛兵は出撃し、民は城の中へと避難しているため、王城上層の護りは、今までにないほど手薄の状態になっていた。
そんな中、1人の老人とおぼしき人物が悠々と1つの部屋へと入っていく。
「これはこれはボルデラ様、ようこそおいで下さいました」
一室に現れたのは老人の姿をした魔族、魔術軍団団長ボルデラであった。
そして迎えるのはこの国の大臣であるクルドだ。
「さすがに王都の護りもこの混乱では形無しじゃのう」
「あの軍勢と戦おうとしている王はばかですから。今の世の中はうまく立ち回らなければならないということがわからないのです」
「それに比べてクルド殿は柔軟な思考をお持ちですな」
2人は不適な笑みを浮かべる。
実際にはボルデラはクルドを信用していないし、クルドもボルデラを信用していない。
「では、本日わざわざ城まで呼びつけた理由をお聞かせ願いたいのう」
「これはこれは申し訳ない。しかしこの方は気軽に外へ出られるお方ではないので、どうしてもボルデラ様に来て頂くしかなかったのです」
クルドの言葉にボルデラは反応する。
外に出られない?
そんな人物は限られている。
顔が知れている騎士団の団長や魔王ヘルド様を倒した勇者パーティー、そしてこの国の⋯⋯王族。
まさかわしに会わせたいやつとは⋯⋯。
「わしがここに来るため、そしてそちらの誰かが動きやすくするために陽動で3000もの魔物を使ったのじゃ。それに見合う人物だといいが――」
口では挑発するようなことを言っても、ボルデラの中ではここに来る価値のある人物が訪れることが予測できた。
「私ではその価値はないか?」
突然部屋のドアが開き、若い青年が現れた。
「いえいえ、貴方様であるなら危険を侵してここまで来たかいがあったというものじゃ」
ボルデラは平静を装っているが、内心では歓喜に溢れていた。
こいつが手を貸せば、わしの計画はさらなる前進を遂げるじゃろう。
「今後新たに出現した勇者や上級職の情報を流してもらう件はよろしいか? そしてわしの実験の為に力を貸してもらう」
「ええ、わかりました。
「たが、ただで協力することはできん。見返りはわかっているな?」
「もちろんわかっております。ただ既に見返りを受けているのでは?」
青年とボルデラの視線が交錯する。
「そうだったな。これからもその調子で頼むぞ」
「ほぉっほぉっほぉっ」
この後互いに当たり障りのないことを話、今日は解散となる。
ボルデラは転移魔法を使い、この場から去っていく。
「奴は信用できるのか?」
若い青年は苛立ちながら大臣であるクルドを問い詰める。
「できないでしょう」
「なんだと!」
クルドは問いに答えると青年は激昂する。
「ならばなぜあんな奴と私を引き合わせた!」
「今はあのような者でも力を借りないと状況を覆すことができません」
「だ、だが!」
「このままで良いのですか?」
「う、うむ⋯⋯」
どのような状況に置かれているかわからないが青年は今、とても追い詰められていた。
「それに勇者の情報を与えてもいいものか⋯⋯」
「そのことについては大丈夫です。貴方様は自分のことだけをお考え下さいませ」
「⋯⋯わかった」
青年は納得してはいないが、クルドの問いに了承する。
こうして王都が魔物に攻められている中、新たなる悪意がリアナに迫ろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます