第34話 魔獣軍団団長ザイド
魔獣軍団団長ザイド⋯⋯だと⋯⋯。
大魔王の部下?
俺は【
名前:ザイド
性別:男
種族:獣人族(魔獣軍団団長)
レベル:81
HP:17,210
MP:351
力:A
魔力:C
素早さ:B
知性:B
運:B
力は元魔王のヘルドと同じAクラス。HPはむしろ越えているぞ。
「大魔王って誰のことだ?」
「大魔王様のお名前は軽々しく発して良いものではない」
ラーカス村で俺が倒したヘルドより上の奴がいるのか。
しかし今は大魔王のことを考えるより、ザイドを何とかしなければ。
「おいヒイロ。奴は相当ヤバいぞ。逃げた方がいいんじゃないか」
グレイもザイドは強者だと見破ったのか、小声で逃走することを提案してくる。
「一応そのことも想定して、俺が奴と戦っている間にルーナとエドワードさんを馬車に乗せてくれないか」
俺は視線を向けるとルーナは震えながら答える。
「ご、ごめんなさい。さ、さっきから震えて体が――」
おそらくザイドの殺気は、低レベルの者を強制的に動けなくするほど強い。今のルーナのレベルではしょうがないだろう。
「大丈夫だ。ここは俺に任せて、ルーナはグレイと避難してくれ」
「す、すみません」
俺はルーナをグレイに預ける。
「任せろ。命に代えても守って見せるぜ」
良いことなのか悪いことなのかわからないが、可愛い女の子のことならグレイは守り通してくれる気がする。
「どうした? こそこそと相談は終わったのか」
俺達の話を待っててくれるなんて、魔物にしては紳士的な奴だな。
「ああ、もういいぞ」
「では、いくぞ!」
ザイドは透明? 氷? でできたバトルアックスを構え、こちらの様子を伺っているようだ。
アックスヘッドの部分には青い宝玉が輝いている。
なんだあの斧は! 巨体のザイドに似合わず、すごい綺麗なんですけど。
しかし、あんな物を食らうわけにはいかないので、ザイドが近づいてくる前に俺は魔法を唱える。
「【
7本の炎の槍が放たれるが、ザイドは動く気配がない。そのまままともに食らい火柱が上がる。
「やったぜ!」
グレイが思わず喜びの声を上げてしまう。こういう時って大抵殺ってないんだよね。
俺の予想通り魔法を受けても平然と歩いている。
どうやら生半可な魔法ではダメージを当てられないようだ。
それなら極大魔法をお見舞いしてやる。
俺は魔力を集めイメージする。かつて戦った元魔王の炎を。
「【
地獄の業火が解き放たれ辺り一面を焼け野はらへと変貌させる。
燃え盛った煙がザイドの姿を隠す。いや既にその存在は消し炭になっているのかもしれない。
魔王も使っていた魔法だ。いくら魔獣軍団とかの団長でも少なくとも無傷ではいられないはずだ。
「はは、何だよ今の魔法は。お前は
グレイは、いやこの場にいる
「す、すごいです。ヒイロくんにはいつも驚かされます」
誰もが勝ったと思った中、地獄の業火の煙を切り裂いてザイドが俺に接近してくる。
無傷? そんなバカな!
鋭い斬撃が頭を目掛けて振り下ろされると、俺はかわすの諦めて受け止めることを選択する。
ガキッ!
重い! それに冷たい! 今の一撃で短剣の刃にヒビがはいった。これは何度も受けると武器が破壊されてしまう。しかも斧の特性なのか、受けた所から冷たい冷気を発しているようだ。
このままだと寒いし、武器が破壊されてしまうので、これ以上攻撃して来ないでほしい。
しかし俺の思いとは裏腹に、ザイドは右に左に斧を振り回し、短剣の耐久力がどんどん落ちていく。
「いいぞ! さっきの魔法といい、俺の攻撃を受けきることといい、益々この戦いが楽しみになってきたぞ」
「それはどうも。楽しませる褒美としてどうやって魔法を防いだか教えてくれないか」
「そんなことは自分で考えろ。だが惜しいな、まともな武器があればもっといい戦いができたものを」
確かにそうかもしれないが、無いものをねだってもしょうがない。
俺は右手で攻撃を受けつつかわし、左手で魔法を唱える。
「【
覚えたての魔法が発動すると、6つの白い牙がザイドを捕らえ、そのまま拘束する。
だが俺は、先程の魔法を防御された件もあるので、油断せず後方へ下がり新たな魔法を放つ。
「【
液体窒素の白き霧を生み出し、辺りを一瞬にして氷の世界へと塗り替える。もし魔法を防ぐことができるならこれでわかるはずだ。
迫り来る白い霧に対してザイドは透明なバトルアックスを縦に構え、右手をスパイクの部分に、左手をグリップな部分を持ち言葉を紡ぐ。
「
ザイドを中心に氷の壁が三重に展開される。
これが【
しかし今さらキャンセルするわけにはいかない。壁を蹴散らすつもりで魔法を継続する。
一枚、二枚、そして三枚目の壁に【
パリンッ!
壁を全てぶち破ったが、そこ止まりで魔法が消滅してしまう。
「さっきの【
これは状況は不味いかもしれない。
接近戦は短剣の耐久力がないため実行することができないし、魔法はあの斧によって防がれてしまう。
武器を使うことによって魔法のような効果を発しているのか。
まずはあの武器が何なのか確認するため、俺は斧に向かって【
氷魔の斧
氷の属性を持つ両刃の斧。
斬りつけた部位を凍らせることができる。またキーワードの言葉を発することによって氷の壁や吹雪を起こすことができる。
なんだこの攻守に優れた斧は。
ひょっとしてこれが伝説級の武器ってやつなのか。
「ヒイロ!」
突然グレイが大声で呼んだため、視線を向けると、丸い玉を投げようとしていた。
あれはルーナに渡していた閃光玉だ。
俺は咄嗟に目をつむると光がこの場に溢れてきた。
「逃げるぞ!」
グレイの考えを察し、俺は馬車へと飛び乗る。
「くそっ!」
ザイドは片手で目を覆い、俺の居場所を見つけようと躍起になっている。
しかし閃光玉の効果が切れたのか、直ぐ様俺の方を見据えてきた。
「逃がさんぞ! 急いでブラッドホースを用意しろ!」
そう叫ぶと馬のような魔物が現れ、ザイドは飛び乗り、馬車を追いかけてきた。
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