第23話 スライムとの友情
「では、何かありましたら私に言って下さいね」
シスターは優しい瞳でルーナに言葉をかける。
「ありがとうございました」
ルーナは【聖約】を結んでくれたシスターに礼を言う。
「私としましては、もし次に会う時があれば、害虫の首に奴隷の証があれば面白いのですが――」
「そんなの全然面白くありません」
絶対シスターの言う通りになりたくないな。
しかし、もしルーナの首に奴隷の証が着いてしまったら、月のない夜は気をつけなければいけないと思った。
少し寄り道をしてしまったが、俺達は北門へと行き王都ルファリアを目指す。
門に到着し、城壁の外に出たところで、ラームの街の方から声をかけられる。
「お~い、ヒイロくん」
あれは――昨日俺達を助けに来てくれた衛兵の隊長さんだ。
「良かった、間に合って。昨日王都へ向かうことを聞いておいて良かったよ」
何か俺達に用があるのかな。
まさか!
昨日俺とルーナが同じ部屋に泊まったのを知って、婦女暴行罪で捕まえにきたのか。
いやいや、昨日は勇者が勝ったから大丈夫なはずだ。
それとも
俺は期待を胸に膨らませ、隊長さんの言葉を待つ。
「実は昨日の事件のことで――」
隊長さんは溜めを作る。
「
サブリーダーだったけどドゥウマは、懸賞金がかけられていたんだ。
隊長さんはずっしりとした袋を俺に渡してくる。
これって結構入ってそうだな。
「金貨100枚になります。受け取ったらこちらに署名を――」
「金貨100枚!」
「金貨100枚ですか!」
俺とルーナはあまりの金額に声が重なった。
金貨100枚は、一般家庭が25年くらい暮らしていけるお金だ。
たった一夜である程度のお金が入って俺は少し戸惑ったが、祖父母が残してくれた遺産を食い潰している状態なので正直助かる。
「ヒイロくんお金持ちですね」
「そうだな、今後の生活のためにもお金はないよりはある方がいい」
だからこそ、ルーナにお金を少し渡しておきたいが、お金を借りる行為に【聖約】まで持ち出して来たから、受け取ることはないだろう。
「では、私はこれにて失礼します」
「わざわざここまで来ていただきありがとうございました」
「いえ、これも仕事ですので」
そう言って隊長さんは街の中へと戻っていった。
ラームの街を出ると街道があり、このまま道に沿って次の村まで向かう。
「次の目的地はベーレの村ですね」
ベーレの村はラーカス村と同じで特徴がない所で、ここから1日くらいかかり、一泊して次の街へと向かう予定だ。
「ルーナは王都まで行ったことがあるの?」
「いえ、行ったことはありません。ですから今から楽しみです」
女の子は王都の華やかな所に憧れる子が多そうだな。
俺も行ったことはないけど、美味しい食べ物屋があったり、ファッションが進んでいそうだ。
しばらく歩いていると、街道を少しそれたところに、無数の岩がある場所にやってきた。
こういう隠れる所がたくさんある所は、盗賊とか魔物に待ち伏せされる可能性があるけど、今の俺にはあまり関係がない。
「ルーナ、岩の陰に魔物が息を潜めているかもしれないから、探知魔法を使って確認してみるよ」
「わ、わかりました」
魔物がいるかもしれないと言ったため、ルーナの表情が緊張した表情になる。
【
俺を中心に魔力の波が広がっていき、周囲の情報を伝えてくれる。
「どうですか」
「あそこの少し他より大きい岩の所に、スライムが2匹隠れている」
俺は指を差してその場所を教える。
スライムはホワイトラビットと同じで最弱の部類に入る魔物だ。
今の俺なら、指先一つで勝てる相手だろう。
「ヒイロくん、ここは私にやらせて下さい」
ルーナは、相手がスライムだとわかり、先ほど見られた緊張も解けたようだ。そういえばルーナが戦っている所を見たことがないな、体術は苦手だと言っていたが、戦闘職でもある僧侶だから苦戦することはないだろう。
「わかった。お願いできるか」
「はい!」
ルーナは元気良く返事をする。どうやらやる気満々のようだ。
懐から短剣を取り出し、ジリジリと岩の所まで迫っていく。
目的の岩まで到着し、裏側を覗いた瞬間、突如スライムが飛び込んできた。
「ふぎゃ!」
ルーナは顔面に攻撃をくらい、後ろに倒れてしまう。
「いった~い。いきなり来るなんてずるいです」
戦いにずるいも何もないとは思うが、今はそんなことを突っ込んでる場合じゃない。
スライム2匹がルーナの左右に周り込む。その様子を見て、ルーナは慌てて立ち上がり短剣を構えなおす。
このスライム連携が取れているな。
左側のスライムが体当たりを仕掛けてくると思いきや、右側のスライムが突撃してきた。
ルーナは左側のスライムに気を取られていたので対処できていない。
右側のスライムは足元まで接近し、垂直に飛び上がる。
やばい。このタイミングは避けきれないな。
「キャー!」
戦場に黄色い悲鳴が鳴り響く。
俺の視界にはスライムのダメージを食らって苦悶の表情のルーナではなく、純白に包まれたパンツが目に映る。
「い、いや! 見ないで!」
スライムはルーナを攻撃するのではなく、スカートを捲るように飛び上がったようだ。
中々やるな。俺は心の中でスライムに対して、称賛の言葉を送る。
ルーナは奇抜なスライム達の戦略に翻弄され、石に躓き倒れてしまう。
しかし、そこからスライム達のさらなる追撃が始まる。
2匹のスライムはゲル状に変化し、1匹は倒れてパンツ丸見えの下着を剥ぎに、もう1匹はルーナの上着を脱がそうとしている。
「いやだ! やめて!」
スライムがんぱれ!
不謹慎ながら、この時俺は敵であるスライムを応援してしまった。
上着は脱がされ、下着は片側が半分ほど下ろされている。
ルーナの秘密の場所が暴かれるのも時間の問題だ。
「ヒ、ヒイロくん! 助けて!」
くそっ! もう少しなのに。
しかし、ルーナからの救援要請がきたので、俺はスライムに向かって泣く泣く麻痺の魔法を放つ。
【
俺の手から雷が起こり、スライム達に直撃する。
ビクンッ! と一瞬反応し、そのまま動かなくなる。
俺は助けようと近づくが、ルーナから拒絶の声があがった。
「ヒイロくんこっちに来ないで!」
ルーナに視線を向けると、上下の下着は丸見えで、肝心な所は隠されているが、逆にそれがエロい姿となっている。
「み、みないで!」
「ご、ごめん」
俺は慌てて後ろを振り向く。
背後には脱がされた服を直すルーナがいると思うと、少し落ち着かない。
そしてしばらく立った後、ルーナから声がかかった。
「もう振り向いてもいいよ」
後ろを振り向くと、そこには涙ぐんだルーナの姿が見えた。
「見たよね」
恥じらいながら、上目遣いで俺に聞いてくる。
これは見たと言っても怒られ、見ていないと言ったら嘘つき呼ばれするパターンだ。それなら正直に言おう。
「とても良いものを見させて頂きました」
「ヒイロくんの⋯⋯バカ」
ルーナはそう言って顔を赤くしながら、俺を怒った。
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