ご挨拶
シュミットの紹介が終わると、丸眼鏡をかけ和やかな雰囲気を醸し出している女性が代わって壇上に上がった。
「皆さん、おはようございます。ここにいる全員と面識はありますが一応自己紹介を。私の名前は
笑みを浮かべながら柔らかな口調で話す荒川に生徒たちの空気が緩む。
「はてさて、皆さん。突然ですが、国連のモットーを知っている方はいますか?」
そんな中で彼女は突然、質問を投げかけた。
「……知らなくても歴史と公民の点数が少し下がるだけですからね。でもせっかく日本に三か所しかない国連管理都市に住んでいるんですから、覚えておいても損は無いと思いますよ」
質問に対して生徒から全然回答が来なかった荒川は一拍置いてから、
「
終わりなき戦争、その中で引き起こされた数々の悲劇を見て、生きてきた大人たちは、産み落とされた惨劇を二度と繰り返さないようにこのモットーを考えたのです。
我々の子供たち、その世代が幸福で明るい世界へと羽ばたけることを願い、そしてその願いを叶える為に。モットーなど只の言葉に過ぎないのは事実で、それを一々覚えていても……と思うでしょう。しかしながら、その言葉に込められた意味をぜひ皆さんには考えてみてほしいな、と私は思います」
挨拶で一番話したかった部分を終えた後、荒川は深呼吸をして、
「さてさて、駆け足にはなりますがこれで理事長挨拶と、2052年度私立桜鳥高等学校始業式を終わります」
締めと共に彼女が軽く会釈すると生徒たちから拍手が起きた。もちろん、生徒たちからすれば、その話はとてもつまらない物だったが。
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