Never Ending Story

もやもりすだち

第1話

 いつもとおなじ墨色の空。しかし地平線の近くには、ほのかに戦火の色が滲んでいた。昨日の夜はもっと暗かったように思う。

 私は戦争がはじまってからも、この村は平和でいられるような気がしていたから、まるでこの世の終わりかのように騒いでいる大人たちを現実のみえていない悲観主義者だと馬鹿にしていたけれど、現実がみえていないのはやはり私の方だった。私は一度そうやって馬鹿にしてしまったものだから、空気の読めない子供のフリをして、日々を楽しく生きている。別に私に限った話ではなくて、多かれ少なかれ、私のまわりの子供はみんなそうだった。空爆の音が近くなっていることも気のせいじゃないとわかって、目つきは険しくなっているのに口元は無理に笑おうとするから、みんなちょっとおかしい表情になっている。

 この村まであと何日かな、とりゅうは言った。りゅうだけは、戦争が始まった最初の頃からなにか悟ったような表情で、無理に楽観したり、悲観したりしている様子はなかった。さぁねと私は言う。関心がないみたいにそっけなく。いつもよく腰掛けている階段が、今日はやけに小さく感じた。

「お前、この国からでろよ」

 唐突にりゅうはそう言った。

「嫌よ、りゅうは出れないんでしょう?」

 私の父が頑張ってお金を貯めていたおかげで、私は望めばこの村から遠くの国へ逃げることができるらしい。しかし、父親を失いなんとか暮らしていくのに精一杯だったりゅうの家に、そんなお金はなかった。

 私の両親は家族一緒にこの村から出ようと言いつづけているけれど、ずっと拒否している。私のことは気にしないでみんなで逃げてと。りゅうを置いてこの村を出るつもりなんてなかった。

 手元に虫に食いつくされた木の葉が落ちていて、私はそれを指先でつまんで拾いあげた。

「どうせ俺には逃げるとこなんてないし。それに戦争でここが焼かれてしまって、もし俺が生きのびれたら、復興のために必要だと思うんだよね、男手ってやつ」

 偽善者、と小さな声で彼をなじった。

「どうせあなたのこと、髪の色とか瞳の色が違うっていじめてた連中でしょ。必要とされたって応える必要なんてないよ」

 そんなもんかな、と彼はぼそっとつぶやいた。

「でも、そんな俺の自己満足にお前が付き合う必要もないよ。お前はどっか遠くに逃げれるんでしょ。そこで待っててよ」

「生きて戻ってこれる保証なんてないくせに。それに、私みたいなのが、一人で幸せに、平和になったとして、一体なんの意味があるの?」

「俺は嬉しい」

「そういうの、エゴって言うんだよ。押し付けないでよね」

 あーやだやだ、とおどけて私は言う。こうやって無理をするたび、二人の間には沈黙が生まれる。

「なぁ、ちゃんと聞けよ。俺は、大丈夫だから、お前だけでもここを出ろ」

「……大丈夫って何? 安全地帯から何もできずに、ただ待つことしかできない気持ちを想像できないの?」

 私は苛立った口調で、そう言った。

「それは、まぁ……悪かったよ」

 歯切れ悪そうに謝罪したあと、でもさ、とりゅうは言いはじめたけれど、その先に言葉はつづかなかった。はい、この話はおしまい、と私は言った。空はかなしくなるような淡い青色をしていて、乾いた繊細な風が、私の短い髪をかすかにゆらした。さっき拾った落ち葉を風にのせて飛ばそうとしたけれど、風が凪いでしまったせいですぐに足元に落ちてしまった。よいしょとわざとらしく声に出して言って、私は立ちあがり、何歩か地面を踏みしめた。じゃりじゃりと音がする。りゅうも立ち上って、私のあとを追ってきた。うしろから私のより雑な足音が聞こえた。なぁ、とりゅうが私を呼びとめた。

「だったらさ、もう一緒に死のっか」

 私は足をとめた。口を開こうとすると、さっきより大きい風が吹いて、のどまで出かかった私の言葉はかき消されてしまった。数秒間沈黙が続く。

「ごめん、聞かなかったことに−−」

 りゅうがそう言いおわるより前に、

「うん、私もそうしたい」と私は言った。


 死ぬならできるだけ綺麗なところにしたいと、私たちは村からそう遠くない丘の上までやってきた。二人で腰かけて、戦争とは反対側の地平線を見ていた。空気はほどよくつめたくて、心地よかった。私が行くはずだった国もこの先にある。みてしまわないように反対側を向いてはいるけれど、もう赤い炎はほんのすぐそばまで来ている。こんなに明るい夜ははじめてだった。雲はないのに星はみえない。

 りゅうは、瓶になみなみ入ったお酒を左手に持っていて、ポケットから右手で錠剤を一つかみ取り出した。

「これ、俺の死んだ父さんが飲んでた睡眠薬。あと、とってきた酒。あわせて飲んだら、死ねる。父さんもそうやって死んだんだ」

「そうなんだ」

「お前、酒弱いだろ。だから、必ず死ねるよ」

 昔、りゅうが親から盗んできたお酒を少しだけ飲んだことがあった。一口だけで私は眠りこけてしまい、両親にこっぴどく叱られた。

「私だけが死んでしまったら、それは嫌だからね」

「わかってる。俺も必ず死ねるよ」

 私は、最後に星がみえなかったことを残念に思っていた。昔、祖母がなくなった日の夜、母親が星を指差して、あれがおばあちゃんだと教えてくれた。これから先もきっとあなたのことを空から見守っている、と。

 私はそのまま背中を地面にくっつけ、寝転がった。ふうと大きく息をはく。もういいや、と私が言うと、なにが、と彼は訊き返す。なにかもが、だよ。なにもかもどうでもいいの。もう私はなにもいらない。なにもかもいらない。なんでみんな、虫みたいにお金だとか名誉だとか、つまらないものばかり求めて争いたがるんだろう。ほんとにみんな虫みたいだよ。狂ったように価値のないものに群がって。なにもかもつまらないよ。この世にあるもの、なにもかもいらないよ。なんで誰も気づかないんだろう。この星に価値のあるものなんて、ほんのちょっとしかないんだってどうしてわからないんだろう。私がそう言うと、彼は、そんなもんかなぁあと気の抜けた返事をした。そんなんだよ、本当にみんなそんなもんなんだよ。どうして私たちが死ななければいけないの。死ぬべきはあいつらの方なのに。仕方ないよ、俺たちはそういうふうに生まれてしまったんだから、と彼はいつもみたいに悟ったような口調でそう言った。

 つめたい風が吹いて、隣にいる彼の匂いが鼻をくすぐった。少し肌ざむくなってきて、私は腕の皮膚をさする。さむいね、と私が言うと、彼もさむいね、と言った。

「じゃあ、俺飲むね」

 ひとしきり沈黙がつづいたあと、彼はそう言うと、蓋を開けて間髪入れず、口をつけた。

「待って」

 私は、彼の態度に違和感を覚えて、彼の腕を掴んだ。時間を惜しんで、なにか私に気づかれる前に一秒でも早く飲んでしまおうという気配が感じ取れた。彼はなにかごまかしている。私はとりわけ彼の嘘に対しては敏感だった。

「ねぇ、そのお酒、本物?」

「本物だよ、匂いを嗅いでみたらわかるだろ」

 そう言って、彼は私に瓶を差し出した。確かにアルコールのにおいがした。

「そのお酒一人で、全部飲み干したりしない?」

 不自然な間があいた後、

「そんなことしないよ」と、彼は言った。

 一瞬のことだったけれど、私には彼の嘘がはっきりとわかった。そうするつもりだったんだろう。私の前で一人つめたくなっている彼の姿を想像した。

 そうやって、私が死ぬ意味を奪って、私を助けたつもりなんだ。命だけを助けて、心を救わないこと、それがどういうことが本当に理解しないんだね。そういったはき違えた優しさが私をどれほど傷つけるか、あなたには本当にわからないのね。

 彼の腕を掴む私の手は、裏切られた怒りと悲しみで、小さく震えていた。

「どうしたの、怖くなった?」

 彼が挑発するように彼がそう言った。私は全部彼の思い通りになってしまうことを想像すると口惜しくてしょうがなかった。

「そうだよ。私は死ぬのが怖いんだよ。だから私から飲むよ。もしあなたが飲んだあと、私が怖くて飲むことができなかったら、自分自身が情けなくて、この先、ずっと不幸な人生を送ると思うの。死んだ方がマシ、くらいの」

 りゅうはなにか反論しようとした。私は彼の掌にあった錠剤の半分ほどを奪い取った。

「これだけあれば、死ねる?」と、訊くと彼は小さく、うん、とこたえた。

「あなたはこのまま生き残っても必ず、戦争に巻き込まれる。だから、私だけが死ぬことに意味はない。あなたもそれを理解しているから、私の死を無意味なものにしないように、私が飲んだら、あなたは必ずすぐに後を追ってくれると思うの」

「うんそうだね……。うん、そうするといいよ」

 少し困ったような表情を浮かべたあと、彼はそう言った。

 彼がなにか言い訳を思い浮かんで私を止めてしまう前にと、瓶を奪い取った。急いでお酒を口に含み、そして次々と錠剤を飲みこんでいった。食道にいがいがした感触とつめたい液体の感触がつたっていく。全ての錠剤を飲みこんだあと、さらにお酒を流しこんだ。瓶の中には、まだ半分より少し多いくらいのお酒がのこっていた。徐々になにか温かいものが私の体内に広がっていくのを感じる。脳が靄でつつまれたみたいに、思考が重くなった。ばたんと後ろに倒れて空を見上げる。やっぱり星はみえない。彼はそんな私を、真っ暗な瞳でみつめていた。泣きそうな顔をしているようにみえた。りゅう、私のことそんなに見てないで、早く薬を飲んで、私はそう言おうとしたけれど、かすれてしまっていたから、聞こえたかどうか私にはわからなかった。

 天国だかに向かう門の手前では、みんな死んだ順番に並んで行列を作って、絵画にでてくる神様にそっくりなおじさんの審判を待っている。きっと世界中で今も人は死に続けているだろうから、その行列でもちゃんとそばにいれるように、ほかのくだらないやつらに間に入られたりしないように、りゅうには私と同時に死んでほしかった。ずっとなににも怯えず、怒りの感情なんてこの世にないみたいに穏やかな気持ちで、ずっとおしゃべりしながら順番待ちをしていたい。ねぇりゅうだってそう思うでしょ。

「来なかったら、許さないから」

 無理やり、そう声を絞り出して、私は眠りについた。

 意識がなくなる直前、ごめんと最後にりゅうがそう言った気がした。


 意識が戻ったとき、私は馬車の上だった。目を覚ましたことに気づいて、お母さんは私におはようと言った。母の目は涙でぬれていた。後ろには、父親と弟もいた。

「ねぇ、なんで? なんで、私はここにいるの?」

 現状を理解できてはいないけれど、私は自分の望みが叶わなかったことを知った。泣き崩れる私に母親から、私たちは自殺に失敗し、二人で眠りこけているところを発見されたのだと聞いた。私は今遠くの国へ亡命する馬車に乗っているらしく、もう住んでいた村は遥か遠くのようだった。

 戻ってよ。私だけでも帰らせてよ。そう言うと、母は、また悲しげに何度も首を横に振った。

「ねぇ言ったよね、私は行かないって。私はりゅうがいない世界なんて、いらない。他のすべてのものがあったって、りゅうがいないとなんの意味もないの。お母さんは、無理やり私から、この世界のすべてを奪ってしまったってこと、理解しているの?」

「仕方ないでしょ。私にとっては、あなたがすべてなんだから。たとえあなたの幸せを奪ってしまったとしても、私には耐えられないことだったから。あなただって、そうやって死んでしまったら、私のすべてを奪うことになるって考えたことある?」

「だったら、わたしはお母さんの幸せを満たすだけの人形にすぎないの? こういうふうにお母さんの幸せを常に想って生きることを、私に強要するの?」

「そんなこと言ってない。あなたにとって、あの男の子以外、全部ごみなの? 家族なんていたってなんの価値もないの? 私もお父さんも、弟も、いらないもの?」

 私たちはそうやって怒鳴りあって、気づけば泣きながら抱きしめあっていた。ごめんなさい、そう言って謝った気持ちに嘘はないけれど、お母さんのせいで、りゅうを置き去りにしてしまったことを私は一生、許すことができないと思った。


 宿についた私はやっぱり家族といる気にはなれなくて、ひとりで星をみていた。星のみえなかった昨日の夜の明るさを私はもう思い出せない。私は、ぐるりと自分の周りを見渡した。私たちがやってきた方向だけ、うっすらと赤い。あの下でりゅうが灼かれているかもしれない。私の好きな景色が壊されている。なんで、奪われなければいけないの。私のどんな行いが原因で、幸せを取り立てられなければいけないの。

 私はひとしきり泣いたあと、村で過ごした最後の晩のことを思い返した。彼の言葉、態度、表情。そして、りゅうがついた本当の嘘に気づいた。結局私は彼の思い通りに動いてしまったのだと。あの錠剤は睡眠薬なんかじゃなくて、どれだけ飲んでも、身体に無害な薬だったんだろう。きっと、お酒のせいで間抜けにも眠りこけた私を母のもとへと抱きかかえて運んで、今すぐ亡命するようにとお願いしたんだろう。最後にごめんと謝ったのも、気のせいではなくて、私を騙したことに対する謝罪だったのだろう。

 ねぇ、あなたはこんな気持ち想像したことある? 自分だけが地獄に残って、私を地上へとおくり届けたつもりでしょう? でもね、この場所はきっとあなたのいる地獄よりももっと地獄なんだよ。どれだけ残酷なことをしたかわかっているの? きっとあんな戦争の中で死んだら、死体だって残らない。死体もなしに、あなたが死んだなんて信じれない私は一生、あなたが生きている可能性を愚かにも信じ続けて、醜く老いて、朽ち果ててしまう。だったらどうして一緒に死んでくれなかったの? どうして自分だけ、一瞬苦しいだけの生ぬるい地獄に身を置いて、私をこんな永遠の生き地獄に放り込んだの?

「来なかったら、絶対に許さないから」

 歯を食いしばりながら、私はつぶやいた。

 それからしばらくして戦争は終わった。私のいた国が勝ったのかも負けたのかも知らない。どっちにしても私は失った。遠くて寒い異国の地で、想像したとおりに、彼の生きているということを否定しきれないまま、どんどん歳を重ねた。


 ここまで書いたところで、私は筆を置いた。

 ねぇ、これ読んで、と後ろでぼおっと携帯をいじっていた彼に言った。物語を書いている間、私達はひとことも会話をしなかったから、二人の間にはこれまでかなり長い間沈黙がつづいていた。

 彼はなにか言いたげに私をじっと見つめた。なにも裏なんかないから疑わずにただそれを読んでほしい、と私が言うと、彼はようやく手を伸ばして受けとった。

 彼が読んでる様子を近くでじっとみたり、まるでどうでもいいかのように興味ないふりをしてみたり、ちらちら彼の様子を横目でみたりをくり返した。エアコンがきいてないせいで、私の吐く息は少し白い。白いシャツからむき出しになった彼の手は、少しかじかんでいるようだった。長い時間がたったように私には感じられたけれど、しばらくして彼は、全部読んだよ、と言った。

「どうだった?」

「えーと、まぁ面白かったよ。普通に。でもこれ途中だよね? 結末は?」

 私は、まだ書いてない、と言った。どうなるの、と彼は訊く。私は彼と目をあわさないようにして、どうしてほしい?、と訊いた。

「どうしてほしいって、俺は続きを知りたいの。俺がどうして欲しいかを言って、それが話に影響を与えてしまうんだったら、俺は言いたくない。あくまで読者として結末が知りたい」

 もう結末は決まってるの、と私は言った。だから、どうなるか当ててみて。彼は少し考えこんだ。

「うーん、そうだな。バッドエンドは嫌だし、ないでしょ。この二人がこのまま出会わないまま、終わる、とか。くだらないし。でもこっから実は生きてました、で、再会して仲直りして終わりって言うのも面白くないしなぁ。無理だ。いい感じのものが、思いつかない」

 私は彼の頬にやわらかいキスをして、正解、と言った。

「やっぱり思いつかなかったんだ」と言って彼は笑った。

 物語の中でこのあと、りゅうは生きていて、彼らは再会を果たす。なんであんなことをしたのかと、二人の主張をぶつけあう。でも、やっぱり想いあっているから、もうだんだん主張なんてどうでも良くなって、互いを責めるのをやめて、自分を正当化するのもやめて、二人は仲良く幸せに暮らす。そういう未来しかみえなくなってしまった。でも、そんな話つまらない。物語にならない。だから私は書くのをやめた。無理やりなにか事件を起こして、面白い展開にすることもできるのかもしれないけれど、どうしてもそれはしたくなかった。

「そろそろ、お前小説を完成させたほうがいいんじゃないか? いつもこうやって途中で飽きてやめるからさ」

「別にいいでしょ。所詮ただの趣味なんだから。楽しく書けたらそれでいいの。あと、今回は飽きたからじゃない」

 そんなもんかなぁ、といつもの口癖を彼が言ったので、私はそんなもんだよ、と返した。

「あとさ、この話のキャラ、私はお前で、りゅうは俺でしょ?」

「ううん、ちがう」

「で、モデルは、今回の喧嘩?」

「ちがうよ」

 口調が不自然に硬くなっていることがわかって、自分で思わず少し笑ってしまいそうになる。

「嘘つくなよ。俺の記憶が正しければ、俺がちょっと体調崩してて、お前には遊びの予定が入ってたから、良かれと思って、看病しなくていいって断った。それだけなんだけど。あんな小喧嘩を戦争めぐるこんな壮大な話に置き換えられてもなぁ」

「良かれと思ったことは、本当に私にとって良いことなの? そうじゃないなら、それは結局良いことをしたいっていうポイント稼ぎの自己満足にすぎないんだよ」

 それに私にとっては、こんな戦争なんかよりも今回の喧嘩の方が、おおごとなんだけど、と私がつけ加えると、彼ははぁと大きくため息をついた。

「あなたのために看病をしてあげたいという私の気持ちを拒否しないで欲しい。あなたは風邪で苦しいかもしれないけど、そんなあなたを置いて一人で楽しい場所になんて行けないの。行っても楽しむことなんてできないの」

 芝居がかった口調で彼を責める私に、だからいちいち、大げさなんだってと言って、彼は今日何度目かのため息をついた。

 窓からは白く柔らかい光が差しこみ、つめたい空気の中を漂っていたほこりが、きらりと優しく輝いた。

「で、これは、俺を論破して、間違いを認めさせるために作ったんだろ。このあと再会してりゅうは、自分が間違ってたって謝罪する。それを読んだ俺も触発されて謝罪する、そんな展開考えてたろ」

「考えてないし、そんな話にしないよ。でもつづきを書くなら、ちゃんとかっこよく書いてあげるから。でも、結論は一緒だよ。愛しあってるんだから、多少のすれ違いがあっても、わたしたち一緒にいた方がいいと思うの」

 私は物語を書くとき、その登場人物たちを子供みたいに、とても愛おしく思う。私は、書かなかったつづきの中で、物語にならない幸せな日々を彼らが生きていくことを心から祝福した。

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Never Ending Story もやもりすだち @morya-sudachi

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