第35話 デザートの前に2

「もしもし、どちら様ですか?」

『華美様だ。朝陽よ、人の話は最後まで聞くものだぞ?』

「そうだね、相手が華美君じゃなくて目上の人とかだったら、例えつまらない話でも一応は最後まで聞いてたかな」

「おいやめろ! それだとまるで俺が聞くに値しない話をしてるみたいじゃないか!」



 ……みたいじゃなくてそうなんだけども。


 ちょっときついなとウチはうつ伏せから体勢を変え仰向けに。



「ごめんごめん、ちょっとしたジョークだよジョーク。実は手が滑っちゃって、通話切っちゃったんだよね。ホントだよ? 他意はないからね?」

『そうか……「あ、そう、じゃあね」と確かに言ってたが、そうだよな、俺の話が聞く価値ないほどつまらないなんてあるわけないよな』



 納得しちゃったよ! 納得できる要素が何一つとしてないのに納得しちゃったよ!



「あ、あはは…………それで、青空さんの気持ちが本物だと知ってまんざらでもないって話だっけ? ごめんだけど恋愛相談ならウチじゃなくて別の人にしてくれない?」

『……はぁ、やはり誤解していたか』

「誤解って?」

『……ここ最近、俺と青空が揃っているところをよく目にしていただろ? それで朝陽は俺が青空のことを好きになった、と解釈した……そうだろ?』



 いや別に本気で言ったわけじゃないんだけど……青空さんにいいように操作されてるんだろうなぁとしか思ってないけど。


 口にすればややこしくなること間違いなし。本心は心の中に留めておく。



「うん、そうだけど……え、違うの?」

『違う。ああなったのには理由がある』



 華美君はそう前置いて、事のいきさつを語りだした。



『――というわけだ』



 ……想いを伝える、ね。


 全てを聞き終えたウチはゆっくりベットから起き上がり、テーブルに置かれたバーゲンダッツさんに目をやると、僅かに汗をかいている。


 きっと華美君は青空さんの言動を額面通りに受け取ったんだろう。そう考えれば無理もないか、「青空は俺のことが好き」って断言できちゃうのも。ウチからしたらそこまでして華美君を繋ぎとめておきたいんだってのが正直な感想だけど。



「そんなことが、あったんだね」

『ああ。その上で――青空の気持ちを知った上で、俺は別れを告げようと思う。だから朝陽、もう詮索しなくてもいい……といっても、詮索する気は一切ないようだったがな。一応伝えておく』



 探りを入れたくてもできなかったのはあんた達が常に一緒にいたせいでしょ! と、喉のまで出かかった言葉を寸でのところで飲み込んだ。


 まぁ、別れるならそれでいっか。



「わかったよ。そのかわりっていうのも変だけどさ、ウチも同席させてくれない? 青空さんに別れを切りだす場に」

『……何故?』

「ほら、青空さんのことだし、また脅されてうやむやにされちゃうかもでしょ?」

『……確かに』

「そこでウチの出番ってわけ! 要は別れ話を円滑に進める為の仲介人ってこと!」

『二者の間に入って関係を壊す仲介人か……本来の意味とは真逆だが、逆に面白いな。頼めるか?』

「任せなさい! それじゃウチはこれからスイーツタイムを満喫するから! じゃあね~」



 ウチは一方的に会話を終わらせスマホをベットに放り、バーゲンダッツさんの元に!


 う~ん! ちょっと溶けちゃってるけど、これはこれでまた美味~!

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