第34話 デザートの前に1

朝陽日向


 ほてった体を冷ますにはやっぱこれでしょ!


 お風呂から上がり、真っ先に向かったのはキッチン。冷凍庫にあるバーゲンダッツを一つ取り出し、頬にあてる。



「あ~、ちべたい」



 これがウチのアイスを食す前のルーティン。冷たさを肌で知ることで今日も生きていると実感するのだ。


 ちなみにカップアイスは業務用のプラスチックスプーンで食べる派です。別に家にある食器でもいいんだけど、なんか感覚的にしっくりこないんだよね。だからコンビニやスーパーで売ってるお弁当も必ず割り箸。



「フンフフ~ン」



 誰に聞かせるでもないマイルールを内心で呟いたウチは、鼻歌交じりに自室へと向かった。



「さてさてバーゲンダッツさ~ん、早く食べ頃になってくださいね~」



 テーブルについて即いただきますはダメ。冷凍庫から取り出したばかりのバーゲンダッツは、というよりカップアイス全般に言えることだけど、カチカチすぎてプラスチックのスプーンじゃまず通らないから。


 よってしばらく常温で放置一択。カップの外側を指で押して少し柔らかくなったら頃合いだ。


 それまでインスタでも見てようっと。


 ウチはベットにダイブし枕元に置いてあるスマホを手に取った。


 …………なにこれ?


 ディスプレイを点けると新着メッセージが一件。送り主は華美君で、その内容は、


『罪な男、華美真琴』


 意味不明なものだった。


 ……ギャグ、だよね。なんか韻踏んでるし、わけわかんないし。でも、わけわかんないのは華美君の常だし、用もなくLINEとか送ってくる人じゃないし。となるとなにか重要な……いやでもだとしたら言葉足らずすぎっていうか、そもそも意思を伝える気があるの? これ。やっぱギャグ?



「…………LINEでやり取りするよりは電話の方が手っ取り早いか」



 真面じゃない人のことを考えるよりは直接本人に問いただした方がいいと判断し、華美君に電話をかける。



『――どうした?』



 ツーコール目で華美君に繋がった。



「どうしたじゃないよ、あのLINEなに? ギャグ?」

『そんなわけないだろ。罪な男、華美真琴……これで伝わらないのか?』



 受話口から華美君の呆れたような声が聞こえてくる。え、ウチが悪いの?



「う、うん。よくわからなかった、かな? というかあんなので理解できる人、誰もいないと思うよ?」

『そうか……そうだよな。俺という人間は少々、難解だからな』



 と、明らかにカッコつけて言った華美君。いや、うん、ある意味難解っちゃ難解だけど、うん。



「……で、結局のところ、なにかな?」

『あぁ、噛み砕いて言うとだな――やっぱ青空は俺のこと好きみたい、ってことだ』

「あ、そう。じゃあね」

『え、あ、ちょ、まっ――』



 華美君の言葉を最後まで聞かずにウチは通話を切った……のだが、すぐさま彼からの着信が。


 ……もうちょっと待っててね。バーゲンダッツさん。

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