第26話 その球は白きピンに届かず
華美真琴
シャトルバスに乗って俺達はラウンドツーまで。
受付は青空があらかじめネット予約してくれていたおかげで、スムーズに運んだ。
……これでいいか。
まずはボウリングを2ゲーム。各々がシューズを借りてボールを選び、指定されたレーンへ。
「――まずは僕からだね」
スコアボードの上から順ってことで、一人目は抽冬。
「抽冬君ってボウリング上手いの?」
「う~んどうでしょう、一緒にやったことがないから何とも言えませんが、でも清暖はどんなことでもそつなくこなすタイプなので、恥ずかしい結果にはならないと思いますよ」
テーブルを挟んで対面に座る夕奈の質問に、俺の隣に座る青空が答えた。
「へぇ~……どっかの誰かとは大違いなんだね」
にやにやと笑いながらチラと俺に視線を寄越す夕奈。
「その誰かとやらは俺を指してるのか?」
「べっつに~、でも思い当たる節はあるんじゃないの?」
「まったくもってないな」
「どんだけ自分に都合の良い記憶しか残してないのあんたは」
呆れたように言った夕奈は興味が失せたか抽冬に顔を向ける。
「華美さんは清暖とは大違いなんですか?」
「……ふ、論より証拠。俺の番が回ってきた時、その時こそが青空の問いに対する答えになるだろう。一言添えるとするならば……期待していてくれ、だ」
夕奈の発言を真に受けてしまったのだろう青空に俺は余裕を持って返した。
さてさて、お手並み拝見といこうか。
――――――――――――。
抽冬はストライク、青空はスペアと幸先いいスタート。そして夕奈はというと、
「……………………」
一投目は1ピンだけ、二投目はガターと可哀そうな結果に。
「そう落ち込まないで夕凪さん。まだ始まったばかりだからさ」
「清暖の言う通りですよ! まだまだこれからです!」
抽冬と青空は戻ってきた夕奈を励ましている。
「あ、あはは、ありがと、二人とも。そうだよね、勝負はまだ始まったばかりだよね」
「その意気だぞ夕奈。なにも落胆することはない、昔と違ってピンを倒せるようになったんだからな。目に見えてわかる成長の証だ」
ギロリ、と睨みを利かせてきた夕奈。褒めたつもりだったんだがな。
「――と、とにかく次は俺の番だな。刮目するんだな、俺がパーフェクトを達成させスコアボードを蝶だらけにするところを!」
己の鼓舞も兼ねて俺は強気に言い、立ち上がる。
ボウリングは夕奈の家族と一緒にした小学生の時以来か……あの時は確かスコア200手前ぐらいだったかな?
ボールを手に取り遠くにある10本のピンを見据える。
夕奈はどうでもいいとして、抽冬と青空は侮れないな。まぁ、手加減する必要がなくなったとはいえ、本気を出すまでもないが。
「……白き不動のガーディアン達よ――ひれ伏すがいいッ!」
完璧なフォームから繰り出された第一投は俺の思い描くラインをなぞってガーディアン達の元へ…………とはいかず、その足元にすら及ばない辺りでガターに吸い込まれてしまった。
……………………あれ?
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