第25話 二組の幼馴染

「見せつけてくれるね、華美」

「ま、まぁな」



 俺と青空を交互に見て、溜息交じりに零したのは抽冬だった。お宅の幼馴染が見せつけているんですけどね。


 抽冬に対し内心でツッコミみを入れつつ、その隣にいる俺の幼馴染に視線を移す。



「ご機嫌斜めのようだが、どうした? お手洗いにでも行きたいのか?」

「…………青空さん」



 プイっと俺を無視して、夕奈は青空に声をかける。



「聞いてた話と違うんだけど、なんで真琴もいるの?」



 え? 今なんて?



「あ、えっと……これは……その……」



 ちょっと、青空さん? 狼狽えてるとこ申し訳ないんですけど一体どゆこと? なんか呼んでもないヤツが平然といてB級ホラーみたいな感じになっちゃってるけども?



「……実は昨日、華美さんにデートに誘われて、私は夕凪さん達と予定があるからと断ったんですが、その……」

「真琴が付いて行きたいって言いだした?」

「はい。私としては一緒にいれるのは嬉しかったので。けど、ホントにごめんなさいッ! 夕凪さんは嫌と仰ってたのに……」



 俺から腕を離して深く頭を下げた青空。



「…………もういいよ、青空さん。バス来ちゃうから、行こ」



 優しい口調で青空を許した夕奈は、俺に一瞥をくれてから身を翻し、東口へと向かっていった。その後を抽冬がついていく。


 ……俺の目の前でまったく身に覚えのない俺の話をされた挙句、悪者に仕立て上げられちゃったんだけど。



「……なぁ青空、もしかしなくても俺、夕奈からNGだされてたんじゃ……」



 青空はおもむろに顔を上げ、俺に向き直る。



「黙っててすみません…………言い訳させてもらってもいいですか?」



 俺は頷いて続きを促す。



「華美さんをどうしても連れてきたかったのは、夕凪さんと清暖の、二人の時間を作ってあげたかったからです。三人だけだときっと夕凪さんは私の方に寄ってくる、清暖が浮いてしまう、その懸念があったから」

「……抽冬の為を思って、というわけだな?」



「はい」と、か細く答えた青空。


 俺は短く溜息をついて、夕奈の背を見やる。



「前もって説明して欲しかったってのが正直な感想だが、まぁ許す。てか、幼馴染の為とか言われたら責めたくても責められねーよ。それより、一つ教えてもらいたいんだが――」

「――早くしないと置いてくよー」



 俺は途中まででかかった言葉を飲みこみ、振り返って手招いてきた夕奈に「今行く」と返して足を進めた。



青空雨音


 華美が私から何について聞きだそうとしたのか……考えるまでもない。


 ここまでことが上手く運ぶなんて……でも早すぎるのはダメ、効果が薄まってしまうから。


 だから――最大限の効果を発揮するその時まで、今は息を潜めて待つとしましょう。

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