第21話 お悩み相談2

「ごめん、待たせちゃったかな?」



 一度、顔だけを覗かせ、俺と青空を視認してから室内に足を踏み入れてきたのは、同じクラスの男、抽冬ぬくとう清暖きよはるだった。



「全然、私と華美さんもついさっき来たところだから――さ、座って」



 青空は瞬時に動いて椅子を用意し、抽冬に座るよう促す。久しぶりに会いに行った時のお婆ちゃんみたいな対応だ。



「ありがとう、雨音」

「どういたしまして!」



 ササっと隣に戻ってきた青空。対面には抽冬が、まるで三者面談のみたいだ。


 抽冬清暖……言葉を交わしたのは数えられる程度しかないが、こうして間近で見るとあれだな、中々に整った顔してるじゃないか。


 透明感のある肌、華奢な体つきに中性的な顔立ち。ある日突然女子の格好してきてもまったく違和感を持たれない、というかむしろそれこそが本来の姿であると男子から絶賛され、一部の女子達と討論が勃発する……そんな恐れがある容姿をしている。


 クラスで上から二番目にイケメン、ってところか。無論、一番は……この、俺。学年内でも、俺。学年問わず、俺。教職員含めても、俺。つまり俺がナンバーワン!



「ごめんね華美、時間を取らせちゃって」

「構わない、さ」

「そう言ってもらえると、助かるよ…………あの、僕の顔に何かついてるのかな?」

「いいや別に」

「じゃ、じゃあどうしてそんなに僕を見つめてくるの?」

「ふ、勘違いするな抽冬。俺はお前を見てるわけじゃない、お前の瞳に映る俺に見とれているだけだ」

「……さすが、だね」

「…………だろ?」



 俺は抽冬に威厳を示すべく、腕を組んでゆったりと背にもたれかかり、左足を真上に伸ばしてから、右太ももの上にのせた。影響で椅子が傾く。


 …………決まりの悪い思いとはこのことか。


 微妙な空気の訪れを阻止するために俺は咳ばらいを一つし、



「ところで、二人は仲が良いのか?」



 それなりに気になっていたことを青空に訊ねた。



「仲良し、とはまた違うというか、近くにいて当たり前? みたいな感じですかね。小、中と一緒で、今もこうして同じ高校に通ってますから」

「なるほどな。それだけ長ければ、お互いに気心が知れているというものだろう」

「そう言われると少しばかり恥ずかしいですが……まぁ、そうですかね」



 青空は困ったようなに笑い、頬をかく。



「二人の関係はわかった――それで抽冬、なにやら俺に相談したいことがあるようだな」

「あ、うん」

「聞かせてくれ」



 俺は抽冬に向き直って相談とやらを言うよう促した。


 すると抽冬は居ずまいを正して深く息を吸った後、



「実は僕――夕凪さんのことが好きなんだ」



 凛とした表情でそう口にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る