第20話 お悩み相談1


華美真琴


 月曜以降も青空の大胆さは失われることはなかった。


 さすがにお熱の確認をしますねやハグ等はなかったが……というかされても困るわけだが、それでも嫌というぐらい伝わってきた。


 青空は俺のことが大好きだということが。



「あの、華美さん。帰る前に、ちょっといいですか?」



 そんな折、どこか困っている様子の青空に相談があると持ちかけられた。


 特に断る理由もなく、構わないと俺が答えると、彼女は安堵したように胸を撫で下ろし、「ついてきてください」と言って教室の外に。


 どうやら人のいる場所では出来ないような相談らしく、青空は渡り廊下の先、特別教室棟へと足を進める。


 美術室や音楽室、視聴覚室などがある特別教室棟。文化部系の部活に所属していない俺にはあまり縁のない場所だ。まぁ、どの部にも入ってないが……枠にとらわれない俺、カッコイイということで。



「ここです」



 二階の一番西側、室名札のない文字通り〝名もなき教室〟の前で、青空は足をとめた。


 中に入ると味気ない光景が広がっていた。


 片手で数えられる程の机と椅子が、無駄に綺麗な黒板を見れるように配置されていて、後方には沢山の机が積み上げられていた。



「どこか適当に座ってください」

「あ、おう」



 青空に言われ、俺は近くにある席に。新しめの椅子っぽそうに見えたが座ってみて納得、めちゃガタつく。


 こういうとこの椅子とか机って、やたら欠陥品が多いよな……などと思いながら窓の外へ目を向ける。教室棟が邪魔して景色もクソもない。


 面白味もなくてお世辞にも居心地が良いとは言えないが……まぁ、嫌いじゃあないな。



「それで、相談とは一体?」



 俺は青空に顔を向けて本題へ。


 すると彼女は離れた位置にある机をわざわざ移動させてくっつけ、俺の隣まで。



「実は、相談があるのは私じゃないんです」

「ん? じゃあ誰が?」

「もうすぐ来ると思うんですが――」



 そう青空が言いかけたところで、教室の引き戸が開いた。

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