第11話 お日さまとデート2

朝陽日向


 あれから四時間くらい経ったかな? ウチは華美君と最初に寄ったカフェに戻ってきていた。


 肝心なデートは……まぁ予想通り、だったかな。



「――それで朝陽、評価のほどは?」



 対面に座る華美君は自信ありげな様子。



「そうだね、一言でいえば――」

「あ、その前にふと思い出したんだが……」



 そう言って華美君は財布を取り出し、スッと私の前に千円札を差しだしてきた。


 え、どういう意味? デートの対価ってこと? 恋愛代行サービス的な。だとしたら安すぎない? ひょっとしなくてもウチのこと馬鹿にしてる?



「こないだのファミレスの分」



 あ、そういうことね!



「立て替えてくれたのウチじゃなくて夕凪さんなんだよね。だからこのお金は夕凪さんに渡してあげて」

「そうだったのか …………ん? なんで夕奈が?」

「それは、後の話に繋がるから今は置いとくとして……」



 千円を華美君に返し、一呼吸してから、



「デートの結果だけど、一言でいうと――残念、だね!」



 ウチは答えた。



「な⁉ 嘘だろ?」

「嘘じゃないよ。順を追ってくね、まず最初だけど華美君さ、今日のプラン何も考えてきてなかったでしょ?」

「いや、敢えてのノープランだ。レディーファースト、女性を優先という紳士の配慮」

「それ、単なる丸投げだよね?」



 ウチからの指摘にギクリと肩を跳ね上げる華美君。



「み、見方を変えれば、そう映るかもな」

「……百歩譲ってノープランはいいよ? でもさ、話し合いで決めるってなったのに華美君、なんでもいいよの一点張りで話し合う気がなかったよね? 端からウチに任せる気満々だったよね? あれじゃ誰だって丸投げされてるって思っちゃうよ」

「…………うむ」



 親に怒られてる子供のように華美君はシュンと縮こまる。



「さらに百歩譲って丸投げはいいけど、ウチが組んだプランを態度で否定してたよね?」

「え? 俺そんなことしてました?」

「そうやって聞けちゃう辺りもウチからしたらあり得ないんだけど……次に映画観に行ったよね?」

「ああ。確か……『君に五個目の重石おもいしを乗せる』ってタイトルの映画だよな?」

「……『君に五度目の想いを告げる』だから」

「そうだったそうだった! すまんすまん別の作品とタイトルが似てて混同してしまった。あっちは漬物つけものになりたい男の願いを彼女が叶える話だったから、さっき観たヤツとは全然違う」



 なにその見苦しい言い訳、正直に忘れましたの方がまだいいよホント。しかも漬物になりたい男って、逆に気になるわその作品。



「いかにも最後までちゃんと観ましたみたいに言ってるけど……華美君、寝てたよね?」

「…………いや?」

「誤魔化さなくていいから、隣でこの目でハッキリ見たから。人に任せっきりでそれはどうなの? って思っちゃったから。怒っちゃってたから、ウチ」

「…………申し訳ない」

「その後のショッピングだってそうだよ? 華美君、めちゃつまらなそうにしてた。ウチがこの服どうって聞いても「いいんじゃない? 似合ってる似合ってる」って馬鹿の一つ覚えな返ししかしてこないし、ウチだけじゃ悪いかなと思ってメンズファッションのショップにも寄ったのに「あ、俺はいいや。服選びはゆっくり一人で派だから」って冷めたこと言うし。例えそうだったとしても言い方があるでしょ! って思ったね」

「うッ…………面目ない」



 華美君は力なく首を前に垂らしてうなだれている。



「お勧めの店があるって連れてかれたのはラーメン屋だったし」

「――それに関しては朝陽も美味しいって言ってただろッ!」



 水を得た魚のように顔を上げ、ビシッと人差し指を突きつけてきた華美君。



「お、美味しかったけど! 美味しかったけども! 違うの! もっとお洒落なところを期待してたの!」

「腹を満たすことに美味しい以上を求めるとはなんて贅沢な……将来碌な大人にならないぞ」

「今の発言も含めて残念なのッ! 華美君はもう少し周りに興味を持って! 相手の気持ちを考えて! 男としてじゃなくてまずは人として成長して! じゃないと一生残念系イケメンのままだよ?」

「い、一生残念系イケメンのまま、だと?」

「そうだよ! 言動からして自分にしか興味ないんだなって伝わってくるの。自分に自信があるのは確かにいいことだけど、過剰はダメ。謙虚な心と相手を気遣う思いやり、この二つを意識してしばらく生活してみて」

「あ、あいわかった」

「よろし。じゃぁ次は――」



 華美君の改善点を伝えたウチは、話を青空さんに切り替える。

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