第10話 お日さまとデート1
華美真琴
帰宅後、朝陽とのLINE。
『唐突で悪いんだが日曜についてだが、キャンセルしたい』
『どうして?』
『青空に言われてな。浮気はもうするなと』
『ウチと二人で会ってたのが浮気認定されたってこと?』
『そういうことだ』
『……もう一度訊くけど、華美君は青空さんと別れたいんだよね?』
『ああ。けど、流れでとはいえ、しないと約束してしまったからな。それを早々に破るのは気が引けるというか、罪悪感がな』
『……冷たいかもだけどそれ、間違ってるよ。華美君が罪悪感を覚えるべきなのは、好きでもないのに付き合ったこと、それから好きでもないのにその関係を継続させてしまってること、この二つだから。まぁ? 何だかんだ言いつつ実は青空さんが大好きっていうなら話は変わってくるけど……違うんでしょ?』
『ああ』
『ファミレスでも言ったけど、中途半端に優しくして損するのは華美君なんだよ?』
『ああ…………ありがとう朝陽、目が覚めたよ』
『許すのは二度寝までだからね? 三度目はないと思ってよ?』
『心得ておく』
『よろし! じゃあ日曜は予定通りに華美君の育成計画ね! と言ってもまだ最初だし色々知ってから改善していきたいから、華美君はウチとのデートだと想定して普段通りに振る舞ってみて』
『あいわかった』
『当日は
『了解』
***
迎えた日曜日。待ち合わせ場所である熊谷駅に到着。
朝陽は…………いたいた。
改札を抜けてすぐ、駅構内にあるコンビニの前で朝陽を発見。さすが〝お日さま〟と呼ばれるだけあって存在感がある。
「あ! 華美君!」
「おう」
向こうも俺に気付いたのか、手を振りニコニコしながら駆け寄ってくる。
デニムのジャケットに黒のダメージスキニー、グレーのハンドバッグに黒のパンプス、明るい髪色と相まって見た目の印象はギャルだ。
「悪いな、五分遅れちゃって」
「ううん! そんなの全然気にしてないよ! そ、れ、よ、り――今日のウチ、どう?」
朝陽はその場でくるりと回り、上目遣いで感想を求めてきた。
「そうだな……なんか、インスタにダンスの動画とか載せてそうだな」
「…………え、他には?」
「う~ん……目を
朝陽に倣って俺も一回転し、思わずバラを咥えたくなるようなポーズを決める。
「えっと、思いのほか無難というか拍子抜けというか……もっと奇抜な格好で来るのかなって想像してたから」
「シンプルイズベスト、それこそが俺の辿り着いた答えだ」
白シャツに黒スキニー。単調なファッションと思われがちだが違う、俺は慎重なだけだ。冒険に危険は付き物だからな。
「……なんだろ、仕事終わりのホストっぽい」
と、朝陽が。
「ホストっぽいかぁ……」
顔が良いのは大前提でトーク力もあり酒も強い。とにかくイケメンにのみ許された職業……そんなイメージ。
「最高の褒め言葉だ」
「……決して褒めたつもりじゃないんだけど」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん別に! それより今日はどうする?」
瞳を輝かせてグイグイ近寄ってくる朝陽。柑橘系の香りが鼻腔をくすぐる。
「ちなみにだけど、デートシミュレーションってもう始まってる?」
俺が訊ねると、朝陽はこくこくと頷いた。
「オーケーオーケー。それじゃ、まずはあそこのカフェでティータイムとしゃれこむぞ!」
「わぁ! おっしゃれ!」
「だろ?」
「うん! それからそれから?」
「聞いて驚くなよ? 俺と朝陽で、それからについてをティータイム中に話し合うんだよ」
「いや決まってなかったんかいッ!」
俺の肩をペシッと叩いてツッコミを入れてきた朝陽。
うんうん、デートを楽しんでもらえてるようでなによりだ。
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