第6話 衝突までのカウントダウン1
朝陽日向
華美君を連れて、近くにあるファミレスに。
対面に座る華美君はティーカップを鼻元に寄せ、目を閉じ香りを楽しんでいるよう。ここまでなら絵になる……絵になるけど、
「…………めっちゃ苦いッ、なにこれ」
最後に全部ぶち壊すのが彼だ。
「自分で淹れてきたんでしょ? 味見しなかったの?」
「してない。女子の前だからってカッコつけてブラックをチョイスしたが、やはり俺の舌に合うのはミルクと砂糖マシマシの甘々だったようだ…………待てよ? そもそも俺はカッコいいんだから、カッコつける必要がないのでは?」
それ、ウチがいる前で言っちゃう? しかも理由がカッコ悪すぎる。
「そ、そうだね。背伸びするより、等身大の方がいいんじゃないかな? 知らんけど……それより! 華美君に訊きたいことがあるんだけど……」
あははと愛想笑いを浮かべつつ少々強引に本題へ。
すると華美君はティーカップを置き、頬杖をついてウチを見つめ、
「言ってみな」
「――ッ⁉」
そう甘い声で囁いてきた。
か、顔がいいだけにちょっとドキッとしちゃった……けど中身はまだゴミなんだから、現実を、現実を見るのよ!
冷静になるよう自分に言い聞かせ、話を進める。
「華美君はさ、青空さんのこと、どう思ってるの?」
「……どう、とは?」
「いやその、好きか、そうじゃないかって意味なんだけど……」
「……………………」
華美君はウチから視線を外して窓の外へ向ける。
「話すと長くなる……ってほど長くはないし、むしろ短いんだけど。ちょっと憧れの台詞だったから口にしてみた……」
などと意味不明な前置きを皮切りに、華美君は事の経緯を語ってくれた。
幼馴染の夕凪さんから煽られたこと、見返す為にウチや月見山に告白したこと、青空さんから告白されて好きでもないのにオーケーしてしまったこと。
一番驚いたのは月見山にも告白していたこと。そして一番腹が立ったのは……。
「えっと、華美君はウチを好きで告白したんじゃなくて、自分の為にってこと?」
「そういうこと」
そういうこと――じゃないわよッ! なに? ウチに振られたショックを癒したかったから青空さんを彼女にしたんじゃなくて、ウチもひっくるめて利用する気しかなかったってこと? めっちゃムカつくんですけど!
「朝陽には申し訳ないと思ってるよ。あの一件で、俺を意識させてしまったから」
しかも勝手に憐れまれてるし! ムカつくムカつくムカつく!
自惚れ全開の華美君に、いよいよ抑えられなくなったウチは笑顔で毒をぶつけた。
「意識ってウチが華美君に? ないない! 前にも言ったけど華美君って顔だけじゃん? 他が致命的すぎるし逆に何でしゃべってんのって感じ? 黙ってればいいのに、口を開くから残念系イケメンって馬鹿にされちゃうんだよ。いっそマネキンにでもなれば?」
「聞き捨てならないぞ朝陽ッ! 俺は残念系イケメンなんかじゃない! 内外どちらも優れた真のイケメンだッ!」
「そういうとこが残念系イケメンたる
「なッ⁉」
付け加えるなら『そうなのッ⁉』みたいな反応ができちゃうところもだけど。客観性って大事ね。
「ま、華美君が残念系イケメンってことはひとまず置いとくとして――」
「――置いとかないでくれ!」
「だ~め、まだウチの質問は終わってない…………さっき、青空さんのことは好きじゃないって言ってたよね?」
華美君は不服そうな表情をしながらも、コクリと頷いた。
「じゃあ今後どうするの? 付き合い続ける? それとも別れる?」
「……別れたいんだが、事はそう簡単じゃない」
「というと?」
「……実は昨日、青空に別れを切り出そうとしたんだ。けどその前に、別れ話だったらありもしない嘘を言いふらすと釘を差されてな」
「それって脅しじゃ」
「ああ…………そうまでして傍に置いておきたい、青空はよっぽど俺のことが好きなんだろうな」
自惚れ発言はスルーしてっと……いや、ありえなくはないのか。例えば、青空さんがかなりのメンヘラ気質とか……。
「なるほどね、状況はわかったよ。その上で提案なんだけど、ウチにも協力させてくれない? 二人を破局させるの」
「え、手伝ってくれんの?」
「うん! それから華美君を残念系イケメンから真のイケメンに昇格させてあげる!」
「マジでかッ⁉」
「もちろん! 早速日曜から育成開始ね! 空けておいてね?」
「日曜か……本来なら趣味の〝趣味探し〟に没頭する予定だったが、まぁいいだろう」
何はともあれ、ウチにも付け入る余地があるのはわかった。
あとはウチの裁量次第…………〝お日さま〟よりも明るく輝かしい学校生活を手に入れられるかどうかは。
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