第81話ママの化粧品

 何故メイク道具は子ども心をくすぐるのか。保育園年中さんの頃朝ママより早くに起きてしまった息子くん、普段触れないママの化粧品ケースに何故か手を伸ばしたらしく、ママが起きた時には割れたファンデーションや顔から手から床にまで塗りたくった口紅など見るも無惨な部屋の光景の中、明らかに「しまった、見つかった」というばつの悪そうな息子くんが佇んでいました。

 ファンデーションが割れて散乱していたので鏡が割れていないか確認をし怪我などがないことをみとめてからママの大きなため息が。

 息子くんを見ると気まずそうにしているが、顔や手に付いた口紅を先ずは風呂で落としてから洗濯機を起動。息子くんはその間もずっと気まずそうにしてました。

 片付けを終えて息子くんに朝ごはんを用意してから息子くんに「化粧品気になったの」と聞いてみると小さく頷いてママの様子を伺うのですが、ママ別に怒ってるわけではなくお気に入りの口紅は残念だけど怪我もないなら叱る程でもない、けれども。

 息子くんにママは化粧品を触るのがダメなわけではなく、見ていない所で体に付けて痒くなったり痛くなったら困ること、壊すものではないこと、化粧品は玩具ではないこと、うっかり口に入れてしまったら大変なことを話ました。それから息子くんにゆっくり説明、これは唇に塗るものこっちはまゆ毛を描くものなど。息子くん、化粧品自体に興味があった訳ではなくママの物に興味があったそうで化粧品の説明は途中までで終わりました。

 その後ママが使うフレグランスを息子くんのハンカチにひと吹きして持たせると随分喜んでいました。

 ただ切なかったのはママの化粧品はケースの中の半分以上が壊滅していた事だけで、ちょっとだけ深夜に涙が出ました。

 

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