第80話鍵

 ベランダに出ていて中から子どもに鍵をかけられる、よく聞く話ですが実はママも経験してました。

 息子くんまだ二歳頃の天気の良い梅雨の晴れ間、ジメジメした日が続いていたので思い切って朝から布団を干し、洗濯機フル稼働していました。

 部屋干しでは乾きにくいものを中心にせっせと洗濯機とベランダの往復に励むママ。

 最後の洗濯物を干し終えた時背後でカタンという甲高い音が。ガラス越しに見える息子くんの良い笑顔、いや笑顔じゃないよ。何してるのと慌ててベランダのサッシに手をかけるもシッカリ掛かった鍵のお陰で部屋に戻れない。

 途方に暮れるママ、待てど暮らせど開かないベランダのサッシのせいでママの所に行けない事に気付いた息子くんが泣きだしました。泣かれてもどうにもならない。いっその事足折れてもベランダから飛び降りるかとも考えましたが非現実的なので一先ず思いとどまり、思案すること三十分程だったと思います。階下からちょうど帰宅したお隣さんが息子くんの泣き声に声をかけてくれました。

 エプロンのポケットには家の鍵が入っていたので事情を説明しお隣さんにベランダの仕切り越しに鍵を託してお隣さんが玄関から入り無事ベランダの鍵を開けてくれ事なきを得ました。

 エプロンに鍵を入れていたのにスマートフォンは部屋にあったため誰にも連絡出来ずに居たのであの時は本当に冷や汗が止まらなかった。

 息子くんは突然のお隣さんに大喜び。そして懲りない息子くんはその翌月に今度は玄関の鍵を閉めてしまいまたひと騒動してました。

 

 

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