第66話息子くんと鎧兜

 息子くんが産まれた時には我が家はマンション住まい、大きな鎧兜なんて置けませんというより置けたとして仕舞えません。

 なので息子くん三歳になった頃にある程度収納出来る場所を確保し、小さな鎧兜を購入に行きました、因みに鯉のぼりは卓上サイズで節句の日にいつもより少し豪華な夕飯と共にテーブルに置いてました。

 マンションのため鯉のぼりを屋外に設置するには不安があり鯉のぼりにあまり気合いを入れれなかった分鎧兜は少し良い物をと気合いを入れて見に言ったのです、玩具の大手チェーン店などでは特集コーナーもあり見ているだけでママは楽しくなります、元々歴史好きなので並ぶ鎧兜のモチーフに上がるテンション。当時の一番人気は三日月が印象的な伊達政宗モチーフでした。

 然しテンション高めのママに対して当時三歳の息子くんの反応が鈍い。どれも今一つ気に入らない様子。三日月も晴れやかな豊臣秀吉もどれも息子くんには響かないようで、その日はカタログを頂いて帰路に着きました。

 途中足を伸ばしてママの趣味に付き合ってもらいフィギュアなどのある玩具店に向かいました。

 そこで息子くんが運命の出会い、これが欲しいと譲らない鎧兜を見つけてしまいました。しかしそれは節句に出す鎧兜ではなく精巧に作られてはいるけれども、息子くんよ其れはフィギュアだぞと話してわかる歳でもなく、それなりに高いので悩むこと揉めること数時間。それでも息子くん譲りませんでした。

 ならばそれらしく飾れるようにすれば良いのでは?とケース等も慎重に選び息子くんの鎧兜が決まりました。

 兜に大きな「愛」の字。そう直江兼続の鎧兜のミニチュアレプリカ。

 息子くんがある程度大きくなるまでに何度か買い替えも打診しましたが、やはり息子くんのお気に入りはこの鎧兜でしかなく、我が家の五月には毎年飾られてました。

 息子くんが歴史に興味があるとかではなくただ見た目だけだったのでしょう、しかしママの心情としては「そうきたか」でした。立派とは言えない我が家の節句を毎年見守る「愛」の字の思い出です。

 

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