第50話花火と息子くんと時々虫

 手持ち花火は片手で数える程しかしたことが無い我が家。そもそも街中で手持ち花火をする場所が全くないため、精々線香花火を少し開けた場所でしたぐらいでしかないのだけれど、小さいうちは花火大会に行っていました。

 息子くん、花火は手持ち花火より打ち上げ花火の方がたくさん観てるかもしれない。

 よく行く花火大会は大きな川べりで行われる祭で、人混みのある露店を避けた対岸の少し人の少ない場所で見物していました。

 過去形なのは息子くんが大きくなるにつれてママと観に行くより家でゆっくりしたいと言われるようになったせいなのです。最近は出かけるのも隣を歩く事がなくなって少し寂しいですね。

 そんな夜の河原で座っていると、二度ほど黒い奴に出くわしてしまった事があるのです。

 一度目はすぐに居なくなったので息子くんが気付いた時には遥か彼方影も形も見えなくなっていたのだけど、次に出くわしたのは息子くんとママの目の前。カサカサという微かな音と花火の光に照らされたその黒い虫、奴が現れたのをバッチリ見てしまった。

 息子くん、虫は苦手です。クワガタやカブトムシは好きらしいのだけど虫は全般に苦手。

 そんな息子くん悲鳴と共に飛び退いた瞬間、例の黒い虫もびっくりしたのだろう息子くんに向かって動き出したので息子くん半泣き状態に。

 息子くんを後目にママは手にしていたチラシを奴に差し込み掬いあげて彼方へ投げ飛ばしました。

 ママも虫は苦手です。

 その後息子くんは花火どころではなかったらしく、夏休みの思い出という絵日記の宿題には花火と黒い例の虫の姿がありました。

 

 

 

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