第13話運動会

 少し大きくなった息子くんの話。

 小学校も中学年以上になると運動会も種目が本格的になり、紅白の点数にも子供たちは一喜一憂し始める。

 そんな運動会もう何回目かの運動会でその日は朝から晴天に恵まれ秋にしては暑いぐらいの日、息子くんたちは白組だった。午前の競技後半には紅白拮抗し、点差は僅か。次の競技で恐らく体勢に大きな変化がある、大事な局面。

 息子くんたちは紅白二組ずつのリレーへ。四人がスタートを切ると息子くんの居るチームは先頭に。そのまま息子くんにバトンが手渡るもまだ先頭。後続を半周は引き離していた。

 息子くんの組には支援学級のお子さんがいた、先頭で回ったバトンはその番で最下位に、半周で走れなくなったお友達が足を止めた瞬間、息子くんたちの中から数人が駆け寄り誰の手も声もかけず、さもそれが当たり前のように隣に寄り添い数人で走り出した。

 その時点で息子くんたちの成長した姿に涙するママたち。

 走りきったお友達に「頑張ったな!」「今日いままでで一番早かったよ!」「お疲れ!頑張ったね!」そう声をかける、いつの間にか半周ほど三番目を走る子供たちには置いていかれ、しんがりになった息子くんたちの組。後続は「任せろ!」と次々に走り出す。

 そしてアンカーだった少年がゴールを駆け抜けた。勿論離された距離を縮めは出来たがそこまで。けれどやり切った笑顔が素晴らしく輝いていた。

 翌年の運動会、またもやリレーで息子くんたちのいる組は先頭をキープしながら進んでいたが息子くんの番で息子くんゴール手前後三歩でゴール、真後ろでお友達が転んだ。

 接戦だったため併走しそうなお友達を意識していた息子くん、後三歩。足を止めて振り返ると、お友達を支えて起こし、膝の砂を払っている。

 その間に他の二人がバトンを次の走者に渡す。

 息子くんはお友達の手を引いて一緒に二人で次の走者にバトンを。

 「よっしゃ!任せとけ!」「今から追いついてやるからな!」「保健室いけよ!」そんな声を掛け合って、泣いている転んだお友達を励ましながら走っていく。

 息子くんは転んだお友達の手を引き先生に怪我の具合を確認してもらい、安心して四着と書かれた旗の元に。

 「負けてしもたわ」そうハの字にした眉で言った息子くん、夕飯はお寿司にしましたね。

 優しさではなく、さもそれを当たり前として手を貸し、足を止めたそんな息子くんを少し誇らしく思ったママだったのですが「は?困ってるんだから手伝うのが当たり前やん」そう言われて、その当たり前を特別だと感じていたことにハッとさせられた思い出。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る