第3話 正午の二人

「動くように念じた?ルシウスが?どうやって?」

「いや、普通に『ライン送れー』つってな。頭ん中でこいつに命令したんだよ」

「それだけで!?人を動かす天使なんだから、もっとこう…『少年よ勇気を持てー!』とか『あののハートを射抜くがいい!』とか、そんな感じの決めゼリフがあってもいい気がするけど…」勇気を持て、射抜くがいい…そのセリフひとつひとつに大胆な動きを加えてそれらしく仕上げる悪魔。それを邪魔臭そうに見守る天使。

「念じるだけでいいんだよ頭ん中で。決めゼリフを吐く天使もいるが、そんなことするのはノリがいい若い天使か、自分に酔ってるおばさん天使だけだ」「おばさん天使」に思い当たるふしがあるのか、天井を見上げて軽く身震いするルシウス。

「ふふっ…おばさん天使ねぇ…あ、ところでこの人は、ルシウスが念じたからラインを打ち始めたんだよね?人間からしてみれば不自然なんじゃないの?悪魔のあたしから見ても、妙にいきなりな気がするけど」

「これは人間の世界でいうところの『勇気』だよ。勇気として認識されるみたいだ」

「なんかすごい単純だね」

「まぁな。ただ、勇気っていうのは悩んだ人間だけが手に入れられるものだ。それを俺たち天使が与えてやってんの」

「人間からしてみれば複雑だろうね…今まで自力で出してたつもりでいた勇気が、実は天使のおかげだったなんて。…あっ、ライン返ってきたよ。デート行ってくれるって!」

(結局、相手の女もこの男のこと顔で選んでるんだろうよ…)ルシウスは頭の中でつぶやいた。

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やさぐれ天使と純粋悪魔 ヒナタジャンクション @Hinata-Junction

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