第75話ー② 芽生えた想い
数日後。できあがった提案書を持って、暁は研究所に訪れた。
「おお、暁君。良い話というのはなんだい?」
「実は…‥先日、白銀さんには話したんですけど――」
「あ、あれかい? クラス制度撤廃と新たな学び舎を新設したいっていう」
白銀さん、本当に所長へ話していたんだな――
「そうです。それでその時白銀さんから言われていたことを踏まえて、再度考えてきたんです! それを今日は所長に聞いてもらうために来ました」
「いいだろう。話してくれ」
所長はそう言って微笑んだ。
「これです――」
それから暁は持ってきた提案書を元に、所長へ説明を始めた。
暁の提案してきた話は、こうだった。
能力者のクラス制度を撤廃後、クラスごとに別れていた施設を統合し、巨大な学校を創立する。
そこでは普通の授業に加えて、能力者として何ができるのか、そしてどうかかわっていくのか――そういう理念を学べる場所とすること。
能力者と無能力者は互いの理解を深めることを目的とし、支え合う心を育んでいく。そして能力者同士ではそれぞれの得意な分野を高め合い、活躍できるようにしていく。
能力の有無や高低で優劣をつけるのではなく、それぞれの個性を生かして互いに成長していける環境を目的とする。
「どう、ですか……?」
暁が恐る恐るそう尋ねると、所長は暁の方をまっすぐに見て、
「……君はこの案がうまくいくと、そう断言できるかい?」
そう問いかけた。
「うまくいくかどうか、今の俺にはわかりません。でも俺は……やってみたいんです。これから出会う生徒たちの可能性を信じて、自分や仲間たちと未来を創っていく子供たちの姿を見たいから!」
「多くの子供たちが傷つくかもしれないぞ?」
「ええ。覚悟はしています。でも、子供たちは、必ず自分たちの答えを見つけて進んでいくんです。どれだけ転んでもまた立ち上がって、自分の足で進んでいくんです」
「君は、どうするんだい?」
「俺はそんな子供たちの背中を支えて、時にはちょっと背中を押すんです。立ち止まった生徒の隣にそっと寄り添ったり、走りすぎて疲れた生徒には、休める場所となったり。俺は今と変わりません。俺にできることをやるだけです!」
暁は一度も目をそらすこともなく、所長に自身の想いを告げたのだった。
「…………君が私に夢を語るのは2回目、だね」
「ええ、そうでしたね」
「あの時と変わらない熱い想いと、あの時よりもずっと頼もしい男になったな」
そう言ってニコッと微笑む所長。
「ありがとうございます」
「まだ不安要素はあるけれど、でもなんでだろうな……暁君ならきっとうまくいく。そう思える頼もしさがあるんだよ」
所長は安堵の表情を浮かべ、そう言った。
「じゃ、じゃあ!!」
「ああ、暁君のこの提案をカタチにしよう。少し時間はかかるかもしれないけれど、でも子供たちの未来のために」
「はい! ありがとうございます、所長!!」
満面の笑みでそう言う暁。
「私も見て見たいよ。自身の力を信じて、仲間と共に未来を創っていく――そんな子供たちの姿をね」
「見られますよ! きっと」
「ああ」
それから暁は新たな学び舎の創設のために動き始めたのだった――
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