第72話ー② 守られた場所

 夕食後、食堂にて――


 暁と奏多は食堂で片付けをしていた。


「いつもごめんな」

「いいんですよ。前にも言いましたが、こうしていると新婚夫婦みたいですよね?」


 そう言って微笑む奏多。


「あはは。そうだな」


 暁も恥ずかしそうにそう答えた。


「そうだ。お礼の件はいつにしますか?」

「うーん。そうだな……少し時間をくれるか?」


 せっかく出かけられるんだから、ちゃんと場所は考えたいな――


 そう思いながら、暁は申し訳なさそうな顔をする。


「えー……まあいいでしょう。私もすぐに動けるわけじゃないですしね」

「忙しくなるのか?」

「ええ。海外コンサートをするので、1か月ほど会えなくなりますね」

「そうなのか……」


 またしばらく、奏多に会えないのか――


 そう思いながら、肩を落とす暁。


「そんな顔しないでくださいよ! その時に、とびっきりのお礼を楽しみにしていますから!!」

「ああ、わかった」


 とびっきりのお礼、か。奏多は何をしたら喜んでくれるかな――


 そんなことを考えながら、笑顔になる暁。


「なんかいやらしいことを考えていませんか?」

「そ、そうじゃないって! どうしたら奏多が喜ぶかなって思ってただけで!」

「それなら許しましょう! それにしても、楽しみですね」


 そう言って奏多はニコニコとしていた。


 デート、楽しみにいてくれているんだな。とびっきりのデートにしなくちゃな――!


 そう思いながら、暁は満面の笑みをしていた。それから片づけを終えた暁たちは、職員室に戻ったのだった。




 ――暁、自室にて。


「そうだった、今夜も俺は……」


 そう呟きながら、腰に手を当ててため息を吐く暁。


「だから一緒に寝ましょうって!」

「そうだよ! スイも3人で寝たいよー」


 そう言ってベッドの上で手招きする奏多と水蓮。


「いや、だからさ!!」

『大丈夫だ、暁。お前が変なことをしないよう、私が見守っていよう』


 ミケさんはそう言いながら、ベッドの下から出てきた。


「ミケさんがそう言うならさ……」

「あら、ミケさんが監視役ですか?」


 奏多はそう言いながら、ミケさんの方を見る。


「もしかして会話、聞こえていたのか?」

「いいえ。勘です!」


 相変わらず、奏多は鋭いな――


『それに水蓮も暁がいなくて寂しく思っていたんだ。だから今夜くらい言う事を聞いてやってもいいと思うぞ』

「そうか。うん、わかったよ! じゃあ寝よう、3人で!」

「わーい!!」


 そして暁は水蓮と奏多と3人川の字でベッドに寝転がる。


「ちょっと狭くないか?」

「大丈夫です! こうやって3人ひっつけば!」


 そう言って水蓮と暁を引き寄せる奏多。


「ちょっと!! 奏多さん!?」

「あったかーい!」


 ああ。俺、今夜眠れるのかな――


 そんなことを思う暁だった。




 奏多や剛が守ってくれたから今この瞬間がある。


 生徒だった2人が今は守る側になったんだとその成長に喜びを感じ、そして俺の大切なものを守ってくれたことにとても感謝をしている――




 暁は天井を見上げながら、奏多と剛が守ってくれた生徒たちの笑顔を今度は自分が守るんだ――そう誓ったのだった。


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