第63話ー② 夢に向かう者たち

 そして数日が経過した。卒業前夜のこと――


 男子の共同スペースにて。まゆお、真一、しおんがソファに座ってボーっとテレビを眺めていた。


『続いてのニュースです。先日、繁華街で『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』能力者の暴走事件が発生しました。加害者の少年は――』


 テレビから聞こえる声はその空間のBGMのように流れており、まゆおたちにそのニュースの内容が届くことはなかった。


「僕たち、明後日にはもうここを出て行くんだよね」


 まゆおは寂しそうな笑顔で真一としおんにそう言った。


「ああ。そうだな」

「やっぱりしおん君も寂しいって思うの?」


 まゆおはそう言いながらしおんの方を見ると、


「まあ、それなりにな。俺はここに来なかったら真一にも出会えなかったし、本気で音楽をやろうって思えなかったかもしれない」


 しおんはそう言って笑っていた。


 そんなしおんを見て、まゆおは「そっか」と言って微笑んだ。


「それに、まゆおにも感謝してるんだからな? 俺が真一と組むかどうか悩んだ時に、背中押してくれただろ? あれがなかったら、真一に一緒にやろうって言えなかったかもしれないんだからな!」


 そう言ってまゆおに微笑むしおん。


「そんなこともあったね。あははは」

「じゃあ僕はそのおかげで大切な友人ができて、ここのみんなを家族だって思えるようになったわけだ」


 真一は天井を眺めながらそう言った。


「真一君……ありがとう。僕も君にはたくさん助けられた。兄さんことがあった時、真一君がいろはちゃんに連絡を取るように先生に言わなかったら。僕は今ここにいなかったかもしれない。だから――」

「もう! そういう恥ずかしいことはやめてよ!」


 真一は顔を赤くしてそう言った。


「あ! それも真一に言いたいことあるぜ!! 俺はさあ――」

「しおんは黙って」

「えー」


 まゆおはそんなしおんと真一のやり取りを見て、微笑んだ。


「本当に仲良しだよね。これから2人の活躍を楽しみにしてるから。だからお互いに頑張ろう。僕も僕の夢のために頑張るから」

「おう」「うん」


 そして3人は微笑みあった。


「そういえば、結衣ちゃんと前に話したんだけど……またいつかみんなで集まりたいねって!」

「いいな、それ!! 全員大集合ってなんだかおもしろそうだ!」


 しおんは嬉しそうにそう言った。


「うん、僕もそう思う!」

「真一もそうだろ?」


 しおんが真一にそう尋ねると、


「ま、まあ少しはね」


 恥ずかしそうにそう言った。


「ふふふ。その時を楽しみに、これから頑張れそうだ」


 そう言って笑うまゆお。


 それから3人は簡単な雑談を終えて、それぞれの部屋に戻っていったのだった。


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