第33話ー⑥ 仲間

 マリアは少し離れたところで、真一と織姫のバトルを心配そうに見ていた。


 真一は織姫の攻撃を躱しながら、攻撃のチャンスをうかがっているようだった。


「なかなかしぶといですね。そろそろ根を上げてしまった方が、ご自身の為ではないですか?」

「そういう織姫こそ。お嬢様には、戦闘なんて向いてないんじゃない?」


 その言葉に怒る織姫。


「女だからって、馬鹿にしないでください!!」


 隕石の量が増え、真一の表情が少しだけ曇る。


「トドメですわ」


 そう言って、織姫は隕石を真一に飛ばした。


「……あ、ダメかも」


 真一がそう諦めた時、真一の目の前にまゆおが立っていた。


「諦めるにはまだ早いよ」


 そしてまゆおは隕石を切り落としていく。


「まゆおにそう言われるなんてね」


 真一も隕石を破壊していく。


 そして隕石を全て破壊した2人。それを見た織姫は驚いていた。


「お前ら! そこまでだ!」


 暁はそう言いながら、3人の間に入る。




 暁がグラウンドに向かうと、そこではまゆおと真一、そして織姫が戦っていた。


 まゆおと真一は再びいい連携プレーで、織姫の能力を防いでいた。


「あいつら、すごいな……」


 暁は感心しながら、そんな2人の姿を見つめていた。


 そして攻撃が止んだ時、暁は3人に静止を呼び掛ける。


「先生、まだ決着がついてないんだけど」


 真一は冷静な口調をしつつも、その目はまだやる気だった。


「その前に、もう時間だ。今回のレクリエーションは終了したんだよ」

「はあ。そっか。それなら、仕方ないよ。今回はここまでにしよう、真一君」


 まゆおが真一にそう言うと、真一は納得したのか、何も言わずに建物の方に向かって行った。


「あとから結果発表をするから、警察陣地集合な!」


 暁は真一の背中にそう告げた。


 真一は振り返ることはなく、そのまま行ってしまった。


「相変わらずだなぁ」


 そう言いながら、まゆおは笑っていた。


「あなたに指図されるつもりはありませんわ。今度はあなたをやってやります!」


 織姫はそう言いながら、両手を広げて構える。


 しかし暁はそんな織姫の腕をつかんだ。


「あれ……能力が発動しない……!?」


 発動しない能力に動揺する織姫。


「俺の能力だ。俺は無効化の能力者だからな。……さあ織姫も行くぞ!」


 暁はそう言いながら、織姫の手を引いて歩いた。


「ちょっと離しなさいよ! 聞いているの? ねえ!!」

「あーはいはい。あとでな……」


 そんな暁たちのやり取りを見たまゆおは、


「さすが先生……」


 そんなことを言いながら、暁の後ろをついて歩いた。




 暁たちが警察陣地に戻ってくると、全員が揃っていた。


「あれれ、織姫ちゃんも結局参加されていたのですね! いやあ、やっぱり参加したかったんじゃないですか! ツンデレってやつですな!」


 結衣はそう言いながら、織姫にウインクをする。



「ツ、ツンデレなんかじゃないです! ただ見ていたら、皆さんがぐずぐずしていたものですから、それでなんだか気になって……。別に楽しそうで羨ましいなあなんて思っていないですからね! 参加したくて参加したわけじゃないんだから!!」


「あーはいはい。テンプレですなあ」


「ちょっと! あなた、本当にわかっていますの!?」



 そういう二人のやり取りを笑顔で見つめる暁。


「先生。早く結果を教えてくれない? 終わったなら、さっさと部屋に戻りたいんだけど」


 真一はそう言いながら、暁をせかした。


「お、おお。えっと終了時に泥棒チームは誰も捕まっていなかったから、勝者は泥棒チームだ!」

「やったぜ! どうだ、アイドル!」


 どや顔で凛子に告げるしおん。



「アイドルって呼び方はやめてくださいよ! 私には知立凛子っていう名前があるんですから! まあへっぽこギタリスト君は、先生が止めに入らなければ、粉々でしたけど☆」


「俺の名前はへっぽこギタリストじゃない! それに俺だって、本気になればお前になんて負けないぞ!」


「本気になれば……? あの場で本気にならない時点で、へっぽこ君の負けじゃないですか? どんなことにも手を抜かないのが、プロってものだと思いますけどぉ」


「んだと! いいぜ、今から続きをやってやる!」



 そう言ってバチバチと視線をぶつけ合うしおんと凛子。


 そんな2人の間に暁は割って入る。


「こら! もう終わりだって言っているだろうが! まったく……」


 暁の言葉を聞いたしおんと凛子は、お互いにそっぽを向き、それぞれ別々に建物の中へと入っていった。


「まったくあいつらは……」


 そう言いながら、暁はしおんと凛子を見つめた。


「先生……」


 いつの間にか暁の隣に立っていたマリアはそう言いながら、暁の服の袖をつかむ。


「どうしたんだ、マリア?」


 暁がそう言ってマリアの方を向くと、


「話がある」


 とマリアはそう言って暁の顔を見つめた。


「ああ、そうだったな。わかった。中で話そうか」


 そして暁はマリアと共に職員室へと向かった。

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