第33話ー⑤ 仲間

 マリアは警察から逃げるべく、周囲に警戒しながら走っていた。


 すると、正面から真一が現れる。


「マリア。見つけた。今度は脱走させない」


 そう言って、真一はマリアへ向かって駆け出す。


 能力が使えないマリアは何の抵抗もすることなく、その場に立つことしかできなかった。


 そこへ、空から何かが降り注ぐ。


 マリアと真一は驚いて、空を見上げた。


「マリアさん、逃げてください!」


 空から星形の石に乗った織姫が現れる。


「織姫!? なんか、すごい……」

流星群メテオ・シャワー


 織姫がそう言うと、織姫の後ろから真一に向かって小さな隕石が降り注ぐ。


「!!」


 真一は両手に風を集めて、織姫から降り注いでいる隕石を防ぐ。


 そしてマリアはそのすきに、その場から離脱した。


 地上に降り立った織姫。そしてその視線は真一に向く。


「全部防ぐなんて、なかなかやりますわね」

「子供だましには参加しないんじゃなかったの?」


 真一は涼しい顔で織姫に言った。


 すると織姫は頬を赤くしながら、そっぽを向く。


「べ、別にいいでしょう!?」

「そう。じゃあ逮捕しなくちゃね」


 そう言って構える真一。そしてニヤリとする織姫だった。




 暁、マリアと別れたしおんは、グラウンドを駆け抜けていた。


 そしてそんなしおんの前に、凛子が現れる。


「いつまで逃げるつもりですかあ? 私と遊びましょ、鳴海くうん☆」


 笑顔でそう告げる凛子。


「お前、俺を本気でボコボコにするつもりだろ。顔でわかんだよ!」

「嫌だなあ。私は仮にもアイドルですよ。ボコボコなんて、そんな物騒なことはしませんよ。ただ少し、躾をするだけです☆」


 そう言って凛子は、くるくると髪をいじった。


「ああ、いいぜ。俺もお前に言ってやりたいことがあるからよ」


 2人はその場で、見つめあう。


 そして同時に動き出した。


「あはは☆ 死なないでくださいね?」


 凛子の顔にはピエロの仮面が現れ、そのまましおんに突っ込む。


「こっちのセリフだよ!!」


 しおんがそう言い放つとその言葉に色が付き、凛子に向かって飛んでいく。


「へえ。面白い能力。『コトダマ』ってところですかね」


 凛子はしなやかにその攻撃をかわす。


 そしてどこから出したのか、その両手にはカラーボールがあった。


「このボールに当たると、ちょっと……いえ、かなり痛いので要注意デス!」


 両手のボールをしおんに放つ凛子。


「そんなの俺のコトダマでぶっ飛ばしてやる!!」


 しおんのコトダマは凛子のカラーボールを破壊した。



「なかなかやるじゃないでかあ。田舎出のギタリストのくせに」


「うるせえ! それは関係ないだろうが! お前だって、売れないアイドルのくせによくやるな!!」


「うるさいわね! あんたに私の気持なんかわかりっこないでしょ! ただ好きなものを純粋に追っているだけのお子様なんかに!!」


「純粋に追っていられたなら、俺はこんなところにはいねえよ! お前にだって、俺の気持なんか一生わからないだろうな! 才能のあるやつなんかに、俺みたいな凡人の気持なんか一生理解できてたまるか!!」



 2人は感情をぶつけ合っていた。


「あんたのこと、やっぱり気に入らない! ここで消してあげる!」


 そして凛子はジャグリングのクラブをどこからか取り出す。


「俺も容赦しないぞ!!」


 身構えるしおん。


 凛子はしおんに向かって、クラブを放つ。


「同じことを何度もやっても無駄だ!」


 しおんはコトダマを使い、そのクラブを跳ね返そうとしたが、クラブの勢いは衰えない。


「このクラブはただのクラブじゃない。私の感情を込めた、特殊なクラブ。だから簡単には破壊できないようになっているの」

「なんだと!?」

「さようなら、鳴海くん」


 凛子は目を閉じて、しおんに背を向けた。


「しおん!!」


 そしてしおんが間一髪のところに暁が現れ、凛子のクラブは消滅した。




「先生……!? いつの間に!」

「はあ。間に合ってよかった……。そこら中でやばい音がするから、心配になってきてみれば……。危なかったな、しおん。たぶんあれにあたっていたら、かなりの重傷だったと思うぞ」

「先生……。ありがとう、ございます」


 しおんはほっとした表情をしていた。


 そして凛子は少し不機嫌そうな表情をしたが、すぐに笑顔に戻る。


「よかったですね、鳴海君? 先生が来なかったら、粉々でしたよー」

「ちっ」


 そしてそっぽを向くしおん。


「そろそろ時間だ。警察陣地に一回集合しよう。2人は先に行っていてくれないか? 俺は他の生徒たちを集めてくる」


 暁は2人に警察陣地へ向かうよう促し、他の生徒たちを探すことに。

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