第15話ー⑦ 大事件発生
施設に戻る道中。暁が歩いている前でキリヤと優香が仲睦まじく話しながら歩いていた。
危険を冒してまで来てくれたキリヤたちには、本当に感謝しないとな――
そんなことを思いながら、暁はキリヤたちを見つめていた。
それからふと、S級クラスであるキリヤと優香が外に出られたのか、と言う疑問を抱く暁。
「なあ、そういえば。キリヤたちは、どうやって外に出てきたんだ? あの施設で暮らす生徒たちは外に出られないはずなんだが……」
暁がそう問うと、キリヤは歩きながら振り返り、
「ゆめかさんと所長のおかげなんだ。ゆめかさんに先生のことを説明したら、所長に相談してくれてね。それで職業訓練の一環ってことで外出許可が出たんだよ」
笑顔でそう答えた。
「そっか、白銀さんと所長が――」
納得した表情で頷く暁。
あとから二人にちゃんとお礼を言わなくちゃな――
暁がそう思っていると、
「あと、神宮寺さんにもお礼を言ってくださいよ?」
優香がニヤニヤと笑いながらそう言った。
「え、奏多にも?」
首を傾げる暁。
それを見たキリヤは顔を真っ青にすると、
「ちょっと、優香! それは内緒なんだって!!」
焦りながら優香にそう言った。
「どういう、ことだ?」
「ああ、えっと……」
そう言って目を泳がせるキリヤ。
「いつかはバレることなんですから、言ってしまえばいいじゃないですか?」
「そう、だね。どっちにしても、僕は奏多から――はあ」
深い溜息を吐くキリヤを見て、楽しそうに笑う優香。
話の内容を聞いていても、さっぱり状況がつかめない暁はずっと首を傾げていた。
奏多が何かしてくれたのだろうか。でも奏多は留学中で、すぐに何かできるなんて――
「うーん」
「ああ、ごめん先生。実はね――」
キリヤは重い口調で語り出す――。
* * *
――遡ること数か月。それは奏多が旅立つ日だった。
最後の挨拶を生徒全員にしていた奏多。
そして最後にキリヤの傍にやってきた奏多は、
『キリヤ。先生に何かあったら、連絡してください。きっと助けになれますから』
こっそりとキリヤにそう言って微笑んだ。
『わ、わかった』
首を傾げながらそう返答するキリヤ。
その時のキリヤは、奏多の言葉の意味をまったく理解していなかったのだった――。
――そして現在。
「それでね、今回のことを奏多に連絡をしたら――この画像が送られてきたんだよ」
キリヤはそう言って暁に奏多から送られてきた画像を見せる。
「これは?」
ぽかんとした顔でそうキリヤに尋ねる暁。
まあこれを見ただけじゃわからないよね、あはは――
「ああ、えっとこれは――衛星写真、かな。神宮寺家が個人で所有する人工衛星から撮影しているんだとか」
キリヤが言葉を選びながらそう言うと、
「え、人工衛星!?」
暁は目を丸くしてそう言った。
「先生の髪から採取したDNAをもとに、その人工衛星から先生の居場所を探索したらしいよ」
「い、いつのまにそんなことを!?」
驚愕の表情をする暁。
そりゃ驚くよね。僕だって、それを初めて聞いたときにびっくりしたんだから――
そう思いながら、キリヤは呆れた顔をする。
「もしかして、神宮寺さんってストーカー気質の方だったのでしょうか?」
「いや、至って普通なお嬢様だったはずなんだけど……」
「先生への過剰な愛で、そういう行動に及んだわけですね。いい話じゃないですか!」
そう言って楽しそうに笑う優香。
「楽しそうに言うけど、それって下手したら犯罪行為になるからね!?」
「まあ、そのおかげで俺は助かったわけだし――ちゃんと奏多にもお礼を伝えておくよ」
暁はそう言って、ニッと笑った。
「よろしくね。それはそうと――先生は狂司のこと、何か聞いた?」
キリヤは真剣な顔をして、暁にそう尋ねた。
今回の事件は狂司が仕組んだもの。でも、僕はその理由をよくわからないままだ。先生なら、何か聞いているかもしれない――
「ああ、そのことなんだが――」
それから暁はあの廃墟での出来事をキリヤたちに話し始めた。
そしてその話をしているうちに、キリヤたちはS級施設に到着していたのだった。
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