第263話 リモール王国へ
手紙は、まだ続く。
『ナナリーさんは、いつ頃、こちらに来られるでしょうか? ……いけませんね、こんな、催促するようなことを書いては。これ以上文を綴ると、『そんなに俺に会いたいのか? この寂しがり屋め』と、からかわれてしまいそうなので、ここまでにしておこうと思います。再びあなたに会える日を願って――レニエル・クラン』
そうか。
レニエルが慰霊の旅に出発してから、もう二ヶ月たったんだな。
この二ヶ月、あまりにも色々なことがあり過ぎたので、あっという間だった。
俺は、もう一度手紙を読み返し、何度も頷く。
そうか。
そうか。
生まれ故郷に戻り、兄ちゃんともうまくやれてるんだな。
良かったよ。
本当に良かった。
さて、俺はこれからどうするかな。
しばし、考えてみるか。
いやいや、別に、考えるほどのことはないな。
ジガルガも解放したことだし、もはや俺には、このアルモットでやることはないのだ。住むとこもなくなっちまったし、あれこれ考えずに、思い切ってリモールへ出発するとするか。
俺は宿の主人に礼を言うと、イングリッドと共に管理小屋を出た。
それから、すぐにリモールへ向けて出発する旨を伝える。
イングリッドは、小さく頷いて、答えた。
「では、私もついて行こう。一度リモールに戻って、正式に聖騎士を辞める手続きをしなければならないからな」
「そっか。じゃあ、またテレ……」
おっとっと。
『じゃあ、またテレポーターを使って、ひとっ飛びといくか』
そう言いかけて、慌てて俺は口を閉じる。
レグラックに向かう時と、今日、アルモットに戻って来た時。すでに二回も、イングリッドに大金を払ってもらって、テレポーターを使わせてもらったのだ。流石に、三度も彼女に奢らせるわけにはいかない。今回は、緊急を要する事態でもないわけだし……
そんな俺の心情を察してか察さずか、イングリッドは淡々と、言う。
「さてと、テレポーターを使って、一瞬でリモールに飛んでいきたいところだが、さすがの私の財布も、連続のテレポーター使用で金欠気味だ。リモールへは、別の手段を使って行くしかないな」
「別の手段って? 馬とか?」
馬を駆って、大平原を疾走する。なんだか西部劇みたいでかっこいいな。
「それも情緒があっていいが、ここからリモールまで馬で行くとなると、途中にいくつか大河もあることだし、そこそこ長い道のりになってしまう。具体的には、一ヶ月以上かかってしまうだろうな」
「うへえ、そんなに」
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