彼の地へ

 所縁のある神々の元へ飛び、力を借り受ける。

 その試みは上手く事が運ばないという程度ではない、すでに算段が脆く瓦解したと思われるほどの、事の進まなさを見せていた。


(まあ、当然の話ではあるのだが……)


 財産を寄こせと突然言われて、素直に渡す人間はまずいない。

 神格の一部を借り受けたいと申し出て、素直に渡す神も少ない。

 そういうことだ。


 葉弥栄の申し出を受け入れる神もあった。

 しかし彼等は一様に無理筋な対価を求めた。

 差し出すものの甚大――その要求を飲めば、むしろ木洩日を救う手立ては損なわれるばかりだろう。

 未だ、一柱の神力さえ借り受けることできずにいた。


(――時間が無いな)

(木洩日がニライの地へ流れ着くまでまだ時間はあるが……しかし先にニライ郷というものをこの目で見ておきたい思いもある)


 葉弥栄は焦りを浮かべていたが――むしろその焦りが、これ以上のない正答解である行動へ彼を導いた。


(……むしろ)


(力を借り受ける試みと並行して、そちらを先に進めるか)

(暗雲がしかと見えたあの時期、ニライ郷へ飛び立った神々も多くあったはずだ)


 その選択が運命を決した。

 葉弥栄はかつて交流のあった神を思い浮かべると、その地へ流れ着くであろう木洩日のことを想いながら、息を軽く吸い込み跳躍し、ニライの地へと飛び立った。


 

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