第22話・無法の旋律よ永遠に……ラスト

 砕けたコレクションケースから出てきた、ボルトーが愛用の打撃武具を手に言った。

「ふぅ……ひどい目にあった」

 コレクションから解放された、レオノーラが言った。

「よくも、ボクをコレクションにして鑑賞してくれたね……許さない」

 ボルトーの打撃力と、レオノーラの光弾が次々とコレクションされていた女性たちを解放して、解放された女性たちが参戦する。


 武者惑星の女武者『トモエ』の薙刀なぎなた状の武器から放たれる衝撃波が、黒ザコたち吹き飛ばす。


 機械技巧の片腕を持つ、首から下が甲冑のような姿の少女が暴れて黒ザコをブッ飛ばす。


 生きているトマホークを、操るネイティブアメリカン風の少女が。

 バイクにまたがった女剣士が。

 黒い円筒形の金属仮面を頭からスッポリとかぶった女アウトローが、それぞれ暴れまくる。


 人造看護師のミンミンは、両手から突き出た刃を剣のように振り回し。


 腰からゴージャスな朱色の羽飾りを生やした、四代目キャプテン朱雀は。

「ララララ♪ 吹っ飛びなさ~い♪」

 軽快に歌いながら、反重力サーベルで黒ザコたちを空中に舞い上がらせていた。


 ド・アッホーは、悲鳴を発すると。残った数名の黒ザコ部下たちを、引き連れて血球人特有の捨てセリフの。

「覚えてやがれ!」

 を言い放って、コレクション部屋から逃げ出した。


 後を追う、怒りのレオノーラ。

「待てえぇ! ド・アッホー!」

 屋敷の外に出ると、ド・アッホーが乗った小型宇宙船が昼間の空に浮かぶ、衛星フィーネの方向に飛んで逃げていく光景がバグ・フリーダム──織羅・レオノーラの目に映る。

「逃がさない……たくさんの女性たちの自由を奪って、コレクションして辱しめた、おまえを絶対に許さない!」

 レオノーラは、ガンアーマーの通信機で極楽号にいる、鉄ウサギの月華に通信する。

「月華、大至急、大型汎用機動兵器をユーフォニアに向けて射ち出して……宇宙に逃げていく、ド・アッホーの宇宙船に当てないように注意して……あいつの宇宙船はボクが撃ち墜とすから」


 数秒後にド・アッホーの宇宙船の横を通過して、巨大なミサイルのようなモノが、レオノーラがいる座標の大地に向けて極楽号から射ち出された。

 大地に突き刺さったミサイルから【汎用光弾銃発射緩衝装置標準装備大型人型機動兵器】が、膝抱えの格好で転がり出てきて。

 レオノーラの近くで、機動兵器は片膝を付いた姿勢になり、長身銃の銃口をド・アッホーが向かっている衛星フィーネの方角に機動兵器が照準を定めると。

 立て膝をした側の、脛の部分がクリアーパーツになっている機動兵器の開いた、立てすねの部分に入った、レオノーラは背もたれる姿勢で光弾銃緩衝発射の体勢セットすると……大型の光弾銃レオン・バントラインの銃口を空に向ける。


 レオノーラが銃を動かすと、連動している機動兵器の長身銃も同じように動く。

 ケシ粒ほどの大きさにまで遠ざかった、ド・アッホーの宇宙船に向かってレオノーラは、最大出力レベルに、リボルバー銃式に設定した大型光弾銃のトリガーを叫びながら引いた。

「墜ちろおぉぉぉ!」


 機動兵器とレオノーラが同時に銃を発射して、伸びる光弾道は、ド・アッホーが乗っている宇宙船をかすり、衛星フィーネに命中して衛星の一部が砕け散る。


 近くを通過した光弾の衝撃を受けた、宇宙船機体の一部が破損して、白煙が噴き出す。

 下降する船内では、ド・アッホーが部下を足蹴りして、自分だけは助かろうと脱出ポットへ向かう。

「離せ! おまえたちはオレが最初に脱出してから、脱出すればいいんだよ! オレは逃げる、おまえたちは破損した宇宙船で頑張って不時着しろ! あはははは、ゴミどもがぁ」

 最低の男だった。


 脱出ポットの開いていた入り口に、足を掛けて中に乗り込もうとしていた ド・アッホーに向かって、黒ザコ部下たちは不思議そうな顔でアッホーが入ろうとしている脱出ポットを指差す。

 脱出ポットに乗り込もうとしていたアッホーは、部下たちの表情に首をかしげる。

「なんだ……この脱出ポットに何か変な?」

 脱出ポットの中は、生物の食道に繋がっていた──ド・アッホーが乗り込もうとしていたのは、アリアンロード第九将『悪食バハムート』の口だった。

 バハムートの体は、別空間に繋がっているルートと、消化胃袋に繋がっているルートの二つがあった。

 蒼白で小さな悲鳴を発する、ド・アッホー。

「ひっ!」

 バハムートが、ド・アッホーを吸い込む……消化胃袋の方に。

「う、うあぁぁぁおぁぁぁ!」

 バハムートに吸い込まれてアッホーは……この世から消えた。

 翌日、ナラカ号の水洗トイレで、変わり果てた姿に変化したアッホーだったモノは、下水管を流れていった。

 

 数日後──ナラカ号の船橋で、美鬼・アリアンロードは織羅・レオノーラと亜空間通信を通して会話していた。

 レオノーラが言った。

《結局、惑星ユーフォニアでボクは囮に利用されたワケだ》

「きょほほほっ、それは考え方次第ですわ……レオノーラの方がコレクション価値が高かったと、捉えれば羨ましい限りですわ」

《そう言われても、あまり嬉しくないなぁ……地下プロレスで、捕まっていた格闘家たちは……行くあてが無い者は全員、美鬼が引き取って銀牙プロレスのレスラー登録して面倒みているんだろう……抜け目ないなぁ、黒ザコたちの就職先も世話したって聞くし》

「きょほほほほっ」

 その時──極楽号の目安箱に、救いを求める者の依頼の声が届いたと告げる……ディアの声が亜空間通信を通して美鬼の耳にも聞こえた。

《ここから近い星域だね……じゃあ、亜空間通信切るから……また、どこかの惑星や星域で》

 レオノーラの姿がモニターから消えると、美鬼が呟く声が聞こえてきた。

「きょほほほほ、まったくなんにでも首を突っ込みたがる、おせっかい娘ですわね……きょほほほほっ」


 無法の旋律は、今日もまた銀牙系のどこかで鳴り響いていた。


銀牙無法旋律ユーフォリア act 2〔完結〕

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