第15話・ご安全に遊びましょ♪

 セレナーデの前で腰に手をあてがい立つ、美鬼アリアンロードが言った。

「それで、わたくしに、なんの用ですの?」

 美鬼の後ろには、アリアンロードの三将。


 美鬼から距離を開けて立つ、上がり目気味の織羅・レオノーラの後ろには、仁・ラムウォッカ、鉄ウサギの月華、飛天ナユタがいる。


 そして、セレナーデの背後にある樹の後ろから、サクリ・ファイスが不安そうな表情で覗いていた。


 レオノーラが姉のセレナーデに訊ねる。

「セレナーデ……久しぶり、今までどこにいたの?」

 答えるセレナーデ。

「ある、法律事務所に住み込みで銀牙系の法律を学んでいる──移動する法律事務所で送り迎えしてもらって、大学の夜間法律科で学んでいる」


 セレナーデが、いきなり美鬼とレオノーラに頭を下げて言った。

「一度だけ……一度だけでいい、あたしに力を貸してお願い! 惑星バイ・カラードにはバグ流の解決方法も必要だとわかった! イエロー・カラードはなんとかできるけど……グリーンとレッドは、法の力が及ばない」

 セレナーデの言葉を聞いた美鬼が、腰から妖精の光波羽を出現させて高らかに笑う。


「きょほほほほ……その言葉を待っていました、実はわたくしたちも、どう動いたらいいのか思案していました……レオノーラもそうですわね」

「うん、ボクも全体の流れを見ていた」

「これで、行動を起こすコトができますわ……レオノーラは、バイ・カラードに接近している水球惑星の存在と目的は知っているかしら?」

 うなづく、レオノーラ。

「知っている……水球惑星が望み求めているモノも」

「きょほほほほ、それなら話しは早いですわ。わたくしたちが行うコトは水球惑星が到着するまでの時間稼ぎですわ……レオノーラ、わたくしとお遊びするバイ・カラードの国を交換しませんこと。わたくしがレッドからグリーンへ移動して、レオノーラがグリーンからレッドへ移動、その方がスムーズにコトが運びますわ」

 片方の太モモが露出したデニムを穿いた、レオノーラが一言。

「うん、いいよ」


 そう言って、レッグホルスターから引き抜いた黄金銃の銃口を空に向けて、炸裂光弾を放った。

 赤い花火のように、空で花開いた光弾を見上げている。サクリ・ファイスを見た美鬼がポツリと言った。

「あの子が水球惑星を呼び寄せたのですわね……生け贄の家系なら、水球惑星が接近する意味は聞かされていて。当然、知っているでしょうね」

 そして、お遊びがはじまった。


 レオノーラと美鬼は、それぞれレッド・カラードとグリーン・カラードで、ほぼ同時に異なる方法で戦闘を開始する。

 美鬼は、アリアンロード第十五将・武者駆逐戦艦『幻龍』

 第四将・『虫操りの 飛羽 とびは

 第五将・生体華道家の『スタぺリア・ザミア』 をグリーン・カラードの荒野に召集した。


 自立型人工知能の幻龍が、曲げていた機械のハサミ腕を艦体から伸ばして、腕立て伏せをするような格好で地響きを立てて着陸すると。

 腕立て伏せの状態で、上体を起こした幻龍の底部が開き、陸上戦艦・空中戦艦が次々と出てきて、瞬く間に地上艦隊が構成されていく。

 さらに、地上空母と空中空母からは、地上戦車隊と地上戦闘機隊。

 空中戦車隊と空中戦闘機隊が出てくる。

 飛羽の昆虫軍団。

 スタぺリア・ザミアの粘菌軍団。

 アリアンロード進撃部隊を、幻龍の甲板で眺める美鬼アリアンロードがゲシュタルトンに言った。

「ビーム類の類いは、威嚇のみでの使用で……できる限り、強制兵士のイエロー・カラードの民をキズつけないように注意して……お遊び開始ですわ! きょほほほほっ」

 空砲ビームが、グリーン・カラード本国の空に光りのアーチを描き。

 悪宰相デュラ・ファンが居る、建物を目指して進撃を開始した。


 レオノーラの方は、宇宙から極楽号に乗って、レッド・カラードに向けて『戦艦落とし』を決行した。

 極楽号の前方空間に並ぶ廃棄戦艦空母群──鉄ウサギの月華が、極楽号の船橋から指示が出る。


「十六番艦、十七番艦、十八番艦……レッド・カラードに向けて自由落下開始! 目標、工場施設稼動エネルギー供給パイプライン及び、グリーン・カラードへの兵器輸送ルートを遮断!」


 爆発物を搭載していない廃棄戦艦が次々と、サブ推進ブースターでレッド・カラードの赤い大地へと飛んでいった。

 大気の摩擦熱で真っ赤に燃える宇宙戦艦や空母が、レッド・カラードのエネルギー供給パイプラインと、グリーン・カラードへの兵器輸送ルートに落下して遮断していく。

 エネルギー供給が途絶えた工場の、生産ラインは停止する。

 さらには、地上に残った仁・ラムウォッカ・テキーララオチュウ・ギンジョウワインと、飛天ナユタの魔刀と影から生み出した棒状の武具が。

 工場に隣接していて『戦艦落とし』ができない、エネルギー配給施設の配給ラインを断つ。

 仁が、摩擦熱で燃えながら空から落下してくる、戦艦よりも小さい人型兵器を眺めながら呟く。

「月華のやつ、どさくさに紛れて廃棄処分が決定した、汎用人型機動兵器まで落としてやがる」

 燃え尽きずに地上に落下してきた人型兵器の巨体が、配給パイプを破壊する。

 レッド・カラードの兵器工業地帯は、完全に沈黙した。

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