坂道の風景
何時もの通り道、
「学力を鍛えるよりも、足腰をまず鍛えなくてはいけない。学問は体力だ。」
誰かがそんな風に言い始めた登校時の急傾斜を、毎日のように額に汗をかきながら、あくせくと登っていく。湿気が多く汗がべたつく。
「はあ…はあ…」
肩で呼吸を整えながら、ふと眼下の景色を見下ろす。
街並みが一望できる、坂の途中の踊り場。
今日は曇天の空が一面に広がっていた。
やけに重たい鞄からペットボトルを取り出し、一口無色透明な液体を口に含む。
「おはよ。」
後ろから声を掛けてきたのは同学科の悪友だった。
「今日は雨の匂いがするねぇ。」
そう言って彼女も背の後ろに回していた鞄からペットボトルを取り出す。
「降るらしいな。今日3限までだから、それまで保つかなと思って、敢えて傘を置いてきた。」
「うげえ、降られるよそれ。結構降られるんじゃないかな。」
「そうか。」
鉛色の雲がますます重たく、その色を濃くする。
もう一口、水を口に含む。
「早くいこ。今にも降る。」
「ああ。」
急坂への恨みを呟きながら急ぎ足で構内へと急ぐのだった。
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