水滴の向こうの田園風景

しとしとと降る雨がガラス窓にすーっと線を引いていく。

縦筋の水跡が、助手席の流れる景色をぼやかす。

冷えた湿気が窓枠越しに伝わってきて、呼気の白い煙が車内にも立ち込める。

「寒くなってきたね。」

「そうだね。」

線路が見える。

列車はまだ来ないみたい。

信号機の赤色が滲んで見えた。

「毛布、あるよ。寒かったら着なよ。」

「うん…。」

スマートホンを取り出し、わざとガラスの水滴にピントを合わせる。

線路の向こうの水田が、ぼけしまって、なんだかよくわからないもののように映る。

でも、なんか綺麗だな。

「宿、いいところだといいね。」

シャッターを押しながら答える。

「そうだね。何とったの?電車?」

「ううん、景色。」

「景色?そっか。あとで送ってね、写真。」

そういうと、車内は無言になった。


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