雪景色 松の木
「寒いねえ」
昨晩の吹雪は一面雪景色を描いていた。
除雪車が今朝の内に走ったのだろう。道路だけが真黒く、延々と続いていた。
「だから言ったじゃない。人の忠告には耳を傾けるものよ。」
部屋着の上に、赤いオーバーコートと可愛らしい桜色のニット帽という出で立ちの彼女が、ちょっと拗ねたように言う。寒さで頬が赤くなっている。
「可愛い。」
「ちょっと、聞いているの?」
素気無く言うも、わざわざ右手の手袋を外して僕に引っ付いてくるあたり、まんざらでもなさそうだ。
「風邪、引くよ。」
「だから温めているの。」
少しはにかんだ、照れくさそうな顔で此方をじっと、覗き込んでくる。
鼓動が早くなる。濡れた瞳に耐え切れず、つい視線を雪景色へと逸らす。
「綺麗だね。」
「うん。雪、久しぶりだもの。」
吐く息を白くしながら朗らかに言う。
その時、松葉の上に積層した雪がボトボトという音をたてて、落ちた。
「こっちに来なよ。」
そう言って彼女を引き寄せ、そのままキスをすることにした。
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